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心の隙間  作者: yuuri
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とてもとても拙い。

別にグロくない。ただ変な人が変なふうに語っているだけだよ。

よくピアスの数は「不安の数」ときく。

私は、もはや体の一部であるといえるくらいに長い間ピアスを着用している。だが「不安の数」と言われ納得できたことは微塵もない。

誰が言い始めたのか。気になるところである。


そんなことをふと考えていると店のベルがなった。そちらに目を向けると日中には珍しくない穏やかな雰囲気をまとった老夫婦が静かに佇んでいた。坂田さん御夫婦だ。

「こんにちは。お好きな席へどうぞ。」

そう言うと老夫婦は丸い窓のあるゆったりとした一人掛けソファにそれぞれ腰を下ろした。

「こんにちは。今日はいいお天気ね。」

「ええ。そうですね。今日はどこかにお出かけで?」

「ええ。孫が高校生になったもので、お祝いを買いに行っていたのですよ。」

柔らかな奥さんの声と少し掠れた低めの旦那さんの声が心なしか楽しそうに響いていた。

「ご注文をどうぞ。」


まだ日が高く暖かな昼のことだった。


「結城!」

辺りが紫色に染まろうとしているころ、ベルがなった。

私よりも数センチ背の低い男性が少し湿った髪を揺らして扉の前に立っていた。

「清水。早かったね。少し待っていて。店じまいするから。」

カウンター越しに話しかける。

「ああ。ゆっくり待たせてもらうよ。」

「うん。そうして。」

私は手早く作業を進めた。

「ところで、今日はどこで飲むの?私、何も考えていないよ。」

「大丈夫。最近見つけた個室の飲み屋があるんだ。」

「そうなの。じゃあ早速行こうか。」

「終わったのか。早いな」

「まあ、慣れているからね。」

そう言って店のベルがなった


「わあ。」

目の前にあったのは居酒屋とは言い難い、簡単にいえばシックでおしゃれなものだった。

「ここは個室もあるし何より酒がうまい。店主の人も気が良くて居心地がいいんだ」

「へえ。それは楽しみ。」

カランコロン 見た目に似合わず軽快なベルの音がなった。


「結城。今日は1人だったのか?」

「うん、まあね。」

「昼までは店長がいたんだけど。いつの間にかどこか行ってたよ。」

「はは、相変わらずだな。何回か会ったことがあるがやっぱり変な人だよな。」

「そうだね。私もつくづくそう思うよ。」

苦笑交じりに響く声はいつも通り。

なんの変化もない、いつも通りの日常。


「―――って、おかしな話だよな」

「うん、そうだね。本当に変だ。」

「だろ?ところでさ、お前はいつもあの店にいるけど、本業はいつしてるんだ?」

「うん?ずいぶん今さらだね。どうしたんだい、急に。」

「いやさ、同僚の一人が最近結婚してな、主婦か共働きかどっちになるんだろうって話になったんだよ。」

「うん。それで。」

「その時に、先に結婚していた同僚の意見を聞こうって話になったんだけど、それがびっくりでさ」

「そいつの奥さん、超有名な女優だったんだよ。ほんとにびっくりした。」

「へぇ、それはたしかに。」

「ってなわけで、お前の本業が気になったんだ。」

「いや、君ね..。まあ、いいけどさ。」

「なんだよ。ちゃんと説明しただろ」

「いや、君らしいなと思って」

「なんだそれ。まあいいや。で、なんなんだよお前の本業」

「はあ、えっとね。本業って言っても、もうほとんどあの店が本業になりかけてるんだけど、一応はフリーのデザイナーだよ。」

「へぇ。まあお前センスあるもんな。」

「なにそれ。きみから聞いてきたのに。」

「まあ、いいじゃん。俺たちの仲だろ。」

「適当なやつ。」

「まあまあそう言うなって。あっ、そういえば恋人はできたのか?お前なら―――」


外は深淵の底のようだった。

あの男は相変わらずだった。相変わらず明るくて、気のいいやつだ。

私は、彼と別れてから、またあの店に戻った。


ベルがなった。

2回。1回目は分かる。私だ。でも2回目は?

それも分かる。店長だ。

「やあ、今日もお相手は彼かい?」

「ええ。」

「君は随分とまた彼を気に入っているようだね。」

「まあ、気の良いやつですから。ああいうのが隣にいて楽なんですよ。」

「そうか。いい友人だね。」

店長は珈琲の香りの似合う老紳士のような人だ。ただ彼からは老いなど感じはしない。

とても優美で、美しい所作をしている。

「さて、ユウキ。店を開けようか」

「はい。」


ここは昼と夜で看板が変わる。

面白いでしょう。


看板が変わればお客様も変わる。


何の店かって。


さあね。

私にも分からない。


ここの店長は一人じゃない。


でも同じ格好をしている。


喋り方も、声も、顔も全員同じ。


ただ欲しい物は違う。


恋人。家族。お金。権力。命。


なんでだろうね。


とても不思議だ。


今日は何人来るのだろう。


はじめまして私は、君たちの創作者デザイナーだ。

君たちに刺激(ピアス)をあげよう。

望むのならばね。

そこで見ているがいいさ。

きっと楽しいはずだよ。


―――いらっしゃいませ。

        ご注文をどうぞ。


私、ああいう人好きなんだよね。

わかってくれる人いたら嬉しい。

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