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桔梗学園岐阜分校の野球チーム

 岐阜分校は盆地にあるため、桔梗(ききょう)村より遙かに暑い夏が訪れる。当然、夏の練習は室内グランドで行われる。

体育館内のグランドは、全く桔梗学園と同じ作りであるが、勿論、ドーム球場のような広さのグランドに初めて入った桔梗高校の面々は、しばらく口を開けてぼーっとしていた。甲子園球場と同じサイズのグランドを持つ高校があると言うことに、目を疑ってしまったのだ。


 選手同様にしばらく呆然としていた監督に、雲雀(ひばり)が声をかけた。

「監督さん、このグランドは、自動球拾いシステムが起動していますし、ピッチングマシンやバッティングマシンにも、自動的に玉が捕球されるので、補欠やマネージャーが球拾いする必要はありません」

 清那(せな)の代わりにドローンでやってきたマネージャーの、袴田明日華(はかまだあすか)が、がっくりと肩を落とした。

「うちのチームが、10分練習して、どう球拾いシステムが動くのか見せます」


「最初にピッチングマシンを動かして見せますね」

そういうと、雲雀は、喉元(のどもと)に付けたマイクのスイッチを入れて、マシン近くにいた運動着姿の女子選手に声をかけた。

「山田雄太君の玉でピッチングマシンをセットして!甲子園2回戦の1回からの配球で」

すらっと背の高い女子選手は了解したと手を上げると、機械を操作した。

バッターボックスには、浅黒い色の女子選手が待機していた。


 2回戦の最初の玉は、内角ギリギリを攻めた低めのストレートだった。しかし、バッターボックスの女子選手は、軽々と場外までボールを運んでしまった。

「軽い玉だね。当たれば場外必至(ひっし)だなぁ。次の玉もお願い」

次の玉も低めで、雄太の最高速度に匹敵する玉だった。そしてそれも色黒少女は、軽~く場外に打ち上げた。

「スコア通りの決まった玉じゃなくて、雄太君の持ち玉ランダムに投げて」

肩を軽く回した少女は、3球目も軽く流し気味に外野に運んだ。

「あっ、3塁打になっちゃった」

3つの玉は外野の(ゆる)やかな傾斜に沿って、転がり、フェンス(ぎわ)(みぞ)を転がって、ピッチングマシンの脇の(かご)に戻ってきた。野球部の選手は球拾いシステムより、自分たちのエースの玉が、女子に軽々と打たれてしまったことにショックを受けていた。


「あれは、本当に山田雄太の玉なのか」

兄の山田一雄がバットを持って、バッターボックスにやってきた。バッターボックスの少女は、並んでみると、一雄より5センチは背が高く、がっちりした体型だった。

「どうぞどうぞ、弟の玉をよく知っているお兄さんが打った方が、ピッチングマシンのプログラムの出来がよく分かるよね。ついでに弟さんの映像で打ってみませんか?」

 そう言って少女が渡した白いヘルメットを一雄は受け取った。そしていつものように被ってみると、目の前に見えるのは、ピッチングマシンではなく、弟の雄太が投げる姿だった。

