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初めての日曜日(午前)

一応、入学した日が、日曜日という計算で話を作りました。舞台の2028年では本当はそうではありませんが、フィクションということでご容赦ください。

 桔梗学園に来て1週間が経った。今日は1日休みである。何をしても、何時に起きてもいいはずだったが、子供は不思議と日曜日には早起きである。そのために、日曜日早朝には、子供が大好きなアニメがTV放映されるのだが、桔梗学園の個室にはTVがない。

「にいに。起きて。瑠璃(るり)、わんちゃん見に行きたい」

「あー。折角、ゆっくり寝られると思ったのに、朝ご飯、うめ組で8時でお願いしてあるから、それまで寝ていて」

いつもは、保育施設で食べさせて貰える子供の食事も、日曜日は親が食べさせることになっている。場所は、大食堂と保育施設の2択で、(しゅう)(りゅう)は昨夜、8時、12時、18時にいずれも保育施設で食べさせたいと希望しておいた。(ちな)みに、保育施設は、8時からしか開かない。

「頼むよ。梢ちゃんと一緒に、7時になったら『うめ組』に向かおうよ」

「7時って今?」

「今は6時!いつもと起きるのが、変わらないじゃんかよ」

瑠璃は琉に馬乗りになって、「まだ7時?もう7時?」と琉の腹の上ではねる。

琉が根負けした。しょうがなく起き上がって、ともかくも散歩でもしながら、保育施設に向かうことにした。子供を歩かせると、なかなか目的地に着かないが、今日はそれを利用して時間を稼ぐことにした。


「おーい。柊、俺たち先に行くね。わ、お前のところも起きてたのか」

柊も、梢のおむつからの大洪水で、朝からシーツを替えたり、おねしょパットを拭いたり、大忙しだったようだ。夜のミルクの時に、柊がおむつを替えるのを忘れてしまって、朝から報復を受けることになってしまったのだ。

「女の子は一気の飲むのが少なくて、そんなにおしっこしないと安心していたら、これだよ。飲んだ分が出るって訳じゃないの?」

「柊さん、汗を考慮に入れてませんね。昨夜は涼しかったでしょ?汗が出ていない分おしっこ多いんですよ」

「先輩、僕はまだ未熟者です」柊が自分の(ひたい)をたたいた。

そんな会話を交わしながら、2人は新校舎を出て、保育施設に向かおうとしていた。


すると2人の視界に、グランドで走る人物が飛び込んできた。

「3人走っていますよ」

「あの3人ですか?鬼ですね。休養が必要って、知らないんですかね?」



 あの3人とは、紅羽(くれは)、舞子、涼の3人である。彼らはグランドを走っているところだった。その傍らには久保埜(くぼの)医師が付き添っている。


久保埜医師は、妊婦の運動に寄り添って健康管理をしているだけでなく、昨夜の舞子のプレゼンを聞いて、早速協力を申し出てきたのだ。

久保埜は、今日半日かけて、舞子のデータを測定することから始めるつもりであった。今は運動負荷による心拍数の変化を図っている。

紅羽と涼は、比較のため、一緒に同じ量の運動をしている。トップクラスの選手のデータは、一般人と比較してもしょうがないから、紅羽や涼のような全国クラスのスポーツ選手は、比較にちょうどいいサンプルなのだ。

 このデータを元に、午後には、医者とスポーツ科学の合同チームによる筋力、体力アップの作戦会議が開かれる予定になっている。

舞子自身は、午後は柔道の動作解析のため、武道場に向かうことになっている。三川自慢のビデオシステムが生かされる時が早くも来たようだ。圭もゲーム開発のため、午後に合流する。


 圭も実は寝ているわけではなく、柔道のルールの理解と対戦相手のビデオを解析して、柔道の動きの特性の理解を深めている。そもそも、圭は柔道の試合を見たこともないので、今日1日で柔道の理解から始めなければならない。研究所からも、ビデオ解析のスペシャリストの笹木香(ささきかおり)という22歳の女性も、午後に武道場へ来ることになっている。



