1.飛行機で寝ただけなのに、異世界で起きました。
これは私の初めての新しいシリーズです。気に入ってくれたら嬉しいです。
名前はアリア。
年齢は25歳。
友達も、家族も、恋人もいない。
……その気持ち、分かる?
うん、痛いよ。本当に、心がズキズキする。
でも、これが私の人生。
私はコーポレート社員。
毎日、同じルーティン。まるで、同じ曲がずっとリピートされるプレイリストみたいに。
起きて、働いて、寝る。
起きて、働いて、寝る。
そして日曜日には、無理やり笑顔で「おはよう」と言うだけ。
そんなある日、コーヒーと虚無に包まれた夜、私は思った。
「……もう、限界。休みたい。旅に出たい。」
それから私は、ちょっとずつ給料を貯めていった。
ネットショッピングの誘惑に何度も負けそうになったけど、
ついに!貯金達成!
やったー!ついに夢のバケーション資金が揃った!
速攻でネット検索。宿、観光地、交通、スケジュール全部チェック!
そして…明日の朝、出発!
「ふふっ、あの時の有給、保存してて正解だったな~」
次の朝、私はタクシーで空港へ向かった。
チェックインして、荷物を預けて、飛行機の座席に座る。
「はぁ~、飛行機の座席ってこんなに気持ちよかったっけ」
そう呟いて、私はすぐに夢の中へ落ちていった。
――が。
夢の中で、なにか変な臭いがしてきた。
「ん…?隣の人、馬術選手?いや、まさかお風呂入ってない?」
鼻を抑えながら思考する私。
そこへ――
ヒヒィィィン……カツ、カツ……
馬の足音!?耳元に響くリアルな馬の鳴き声!?
バッと目を開けると――
目の前に、馬がいた。
ここは飛行機じゃない。
ホテルでもない。
――馬小屋。
私は目を見開き、周囲を見渡す。
干し草。木の柵。聞こえる馬のいななき。
そして…私のスーツケース、埃かぶって端っこに転がってた。
「これが…私のバケーション!?」
思考停止。
「まさか薬盛られた?拉致られた?それとも、これは…夢?明晰夢?」
パニックになりつつも、私の目の前で平然と干し草を食べ続ける馬。
「これは夢、そう…夢に違いない」
自分に言い聞かせながら、頬をつねる。
痛い。
夢じゃなかった。
私は干し草の山から起き上がり、恐る恐る外へ出た。
そこに広がるのは――
石造りの建物、翻る旗、甲冑に身を包んだ兵士たちが槍を持って整列している、
まさに中世RPGの訓練場そのもの。
「……これって、ドッキリ番組?隠しカメラどこ?」
目をぐるぐる回して、隠しカメラを探す私。
その時、一人の若い兵士が慌てて近づいてきた。
「え、お前何してんの?まだ整列してないの?指揮官に怒鳴られるぞ!」
え…私、見られてる?
つまりこの世界の人、私を見えてる…?
「でも…私、そこの人じゃないし。なんで整列しなきゃいけないの?」
彼はまばたきしながら一瞬黙り込み、
「まあ、俺は関係ないけどな。怒られても知らねーぞ」
そう言って、兵士の列に戻っていった。
その瞬間、周囲が静まり返った。
ギィイ……
地響きのような足音と、地面を引きずる金属音。
現れたのは、重厚な鎧を着た男。
肩に巨大な剣を担ぎ、まるでダークソウルのボスキャラ。
鋭い眼光。
表情は、怖すぎる。
まるで、鬼軍曹とショッピングモールの警備員のハイブリッド。
「今日の訓練はフィジカルだ!!!」
彼の視線が、私を貫いた。
「そこのお前!!ふざけているのか!?さっさとこっちに来い!」
私、指さされてる……?
「え、私ですか?この、ぽんこつ一般人ですか?」
男の眉間にシワが寄り、血管がピキピキ。
「他に誰がいる!!早く来い!!」
私はおずおずと前に進む。
兵士たちはさっと道を開け、まるで私が死神に呼ばれたかのような空気。
「今日のお前のメニューは倍だ。今すぐグラウンドを走れ。
嫌なら、地獄に叩き落としてやる。」
完全に固まる私。
「は、走る…って……?」
最後に運動したのは高校の体育祭。しかも競歩レベル。
「む、無理です……走れません……」
男が私の前にドスンと立ちはだかる。
息は荒く、目がマジでヤバい。
「走れ!!さもなくば、斬る!!!」
命の危機を感じた私は――
走った。
走り方はゾンビ、息はゼーハー、足は引きずり。
そして――
案の定、気を失った