「え?」

一雄が振り返ると、少女は、「背景も付けますか?」と言って、バッターボックスの後ろの小部屋で、何やら操作している少女に合図した。

すると、ヘルメットの中に、甲子園球場の音が響き渡り、マウンドの雄太の後ろには、球場全体の映像が広がって見えた。


「球を投げます。映像を見てください」イヤホンから女の声が聞こえた。

目の前をボールが過ぎて行った。

「次も来ますよ」

一雄の後ろで、ピッチングマシンの玉を軽く捕球した少女は、一雄に声をかけた。

慌てて、前を向くと雄太の映像から、剛速球がやってきた。一雄はそれを内野に打ち返した。

「どうですか?いつもより軽い玉ですか?」

少女の声に、ヘルメットを脱いで一雄は答えた。

「一球じゃ良くわからないけれど、いつもと変わらない気がします。雄太の玉に似ています」

その後何本か打ったが、いつもと変わらない感触だった。一雄はだんだんいつもの練習の気分になってきた。

「いい感じですね。次は健太さんの変化球を出しますよ。一雄さん、私と打席を代わってください」

そういうと、ピッチングマシン担当の少女に声をかけた。

「ランダムでお願い」

色の浅黒い少女は、健太の球種すべてにバットを当てた。ヘルメットを脱いで、頭をかしげた。

「う~ん。スライダーはいい線行っているけれどね。R学園に通用するかな?」


端で見ていた監督は、側に立っていた雲雀に話しかけた。

「あの女の子は誰ですか?」

「うちのチームの3番手です。でも、力はあるでしょ?うちのチームは全員女子なんですよ。来年から、甲子園の夏の大会ルールが変わるじゃないですか」


 少子化の影響で野球部員が激減した関係で、甲子園も、来年から合同チームやクラブチームでの出場が許可されることになっている。また、女子も大会に参加できることになったのだ。山田の妹や袴田も、それを見越して、野球部に入部したのだ。

「選手全員が女子なんですか?」

監督の側にいた山田三津が雲雀に聞いた。

「はい、桔梗学園の生徒はみんな、九十九カンパニーの社員なので、実業団チームとしていつもは練習しています。今日はみんな集まっているから、監督さん、最初にうちのチームと試合やりませんか?うちのピッチャーには、R学園の選手と同じ球種で投げさせますから」


 監督は耳を疑った。

(ずいぶん馬鹿にされたもんだ)

しかし、男子と比較しても体格の良い女子が、ぞろぞろ集まってきたので、断ることも出来ず、ため息をついた。

「まずは補欠でチームを組んでもいいですか?」

「どうぞ。そうですね。1年のマネージャーをそちらのチームに入れてもいいですか?それから、そちらのピッチャーとして、佐藤颯太(そうた)君を使ってみませんか。こちらも、少し試したいことがありますので」

「じゃあ、キャッチャーは一雄を出します」


監督は、ファーストに三津を、ショートに袴田を使った。少し、女子チームにハンディを与えたつもりだった。しかし、それが間違いだったことに、気がつくのは時間の問題だった。



 佐藤颯太も中学時代は、ピッチャーとして全国大会に行った選手だった。しかし、桔梗高校は、1回表には5本の3塁打を打たれ、バントを(から)めて上手に5点挙げられた。2回の表には、上位打線に戻った女子チームに、3本のランニングホームランを打たれた。

 攻撃では、すらっと背の高い茶髪のピッチャーにいいように翻弄(ほんろう)された。R学園先発と思われる選手の球種で投げたというが、もしこれが実際の試合だったらと考えると、甲子園球場で打たれまくって、おろおろする姿が目に浮かんだ。先日まで、「R学園に負けてもしょうがない」と考えてたとはいえ、あまりに情けなかった。

 3回のピッチャーは、先ほど自分は3番手だと言った少女に交代した。R学園の剛速球エースの投球だと思われるストレートが、面白いようにミットに刺さった。キャッチャーのリードも絶妙だった。三者三振で桔梗高校の攻撃が終わってしまった。

 これには、監督と選手も黙ってはいられなかった。

「すいません。4回は選手を入れ替えさせて貰えませんか」

「じゃあ、山田三津(みつ)さんと袴田明日華(あすか)さんには、女子チームに入ってもらいましょう」


 