 あのランニングが「チーム舞子」の作戦の一環だと知らない柊と琉は、のんびり花など摘みながら、保育施設に歩みを進めていた。

「いい天気だね。瑠璃」

琉は久し振りの休みを満喫している。

柊はまだうとうとしている梢を見下ろしながら、琉に向かって言った。

「今頃、桔梗高校では模擬試験している頃だよね」

「あー。体育祭の1週間後は、いつも模擬試験だからね」

「こんな天気にいい日に教室に縛られているなんて、可愛そうに」

「そうだね。今日は1日お姫様と過ごそうぜ。保育施設に行けば、柊好みのきれいなお母様と知り合いになれるかも」

「みんな、子持ちだよ」

「いや、独身かもよ」

そんな不届きな会話をしながら、琉と柊が妹を連れて、保育施設に着いたが、そこはいつもと違う空間が待っていた。


「あら、おはよう。みんなぁ、子持ちの若い男が来たわよ」

恰幅(かっぷく)のよい元気な女性が声を上げた。

(僕たち、妹連れなだけで、子持ちではないです)

「あの、保育係の人は、今日はいないのですか?」

「日曜日だもの、いるわけないじゃない。今日はすべてセルフ。食事はここに届いているから、妹さんの名札のトレーを受け取ってね」

『うめ組』の廊下を出た先の壁際(かべぎわ)に、今日の食事が並んでいた。

2人が、自分と妹の分のトレーを持ってくると、先ほどの女性が声をかけてきた。

「妹さんの食事を済ませてから、自分の食事を持ってきた方がいいわ」

「だ、大丈夫です」柊はおどおどしながら答えた。


琉は年上女性の扱いがうまいようで、必要な質問を通してコミュニケーションを取っていく。

「すいません。エプロンはどこですか?」 

赤ん坊を負ぶった女性が答えた。

「あなたたちもエプロンした方がいいかも。ここに「大人用」「乳児」「幼児」と分かれておいてあるの。終わったら、こっちが洗濯乾燥BOX」

女性はそう言いながら、2人に必要なエプロンと濡れた布巾を取ってきてくれた。

「エプロンはいいです」

柊はまだ、素直に人の援助を受け入れるのに抵抗があるようだが、琉はさっさとエプロンをつけている。

「エプロンにもサイズがあるんですね」とか言いながら、さっさと瑠璃と食事を始めた。


 瑠璃は自分で食べられる時期なのだが、ボロボロこぼしてしまう。勿論、手づかみもあり。

「あー。瑠璃ちゃん、バナナはそんなに力一杯持っちゃ駄目だよ」

兄が困るのが嬉しいらしく、指の間からバナナが、ぐに~と出るのを楽しんでいる。

琉は器用に、自分はお握りにかぶりつきながら、瑠璃の食事を済ましていく。


 柊は一口が小さい梢に我慢できなくなり、つい(さじ)いっぱい(かゆ)を乗せては、(こずえ)にべぇ~と舌で押し出されている。

繰り返す一口が永遠に続くような気がして、つい自分の食事をしようと目をそらしてしまう。

その間、梢は吸い口つきのコップを、バンバン机にたたきつけて、粥が入った皿がひっくり返ってしまった。


「はいはい、お手伝いしますね」さっきの恰幅の良い女性がやってきて、ひょいっと、梢を抱き上げて、机や椅子を拭いている柊の手伝いをしてくれた。

その上、柊が汚れた布巾を洗っている間に、残ったご飯を梢に上手に食べさせてくれていた。

「ありがとうございます」柊が真っ赤な顔をして、小さな声で御礼を言った。

「助けあい。助けあい。ちょっと、朝ご飯が少なくなっちゃったけど、おやつもあるから大丈夫」


「柊、お前のお握りをくちゃくちゃ噛んで、瑠璃ちゃんにあげれば?」

そこにいた全員のお母さんがびっくりして、琉を見た。

「お兄さん。昔のおばあちゃんみたいなこと言うわね。今は、2歳くらいまでは、虫歯菌が口に入るのを防ぐために、大人の(さじ)(はし)で子供に食事を上げることはしないのよ」


