7月入学生
投稿が1日あいてしまいました。毎日、アップしたいのですが。下書き書いているうちに、どんどん話が進んで行ってしまい、アップするのを忘れてしまいます。
昼食の時間、琉はまだ声を掛けていない、7月入学のメンバーに声を掛けることにした。ただし、男1人で声を掛ける勇気はないので、紅羽に一緒に行ってくれるように頼んだ。
7月入学の3人は、窓際の明るい席に3人で座っていた。
「こんにちは、自己紹介してもいいですか?」
紅羽は本当に社交的な人間だ。
「どうぞ、高木紅羽さんですよね。そちらは・・・大神さん?」
「大神琉です」
「私は須山深雪です」
色白で、背の高いショートカットの女の子が答えた。
「ああ、バレー部の」
紅羽がすぐ気づいた。深雪は同じ体育館で練習する仲間だった。
「隣で練習していましたものね。アメリカにバスケ留学なんて、嘘だと思っていました」
「まあ、母も桔梗高校の教員なので、当座の方便です。高校の中で見られたって、私はどうでもいいけれど、妹に迷惑が掛かるのもね」
「わかります。私も弟がいて、迷惑掛けているかな?って、ちょっと思っています」
「ちょっとね」2人が顔を見合わせて声を合せて言った。
「まして、弟、柔道部だし。舞子さんも涼さんも元気そうですね」
弟つながりで、舞子や琉のことも知っていた。世間は狭いものである。
「はい。元気になったそうです」
確か、舞子は1年ほど病気で入院するとか言って、退学したはずだった。
深雪と紅羽は大笑いした。一瞬で仲良しになっている。
「いやだ。私も自己紹介させて」
次は反対によく日に焼けた、がっちりとした女の子が声を上げた。
「私は栗田卓子。学校外のラグビーチームに所属していました。一応、前回のサクラセブンズメンバーです。コーチとの子を妊娠しちゃったんで、桔梗学園に来ましたが、出産後はまたラグビーします。卒認はもう合格したんで、N体大に推薦が決まっています」
時代は変わったね。
「そちらは?」紅羽が、少し大人びた生徒に声を掛けた。
「私は蓮実水脈です。最初の子を妊娠したのが16歳だったんで、桔梗高校を1年で退学したんで、みなさんは私のこと知らないと思いますが」
「今は2人目ですか?」
「はい、でも夫と離婚したので、19歳ですが入学を申請したら、許可されたんです。助かりました」
「じゃあ、上のお子さん、俺の妹と同じ年ですね。女の子ですか?」
琉がやっと話題に加われた。
「男なんです。大空の空って名前です」
「家の妹の名前は、瑠璃です。夕方お迎えに行ったら、空君に会えますかね?」
「ちょっと、琉」
紅羽が慌てて琉の話題を遮った。
離婚した場合、夫のところに子供を残してきた場合も考えられるからだ。
「気にしないで、空は私が扶養しています。夫の再婚相手のお腹にも子供がいるんで、邪魔みたい」
卓子があっけらかんとして言った。
「よかったですね。自分のお子さんを、あっちの鬼ばばあに取られなくって」
「ええ、家政婦みたいな生活でしたから、離婚してくれて嬉しいです。それに、高校も無理矢理やめさせられたんで、もう一回高校の勉強をやり直せて嬉しいです。
でも、数学Ⅰからですから、みなさんに追いつくのに時間が掛かりますよね」
「じゃあ、修学旅行に行ってみたくないですか?」琉が突然、話題を変えた。
水脈は一瞬、何を言われていたか分からなかったようで、きょとんとした。
「琉、突然すぎだよ。水脈さん。私たち6月入学組は全員、高校で修学旅行に行っていないんです。
それからここで産まれた1期生の子供達も今年18歳になるんですが、修学旅行を経験していないんです。だから、みんなで、一泊温泉旅行とかできたらいいねって話が今朝から持ち上がっているんです。
もし良かったら、一緒に旅行しませんか?」
水脈は無理矢理、笑顔を作った。
「あのお金がないんで無理です。でも、皆さん私のことは気にせずに、楽しんで行ってきてください」
「金がないなら、寄付で集めればいいんです」と言って、琉は食堂会議のシステムを話した。
「上手くいくんでしょうか。それに子供もいるんで皆さんの迷惑です」
水脈は今までずっと、このネガティブ思考に支配されていたのであろう。
琉は水脈のためにも、この企画を通さなければならないという使命感に燃えた。
7月入学に3人は、女子バレー、女子ラグビー、水泳という設定です。