三津と明日華は、生まれて初めて女子だけのチームに加わった。

「いらっしゃ~い。袴田さん、名前は明日華さん?試合中は『アス』でいい?呼びやすいから」

長身の女子選手に囲まれて、いつもは元気な三津も明日華もおどおどしている。

「ピッチャー以外、やりたいポジションはある?ゴメンね。球種がR学園(しば)りだから、この試合ではピッチャーはさせられないの」

「はい。中学ではピッチャーかファーストでしたが、先輩達スライディングしてくるかも知れないので・・・・」

「塁に出さなきゃいいんでしょ?」

3番目のピッチャーになる予定の少女が、片方の唇を引き上げながら言った。

「じゃあ、ファーストで」

「えー。あたしがファーストやりたかったのに」

明日華が小声で言った。

「キャッチャーやればいいじゃん。ヘルメットを(かぶ)っていれば、ボールがやってくる場所が分かるから、そこに構えていればいいのよ。ただ、球威があるから、しっかり踏ん張っていてね。ちょっとキャッチボールしよう」


そう言って、蛇のように冷たい目をした少女は、通信機能付きヘルメットを明日華にかぶせて、一緒にブルペンに向かった。

「公式戦では、通信機能の道具は使わないけれど、練習の効率化のためにはこう言うギアをどんどん使うの」


4回先頭のバッターは、浅黒い顔から白い歯を見せて、三津に確認した。

「健太君は最初はいつも様子見で、外角に逃げるカーブを投げるんだよね」

「球種を覚えているんですか?」

「ああ、一雄君が冒険しようとしても、健太君はいつも『びびり』だから逃げるよね」

いつもスコアを付けている三津は「今日は違うかも知れません」とうっかり言ってしまった。

「今練習しているんですけれど、頭に当たるようなインコースからのカーブを、練習試合では投げることもあります」

「すっぽ抜けると、頭に当たるやつね。なりふり構わず、投げてくるかな?まあ、頭に入れておこう」


 4回が始まった。三津の動きを遠くから見ていた一雄は、マウンドに向かう途中、健太に「最初はストレートから行くぞ」とささやいた。健太は一雄の視線の先に三津を見つけてその意図を理解した。

(三津は俺の練習している球種を、相手に話したな)


 しかし、桔梗学園女子野球部はその上を行っていた。最初からヤマなど張ったりしなかったのだ。素直にまっすぐ来るボールを、軽々と外野のネットまで運んだ。

試合は桔梗高校のスターティングメンバーに代わっても、女子チームの方が張るかに強かった。5回にはピッチャーを雄太に交代したが結果は変わらなかった。そして、5回終了後にコールドゲームの条件を満たしてしまったので、試合は終了を宣言された。


両チームの選手が並んだ時、女子チームのキャプテンが健太に言った。

「甲子園の3回戦が終わったら、岐阜分校に戻っておいで、R学園の球種じゃないのを投げて、真剣に試合してあげるよ」



試合後、雲雀は頭を抱える監督とコーチの前に立って、こう宣言した。

「3回戦でもう一度この悪夢を見たくなければ、次の試合までにやれることは3つくらいですかね?」

若い監督は、頭を深々と下げた。

「教えてください。どうしたらこんなチームが作れるんですか?」

「そうですね。個人の意欲や考えを十分に引き出し、それをチームにまとめる工夫をしたからですかね?下働きは機械にさせて、『出る(くい)は』どんどん伸ばしています」


「そのやり方なら、うちのチームでR学園に勝てますか?」

「無理ですね。少年漫画じゃあるまいし。でも、やり方によっては、楽しい試合は出来そうですね。どうせ、応援もほとんど来ないようですし、外野の雑音もなく、好き勝手できそうじゃないですか?」