珍しく、琉がむっとして毒づいた。

「子供が少ないなら、それも可能ですけどね」

柊が慌ててフォローに入った。

「気を悪くしないでください。琉は7人兄弟の長男なんで」

「あら。ごめんなさいね。そうよね。私たち、最大でも2人くらいまでしか、子供を育てていないのに、偉そうなこと言ってしまったわ。それで琉君は、子供の扱いが上手なのね」

女性陣の方が一枚上手だ。すぐ険悪な空気を一変させてしまった。


女性達の好奇心は、とどまることを知らず、どんどん琉と柊に話しかけてくる。しかし、彼女たちは話しながら、手も動かし続けていた。公園でおしゃべりしている専業主婦のお母さん達とは違う動きだ。

食事をさせたり、おむつを替えたり、遊ばせたり、誰の子でも構わず面倒を見ていた。

中には、部屋の片隅で、パソコンに向かっている女性もいたが、その人の子も別の女性が面倒を見ていた。琉と柊は女性達のパワフルな動きに圧倒され居場所を失って、妹たちを連れて芝生の庭に出て行き、犬と一緒に遊び始めた。


「いやぁ、柊、好みの女性を見つける余裕なんてなかったな」

「僕なんて、お姉様方のお眼鏡にかかるわけないよ。圧倒された。今日一日ここにいるなんて、苦行だな」

「そうでもないさ。大食堂で小さい子と飯食っている姿を想像してみろよ」

「はい。無理です。ここには、エプロンでもおむつでも、何でも揃っているからな」

「週休2日なら、これが2日間続くんだぜ。やばいよ」

「でも、琉は10数年間、これが毎日だったんだろう?」

「まあね」


同情されることが嫌いな琉は、突然話題を変えた。

「まあそれより、俺考えたんだ。ここにいる子供達って、双子じゃない限り、みんな一人っ子じゃん。それに産まれてから、ずっとここに住んで、学校に通っているんだよな。体育祭に招待する友達や兄弟は、いないんじゃないか?」

柊も今気づいたような声を上げた。

「あっ。そういやそうだな。つまり、桔梗学園の子は、お婆ちゃんや叔母さんしか呼べないってことか?そのことに、体育祭実行委員長の連中は、気づいていなかったってことか?」

「じゃあ、来場客には、ほとんど子供は来ないと言うこと?」

「身内じゃなかったら、母親の方の知り合いや職場の同僚」

「あそこにおいでになるバリキャリのお姉さん方のような方々が、体育祭に同じ数だけ来るのか?

仕事としている人なら、午後の体育館の研究発表方が盛り上がるかな」

「琉、それに、午前の競技もひいき目でなく、大人の目でシビアに見られるかな?」


のんびりしていた2人の背後から、突然、強力な衝撃がやってきた。

腰や足に飛びつかれて、2人とも芝生に前受け身してしまった。

そんな2人に次々と幼稚園児が飛び乗ってくる。瑠璃と比べものにならないくらいの、連続ジャンプをしながら、子供達が口々に叫んでいる。

「お兄ちゃん、遊ぼ」「高い高いして」


2人は元気なギャングに囲まれていた。

芝生からかろうじて2人が顔を上げて、保育施設の方を振り返ると、食事を手伝ってくれた女性達が、ニコニコしながら、

「妹さん達は、私たちが見ているから、ギャングをよろしく」と室内で手を振っている。

(絶対、妹の面倒見ている方が楽だ)

2人は昼食が始まるまで、10人近いギャングに振り回されることになるのだ。


 

