第9話 双子の正体!?
「う……食べ過ぎちゃった……」
歓迎会が終わって、私たちはそれぞれの部屋に向かった。
歓迎会はすごく楽しくて、うれしくて。
なんだかほっとした私は、急にお腹が空いて、つい食べ過ぎてしまった。
そういえば朝からバタバタで、お昼食べ損ねてたからなぁ……。
私は、アビーさんと同部屋。
お腹をさすりながら、部屋の扉を開けると……。
「あれ? ノックぐらいしてよ。フラウねえちゃん」
「どうかなさいました? フラウおねえ様」
あれ?
「……ッ!? ごごごめんなさいっ! 間違えました!」
慌てて扉を閉めたものの、頭がぐるぐるしてる。
……い…今の、って……。
「なにやってんの? フラウ」
「むひゃっ!?」
突然、後ろからアビーさんに声をかけられて、思わず変な声が出ちゃった……。
「あたしたちの部屋は、あっち。なに? 『むひゃっ』って」
「あ…あの……、ちょっとお部屋を間違えちゃって……」
「ん? ここって、プッチとサンドラの部屋でしょ? プッチー。サンドラー。」
呼びかけたアビーさんが扉を開けて中をのぞくと、「ああ」と声を漏らして、私の手を引いて部屋の中へ入った。
部屋にはベッドが、ふたつ並んでいて、その上に人の形をした"黒いもの"がちょこんと座っている。
「そういえば、ちゃんと紹介してなかった」
「ああ。そういうことか。フラウねえちゃん」
「驚かせてしまいましたね。フラウおねえ様」
どっちがプッチくんでサンドラちゃんか、声で判別は出来るけど、見た目はどちらも同じ。
人影。
「フラウって、もしかして人影見るの初めて?」
「い、いえっ。村にいる時に何度か……」
人影は、この島に生息する正体不明の生命体。
その昔、絶えたはずの魔物が復活し人々を襲い始めたころに突然現れ、人と魔物が戦っていると、なぜか魔物だけを攻撃して去っていく謎の存在。
意思疎通は出来ず、こちらから攻撃しなければ決して人を襲うことはないけれど、もし攻撃をしかければ、人でも魔物同様、容赦なく殺される。
まだその習性が分かっていなかった当初、討伐を試みた帝国の駐屯部隊が、いくつか壊滅したこともあるみたい。
たいていは、森や洞窟、魔物に滅ぼされて人が住まなくなった場所に、ただ「立って」いるだけだけど、みんな気味悪がって、あえて近づく人はいなかった。
でも、まさか、プッチくんとサンドラちゃんが、人影だったなんて……。
……しゃべってるし……。
「おいらたちみたいのは、特別だからな。アビー」
「驚かなかったのは、あなたぐらいよ? アビー」
「あたしは小さい時から、いろんなもの見てるから、『こんなのもいるんだ』って感じだったかな」
お、驚かなかったんだ!? すごい。
「ジョシュなんか、変な声上げながら転げ回ってたもんな。サンドラ」
「あれは怖かったわ。プッチ」
……なんか、想像できる。
プッチくんは体を揺らしながら。サンドラちゃんは手を口(?)に添えながら笑っている。
いつもの二人だ。
……私……恥ずかしい……。
「ごめんなさいっ! プッチくんとサンドラちゃんは、プッチくんとサンドラちゃんなのに……。私……あんな風に驚いたりして……!」
「う~ん、と。なんかよくわかんなかったけど、気にすんなよ。フラウねえちゃん」
「そうですよ? ちゃんと説明しなかった、わたしたちもいけないんですし。フラウおねえ様」
「よくないです! 私。私が恥ずかしい……ぁ痛っ…!」
二人に下げた頭を、アビーさんが杖でゴツンした。痛い。
「……まったく。真面目通り越してやっかいね、あんた。そんなんじゃ、やってけないわよ?」
「いたた……。アビーさん……でも……」
「知らないもの、よくわからないものに、警戒心を抱けないようじゃ、冒険者なんてやっていけない。それこそ、あんたみたいな駆け出しは、すぐ死ぬわ。
駆け出しは、駆け出しらしく、びびってるぐらいがちょうどいいのっ」
……わかったような、わからないような……。……いたた。
「おいらたちは、全然気にしてないぜ。フラウねえちゃん」
「ええ。わたしたち、おねえ様と御一緒できて、とてもうれしいんです。フラウおねえ様」
「……プッチくん、サンドラちゃん……」
泣いちゃう。
「はいはい、泣かない。紹介も終わったし、部屋に戻るよ? 明日から、ビナサンドに向かうんだから。朝早いの」
「ビナサンド、ですか?」
「そ。師匠に会いにいくの」
アビーさんの、お師匠様?
「朝、苦手なくせに、よく言うよ。アビー」
「本当。いつも、わたしたちが起こしてるのにね。プッチ」
「うるさい。明日も、よろしく」
そう言って、片手を挙げたアビーさんに「ほら、いくよ」と手を引かれ、私は、プッチくんとサンドラちゃんの部屋を後にした。
アビーさんの、お師匠様……どんな人なんだろう?
あぅ…(´・∞・`;)前書きに書いちゃった…直しました
アビーのお師匠はんは、あの人なんです!(´・∞・` )ばーん