「後で、OB会に叱られそうですが」


「出たよ。叱られそうだから自粛する。パワハラが当たり前の男社会はこれだから嫌だね。負けたって怒られるんでしょ?それとも、何もしないで受験勉強でもさせますか?」

挑発的な雲雀の言葉に、コーチが立ち上がって言った。

「監督、この経験は選手や僕たちの今後にも、役立つかも知れないじゃないですか?」

雲雀がにやっと笑った。

「いいですね。若い人は、自分の役に立つなら選手をモルモットにしてもいいと考える」

「そ、そんな」

「いや、()めているんです。みんなもう少し自分のために動かなきゃ」

(ちな)みに、コーチ代は高いですよ」

監督とコーチは真っ青になってしまった。10万?100万?1,000万円?想像も出来ない金額が、頭のレジスターで弾かれる。

「冗談ですよ。こちらはデータも頂きましたから。桔梗村割引、出世払いで頂きます」

「怖い」

監督とコーチは、目を見開いて震え上がった。


 生身のデータは、本当に得がたいものだ。桔梗バンドから送られる身体データや、実際に自分たちと試合をした結果、そしてこれから行われる実証実験。大学や1つの研究所では集められないものだ。


 教頭が口を(はさ)んだ。

「ここは何の研究所なんですか?差し支えない範囲で教えていただけないでしょうか」

「あー。話していなかったですね。桔梗村にある本校のイメージが強いので、妊婦を集めているとお思いでしょうが、ここは、女子運動選手を集めているんです。

特に野球やラグビーなど、女子だけで練習する環境がほとんどない競技の選手を集めています。中には、妊娠出産、子育て、親の介護などで競技を続けられない選手も集まっています。競技団体の広告塔になったり、セクハラに遭ったりしない安全な環境で、スポーツが楽しめる施設です」

「女子なら誰でも入れるのですか?」

雲雀(ひばり)はにっこり笑って答えた。

「まさか」


「話が長くなりましたね。監督、この後の練習計画は私どもが計画していいですか?」

監督は、若いだけあって思い切りが良かった。

「すべてお任せします」



その後、練習計画は監督もコーチも考えもつかない内容だった。


しかし、甲子園3回戦では一定の成果はあげたようだ。


 1年生佐藤颯太が先発した桔梗高校は、2回までR学園を無得点で抑えた。また、R学園は桔梗高校を侮って、4番手の投手を先発してきたが、十分対策を練ってきた桔梗高校は、2回までに5点もの得点をあげた。

 勿論、R学園もこんなところで負けるわけにはいかないので、3回からエースに投手交代をした。桔梗高校は2番手の投手までは対策が取れたが、真のエースへの対策を練るまでの時間がなかった。


 雲雀が「もし、エースが出たら、負け確定と言うことですね」と笑って言っていたが、5点のリードを奪うところまでは、作戦通り運んだ。


 残念ながら、桔梗高校はR学園のエースから、5回まで1人も塁を奪うことが出来なかった。

しかし、雄太も健太もいつもとは違う配球で、5回まではR学園バッターを3点までに抑えることが出来た。   

桔梗高校の体育館に集まった野球部保護者やOB、在校生は祈るような面持ちで、スクリーンに見入っていた。R学園に5対3で勝っている。興奮は絶頂に達した。


 しかし、6回から、桔梗高校はベンチのすべての選手を打席に立たせた。


「おいおい、勝っているのにその采配(さいはい)はないだろう」

「甲子園出場記念に打席に立たせるなんて、勝つ気ないのか?」

暑い体育館で応援しているOBはスクリーンに向かって、怒鳴り始めた。

だいたい、こういうOBは1回限りの1万円ポッキリの寄付金で、応援している気でいるものだ。

 事務長は、桔梗高校が勝ちそうでハラハラしている。もう寄付を頼めそうなところはすべて回ったのだ。

 後ろの方のパイプ椅子で、桔梗高校の校長が、真子学園長と話していた。

「いやー。すごい進歩ですね。6回なのに、まだリードしていますよ。勝っちゃいますかね」

「そんなに甘くはないでしょうが、なんか桔梗高校には1年生にいい選手がいるみたいなので、もう一波乱あるかもしれませんね」


 その声が聞こえたのか、TVでアナウンサーが絶叫している声が体育館に響き渡った。

「桔梗高校、打ちました。バントです。塁に誰もいないのにバント。R学園、キャッチャーあまりのことに、ボールを探しています。速い速い。1年生佐藤君1塁目指して全速力。セーフ、ヒットです!!」