 昼食時、大食堂で。

「柊と琉は、朝もいなかったね。どこにいるか知ってる?」

紅羽が、大食堂に現れた涼に聞く。

「あぁ、あいつら、日曜日は一日中保育施設にいるらしいよ」

「子供が好きなんだ」圭がぼそっと言う。

「と、いうか、日曜日は保育施設が休みなので、食事も含めて、親が1日中面倒を見ることになるらしい」

涼は、後から来た舞子に「こっち」と手を振りながら、圭の言葉に答えた。

「うちらも、子供生まれたら、日曜日はこういう生活なんだね」紅羽が言う。


「でも、小学生以上の子は、体育館やグランドで遊んでいたよ」

涼の言葉に続けて、圭も忌々しそうに

「eスポーツ・ゲーム演習場も、子供でいっぱいだ」


「放置ってこと?」紅羽が言うと、圭がまた「放し飼い!」とつぶやく。

「まあ、桔梗バンドがあれば、子供の居場所が分かるしね」

涼が麦茶を、なみなみとコップに注ぎながら言った。


「あ、五月だ。私先に行くね」紅羽が食堂で鞠斗と話している五月を見つけて席を離れた。


 五月は、桔梗学園の事務総責任者の鞠斗から、細かく予算について質問されているところだった。

「で、いつまでにどこに発注するのかな?この物品を。すべて手作り?にしても、材料費が必要だよね」

「あの、どこに発注するかはよく分からないんです」


五月が言いよどむと、紅羽が鞠斗に会釈しながら、五月の隣に座って、助け船を出した。

「食事会議で承認されたばかりなので、まず、月曜日に各担当の生徒を呼んで、何がどのくらい必要か、話し合いをすることを指示します。競技ごとに必要な物品が出揃うのは、早くても水曜日。例えば、玉入れの球などは、200個現在あるか確認しないといけませんよね」


「まるで、この計画を立てた人のように詳細が頭に入っていますね。紅羽さん」

「先日、高校3年の数学の時間に『体育祭の予算立て』という勉強をしたんです。

できあがりが、そこそこ良くできたので、五月さんに見せたら、少~し参考にしたみたいですね」

「そこそこ良かった予算計画は、数学の時間内に終わったのですか」

「6人がかりですから」


鞠斗は今年入学した6人が優秀だと知ってはいたが、ここまでとは思っていなかった。

「あのプレゼン資料は、柊が作ったのですか」

「薫風庵で晴崇君の作ったプレゼン資料に、自分の方がいいものができるって、ライバル心を持っていたようですから、五月さんの仕事を横取りしてしまったみたいですね」

「違うんです。私が、柊さんに頼んだんです。舞子さんの資料も作ったって聞いたから」

(初めて使ったパソコンで、柊は、この短期間にあのレベルのプレゼン資料を2つも作ったのか)


「話が脱線しましたね。五月さん。紅羽さんが言ったとおり、早ければ今週水曜日、遅くても金曜日に発注数を私にください」


今度は紅羽が鞠斗に質問した。

「ここでの買い物はどうするのですか?ネット注文か、N市の「ド●キ」に買い出しに行くか、誰かに行ってもらうかが、選択肢として考えられますが」

意外な答えが、鞠斗から返ってきた。

「五月さん、買い出しに行きますか?」

「え?1人で行くのですか?」

今まで、学園の外に買い物になど行ったことがない五月は嬉しさ反面、不安でいっぱいになった。


「紅羽さんは五月さんの買い出し、どう思いますか。参考意見を伺いますが」

鞠斗が今度は紅羽にも尋ねた。

「ネットで頼んだ方が早いものもありますし、ものによっては、ホームセンターの方が安いものもあります。実行委員で買い物に行く場合は、手分けをした方がいいかもしれませんね。足は車がいいと思います。結構かさばるものが、多いので」


「高校3年生の6人の中で、買い物に付き合ってくれそうな人はいますか?」

紅羽はしばらく考えた。紅羽と舞子は今、人目に付くわけにはいかない。退学したときについた嘘が発覚してしまうから。圭は嫌がるかな?聞いてみないと。

「私と舞子は駄目だと思いますが、他の人には聞いてみないと分かりません」


「そうですか。では、どこで何が売っているかの一覧表は作れますか?ネットで買った方がいいものは、俺が買います。後は、車を九十九農園の珠子(たまこ)さんか、夫の一生(かずき)さんに出してもらいましょう」

