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第11話  私(ナイト)の仕事がありません!?

「いくぞっ! 刮目(かぁぁつもく)せよぉっ! ……でぇぇぇぇぃやっ!!」



「ほいっ」

「はいっ」


「ほいっ」

「はいっ」



 

 私の視線の先で、ジョシュさん、プッチくん、サンドラちゃん、の三人が次々と魔物を倒している。




 あの後、つい二度寝しちゃって結局起こしてもらうことに……。


 恥ずかしい……。


 兵学校では、一度もそんなことなかったのに……!



 みなさん優しくて、叱られたり、からかわれたりもしなかったけど、でも、私自身がこのままじゃ済まない。


 パーティにれてよかったって思ってもらえるように、頑張らないと!



 ……なのに。





「受けよ、我が大剣ッ! どぉぉぉらららぁぁっ!!」



 ジョシュさんは、この間の対人戦とは打って変わって長剣を大きく使っている。


 なんだかずっと何か叫びながら戦ってるけど、私自身、あんまり理解したくないのか自然と耳に入ってこない。 ふしぎ。


 でも、すごく強い。


 対人戦の時も手加減してる感じはしたけど、どこかイキイキと戦っているジョシュさんの動きは、まるで別人みたい。




「ほいっ。……大剣じゃなくて長剣だろ? ジョシュ」

「はいっ。……重くて大剣使えないのよね? ジョシュ」



 プッチくんとサンドラちゃんも、対人戦の時よりも素早い連携。


 プッチくんの三叉槍(トライデント)で魔物の武器を絡めとって、サンドラちゃんの戦槌(ウォーハンマー)で仕留める。


 ふたりでやっているのに、まるで、ひとりでやっているみたい。


 「ほい」「はい」の掛け声が、心地いい。




「ふっ。我が大剣は真の勇者にのみ、その姿を現…」

「ほいっ」

「はいっ」


「あっ! こら! オレがまだ話し…あぶねー! ……こんの……っ、今大事な話の途中でしょぉがぁぁっ!!」



 話の腰を折ってきた斧を躱した後で、ジョシュさんは"大剣"でその魔物をバラバラに切り刻んだ。




「なにやってんだか」


「はははっ」



 アビーさんが杖をいじりながら、ため息まじりに言う横で、エミリオさんが優しい笑顔で笑っている。


 騎士(ナイト)の私は、後衛であるお二人の直衛(ちょくえい)


 

 魔導士のいない大陸ではナイト(私たち)が前衛として戦うのが当たり前だったけど、 島では接近戦に弱い魔導士を守るのが仕事。



 でも、昔は大型の魔物や「魔獣」なんていうのもいたとかで、島でもナイトが常に最前線で戦うのが普通だったみたい。


 『姫騎士物語』で有名な、ランスロット様の影響で今の陣形が確立されたとかなんとか。




 …………とにかく、やることがない。



 お役に立てるところを見せたいのにぃっ。




「わるい、討ち漏らしたっ。そっち、いくぞー」



 魔物を四体相手にしたジョシュさんが声を上げた。


 ジョシュさんの言った通り、十体ほどの魔物が私たちのほうへ駆けてくる。



 き、来たっ! 私の出番っ!



「私が……ッ!」

「いえ、ここは僕が。フラウさんは引き続き、アビゲイルさんのことをお願いします」


「えっ…!? あ、あの……っ」


 

 そう言って駆け出していったエミリオさんが、両手に持った戦棍(モーニングスター)で次々と魔物を倒していく。


 魔物の種類によって、バガァァンとかゴグシャッとか、すごい音をさせながら。




「そんなぁ……」



 エミリオさんの身のこなしは、とても回復魔導士とは思えない。


 体つきだって前衛のジョシュさんより、すごいし。




「沖天、勢威……我は贄に薪をべん……」



 エミリオさんを見ながらそんなことを考えていたら、横にいたアビーさんが何かつぶやき始めた。



「アビーさん?」



 アビーさんの周りでは高まった魔力が渦巻いている。



 これって……詠唱魔法だ。


 初めて見た!



  

 魔法に関する研究が進んだ今は、スポット魔法と呼ばれる「非詠唱空間発動魔法」が主流になっている。

 

 魔法が発動する時に現れる魔法陣。

 スポット魔法は、その魔法陣を記憶し思い浮かべることで、視界内の任意の空間に魔法を発動できる便利な魔法。


 今でも魔法陣を紙に描いた「携帯魔法陣」が使われるけど、それをイメージだけでやる感じ。


 どれだけ正確にはっきりとイメージ出来るかで魔法の効力が変わったりするし、そもそも憶えるのがちょっと大変だから、いろんな種類の魔法を使い分ける人は滅多にいない。


 私も、使えるのは、ふたつだけだし。


 それでも、強力な魔法があまり必要ではなくなった今では、より素早く魔法を発動できるスポット魔法が重宝されていて、詠唱を経ての魔法を使かえる人はとってもめずらしい。


 


「ごめん、そっちいったよ! フラウねえちゃん」

「おまかせしますわ! フラウおねえ様」



 え? ……あっ! プッチくんとサンドラちゃんのほうからも魔物が来てた!


 それでアビーさんがっ?




「……清雅にして烈々たるその名は汝。不浄を掃滅せしむ炎の化身。

我、アビゲイル・ワイズの名において"約束"を交わす。

……そよげ。火竜の吐息。【業火流焔】(フランマキニス)ッ」



 アビーさんが、突き出した杖の先でゆっくりと円を描きながら詠唱すると、現れた赤くて大きな魔法陣から炎の渦が飛び出した。


 炎の渦は、私たちのほうへと向かってきていた魔物の群れを飲み込んで焼き尽くしていく。



  

 よそ見してたせいで、また出番を逃しちゃった……。


 そもそも、このパーティに私って必要無いんじゃ……?




「……ふぅ。こんなもんね。早く杖を直してもらわな……って、ちょっと!? 何で泣いてんのっ!?」


「だってぇ……っ」



  

 ジョシュさんによじ登ったサンドラちゃんが頭を撫でてくれる。


 もっと泣いちゃう。



 サンドラちゃんの"なでなで"は落ち着くなぁ。



 ……あ……でも、返り血やら何やらが、ちょっと…………わぁぁ……。


 

 






詠唱の文言、考えるの大変(´;∞;` )


でも、荒ぶる中二魂はごまかせないのさ(´・∞ ・` )ふっ


「姫騎士物語」は、リィザたちのお話です ”(´・∞・` )

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