「次のバッターもヒットの構え。いや、打ちました。前進してきたピッチャーの頭を越えて真後ろにボールが転がりました。ピッチャー振り返って、ボールを探しています」


桔梗村の体育館は大騒ぎだった。

「いやー。やると思ったんだよ。高校野球はこれだから面白い」

さっきまでけなしていたOBは口角泡(こうかくあわ)を飛ばして、立ち上がっている。


 桔梗高校校長も腰を半分浮かしかけた。しかし、ゆっくりと団扇(うちわ)で顔を仰いでいる真子学園長を見て、慌てて椅子に腰を下ろした。真子学園長は団扇で口元を隠して校長に言った。

「残念。この後の駒がいないそうです。次の回、R学園の打席は先頭に戻るんで、ボカスカ打たれて終わるんじゃないですか」

身も(ふた)もない。


 真子学園長の予想通り、百戦錬磨のR学園はタイムを取って、冷静さを取り戻した。佐藤颯太は調子に乗って、盗塁を試み、見事に刺され、頭をかきながらベンチに戻った。今までの桔梗高校だったら、怒鳴られるところだが、ベンチでは「目立ちたがり屋ぁ」と構われ、コーチも「舌を出しているなよ」と笑いながら飲み水を渡していた。逆にR学園チームは、笑い声が溢れる桔梗高校ベンチを不思議な面持ちで見つめていた。


 8回に、桔梗高校は3連続ホームランを打たれ、5対6で3回戦敗退した。

整列した後、R学園の選手に「負けたのにニヤニヤしてんなよ。気持ち悪い」と悪態をつかれ、颯太は「うちはもう金がなくなったんで、桔梗村に帰らなきゃならないんで、最後楽しんでいいって言われたんです。R学園さんは最後まで頑張ってくださいね」とニコニコしながら答えた。


ベンチに戻ると、三津と明日華に選手は言われた。

「この後すぐ、岐阜分校に帰って、今度は女子チームと真剣勝負をしますよ」



 応援団もダンス部もいない桔梗高校のスタンド応援席で、レギュラーの親、数十人が感謝の言葉を述べに来る選手を待っていた。そこへコーチが上がってきた。

「応援ありがとうございました。御礼に選手を上がらせるべきなのですが、選手はこのまますぐ、桔梗学園岐阜分校に行きますので、グランドからの礼だけで失礼します。帰りはこちらのバスで、明日の朝、お子さんをお届けします」

「一緒に帰ろうと思って、USJのチケットも取ってあるのに」

佐藤の母親がコーチに抗議した。


「5日間お世話になった桔梗学園の方々に、御礼を言いに行かなければならないんです。

今回、R学園といい試合できたのも、桔梗学園の皆さんのおかげなんです」


「桔梗学園って、女の子ばっかりなんでしょ?今度こそ、私も行きます」

佐藤の母親に続いて、すべて試合の応援をしに来ていた男が声を上げた。

「俺も行ってみたいな」

「慎二、わがまま言うんじゃない」

五十沢(いかざわ)健太の父が、(さと)すように言った。

「五十沢先輩、今日も甥御(おいご)さん活躍しましたね。慎二先輩のように、大リーグに挑戦するんですか?」

桔梗高校野球部OBで、山田兄弟の父が、五十沢慎二に声をかけた。


「健太は、そんな玉じゃない」

慎二は健太には興味なさそうに、答えた。

健太の父が嫌そうに顔をしかめた。


 コーチを呼びに来た鞠斗(まりと)が、五十沢慎二の顔を見て、顔を曇らせた。

しかし、何もなかったように目を()らして、保護者が集めてくれた応援用の(のぼり)を抱えて、コーチに出発時間を耳打ちして下りていった。

 


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