「五月さんは、玉入れの球だけでなく、(かご)など使える道具があるかどうか、各担当者に確認させてください。

厚紙やマジックなどの文房具は新品を買います。この後の文化祭などでも使いますから。

紅羽さん、文房具で必要なものも一覧にしてください。来週の数学時間は、応用学習の方がいいですよね」

そう言って鞠斗はにやっと笑った。

また、数学時間にみんなで予算と買い出し計画を作らなくてはならないと、紅羽は考えた。


「じゃあ、体育祭実行委員に集合をかけて、買い物に行きたい人の希望を募ります」

五月は小走りで大食堂から出て行った。

体育祭実行委員長は、「初めてのお使い」に浮かれているが、果たして大丈夫なのか。


「紅羽さん。少し話をしませんか。ちょっと待ってください。何か飲みますか」

珈琲が飲めない紅羽のために、冷たい麦茶を持ってきて、鞠斗が話を続けた。


「今回の体育祭準備計画は、たった3時間で作ったのですよね。桔梗高校ではこのような計画を誰でも作れるのですか?」

紅羽は少し考えて言った。

「誰でもって訳ではないでしょうね。シングルタスクでしか動けない人も多いです。

勉強しかしていないタイプの人には多いですよね」

「柊や琉はそのタイプではありませんか?」

「柊は、桔梗南中学の生徒会長でした。私も桔梗北中学の生徒会長でしたが、彼の(うわさ)はこっちの中学にも聞こえてきました。体育祭でド派手なダンスパフォーマンスしたとか、文化祭でプロジェクションマッピングを披露(ひろう)したとか」


「では、紅羽さんも目立つ生徒会長だったんでしょうね」

紅羽はちょっと考えて答えた。

「そうでもないですよ。私は、まあ、頭で仕事をするより、足で仕事をする方が得意ですから?」

「なるほど。それで、今回も五月さんの補助に回ってくれているのですね」

「それに、柔道もバスケットも大会運営を生徒が手伝うので、運営力も身についているでしょうね。

特に舞子と涼は、『東城寺杯』っていう道場主催の大会を毎年やっていましたから手際(てぎわ)はいいですよ」


「舞子さんは想像つきますが、涼君もですか」

「高校2年の時、東城寺の道場が使えなくて、大会を桔梗高校でやったことがあるんです。私も隣のコートで練習していたので、見ていたのですが、体育館半面に畳を敷く仕切りは、涼君が1人でやっていましたね。桔梗高校の武道場と、桔梗北中学の武道場から畳を借りてきて、2会場作っていましたが、畳や学校の備品の借用も涼1人で計画して、やっていましたよ」

「東城寺道場の先生は、その時、何をしていたんですか?」

「舞子のお父さんって人は、道場主ぶっていますが、準備の間中ずっと、外で煙草吸っていましたよ。

校内禁煙なんですけれど、そういうのもルーズな人ですから」

 

「あーすいません。そろそろ、昼食時間が終わりますね」

立ち上がろうとする鞠斗に、最後に紅羽が疑問をぶつけた。


「鞠斗さん、私たちのことをすべて知っているんじゃないんですか?」

「あなたの情報は、あなたの叔母さんが提出してくれた範囲ですよ。後はネット上にある個人データぐらいですかね?同じ高校3年生として、個人的に皆さんがどんな人か知りたかっただけですよ」

「個人的に?」紅羽はわざと流し目を送ってみた。

「『桔梗学園のスタッフとして情報を得ようとしたのではなく』という意味ですよ。

僕らも普通の高校生なんで、転校生に興味があるんですよ」

鞠斗は28歳にしか見えない落ち着いた笑みを浮かべて立ち去っていった。


最近、蹴斗が出てきませんが、ドローンレース部の活動が忙しいみたいです。

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