熊太郎視点その2
小学生から高校生になった俺は、気づいたら本物の熊みたいな男になっていた。
弱いだけの自分を変えたくて。
体を鍛えて、筋肉をつけて。
身長だって180㎝まで伸びた。
最近気になってるユーチューバーがいる。
たぬきの着ぐるみ姿なんだけど。
声がそっくりなんだ、あの子と。
気になって毎日その子の歌を聴いていた。
なんて…あの子はもう死んでるんだ。
生きてるなんて、そんなはずないのにな。
でも。
でももしかしたらと思ってその声を毎日聴いていた。
「たぬっ」
ある日、俺は廊下で女の子とぶつかった。
ぶつかった瞬間に目が合う。
「ごめんなさい」
女の子はすぐぺこりと頭を下げて謝っていた。
どこかでみたことあるような…
俺はハッとした。
似ている気がした。
全然容姿は違うはずなのに、あの時の女の子。
風雨ちゃんだとそう思った。
「おい…待て」
声をかけようとしたが。
だが彼女は何故か逃げていった。
気になって追いかける。
困った事に彼女はとても足が速くてまったく追いつけなかった。
「どこ行ったんだ」
完全に見失ってしまった。
当てもく歩き回っていた時。
ふと屋上への階段に目が留まった。
三人の女のグループが、遠くてよくわからないが誰かをつれて屋上へ上がっていくのが見えた。
確かあの三人は学校でもよくない噂が立ってるヤバい奴らだよな。
屋上は普段施錠されてて誰も入れないようになってる。
いったいどうやって出たんだ?鍵でも壊したのか。
それにもう一人は…誰だ。
気になって息を殺して近づいていったら、とんでもない場面に遭遇してしまった。
クラスのいじめグループの女子が、屋上から女の子を突き落としていた。
落ちる、あの時と同じだ。
その時、俺は気づいた。
彼女はあの子とお揃いのたぬきのキーホルダーを持っていた。
間違いない、風雨ちゃん…!。
全力疾走していた。
腰につけていた俺の青のキーホルダーが揺れる。
俺は気づいていたら屋上から飛び出していた。
君に言いたいことがある。
「今度こそ絶対に助ける!」
落ちる彼女を抱きしめて受け止めた。