3. スマホは壊れた、尊厳は崩壊中、そして私は馬から落ちた
翌朝
目が覚めた。
まだ生きてる。
まだこの世界にいる。
そして……まだ兵士のまま。
シャワーを浴びて、服を着て、それから一瞬だけ石のように硬いベッドに座った――というか、もうこれはシーツをかけた岩。
人生にちょっとだけ黙祷してから、最初に目を覚ました場所――馬小屋へ向かった。
すべての苦しみが始まった場所。
目的は一つ。スマホと財布を探すこと。
せめて、これが全部夢なら、現実世界の電波を拾えるかも?わからないけど。
あちこち探して、ついに……YES!
財布!
そして……スマホ!
でも……
スマホは壊れてた。
画面はバキバキ。
ボタンを押しても……反応なし。
頬をつねってみた。夢から覚めることを願って。
痛っ。
うん、現実だ。
それでも、ちょっと感謝してる……少なくとも財布は無事だった。
……でも中身はドル紙幣で、この王国じゃ使えないし、マイ電子IDカードもこの世界じゃ無効。
ナイス。
そのとき、足音が聞こえてきた。
男が馬小屋に入ってきた。
「おい、昨日司令官に怒鳴られてたやつだろ?」と笑いながら言ってきた。
反射的に、この男を蹴りたくなった。
もちろん丁寧に、心の中で。
「そうだけど、それが何?」って無表情で返した。
「馬を取りに来たんだ。今日は騎馬訓練があるんだよ。お前もそのためかと思ってさ」
……
待って。
騎馬訓練?
私が?馬に乗る?!
ごめん、最後に乗ったのは折りたたみ自転車だし、それで転んだんだけど。
馬?
サドルとバイクのハンドルの違いすら知らないんだけど。
馬小屋で意味不明な会話を交わした後、その男に――文字通り――引きずられて訓練場へ。
すでに十数人の兵士がいて、全員ジムの後に生まれたようなムキムキの人たち。
そして私?
夜勤とインスタントコーヒーの犠牲者。
司令官が登場。
重い足取り、そして鎧より厚い威圧感。
今日が私の日じゃないことは明白。
そして、案の定、指をさされた。
「お前!」
ああ、また来たよ……
「騎馬訓練だ!今すぐ!」
一歩前に出たけど、体が半分震えてた――まるで間違ってドラゴンの巣に迷い込んだニワトリ。
馬が出された。
大きい。威厳がある。目が剣みたいに鋭い。
名前はゼファーとか……スパインブレイカー・ザ・デストロイヤーみたいな感じだったかも。
近づこうとした。
馬が私を見た。
目が合った。
静かに、何かを交わした。
そして、たぶんこう言ってた:
「弱き人間よ。貴様の恐怖の匂いがする。」
ごくり、と喉が鳴る。
乗ろうとした。
でも体が凍りついて、そして不自然な動きのまま……ドサッ!
落ちた。
後ろ向きに。
干し草の山の中へ。
……ある意味、恥の深みからは救われた。たぶん。
兵士たちはみんな笑った。
私は消えたくなった。
でも司令官は鼻で笑って、こう言った:
「乗れないなら走れ……馬を押してグラウンドを回れ!」
は?!?
馬を押す?!
隊長、それは400キロの生き物であって、ショッピングカートじゃないんですけど!
でも私は運命に従って馬を押し始めた。
一歩ごとに、人類の尊厳が削られていく。
昔はExcelを使って働いてたのに、今は馬を押してる。
堕落レベル:200%
その夜、ゾンビのように部屋に戻った。
体中が痛い。
でも、なぜか……
この苦しみの中に、ちょっとだけ“生きてる”感覚があった。ほんの少し。
もしかして……
少なくとも、あの頃みたいに一人きりのオフィスじゃないから?
それとも……
本気でいつか、あの司令官を蹴り飛ばしたいって思ってるから?
わからないけど。