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食堂会議 舞子の依頼

食堂会議の1番目は、舞子です。連覇を果たすための協力を学園のみんなに依頼します。

 6月最初の土曜日がやってきた。「食堂会議」の議題は2つ。1つは舞子が出産後、全日本選手権に出るためのサポートを希望するもの。もう1つは、体育祭の競技案と招待客の条件、入場後の禁止事項である。

 現在、小学校1年生から高校3年生まで、桔梗学園には300名以上の児童や生徒がいる。少し規模の大きな学校の学年集会ぐらいの人数の生徒が食堂に集まっている。職員も含めると500名近い人数が、ここで会議に参加している。研究科の学生も、研究室や保育施設などでリモート参加している。

 食堂会議の司会は、AIの『アイちゃん』が行うことになっている。


「では、今回の1つめの議題について、東城寺舞子さん、プレゼンをお願いします」

舞子は胸を張って、プレゼンを始めた。後ろでは涼がパソコンを操作している。


「初めまして、私は今年6月入学した東城寺舞子と申します。私は現在妊娠中で、出産予定日は12月です。ご存じの方もいらっしゃると思いますが、私はこの4月に全日本女子柔道選手権で優勝しました。これは体重無差別の試合で、日本で一番強い女子柔道選手を選ぶ大会です」

涼が、優勝して冠を(かぶ)ってトロフィーを持った舞子の写真を画面に映した。

期せずして会場から拍手が巻き起こった。

「ありがとうございます。私は出産後、この大会に再度出場して連覇を果たすことを目指しています」


会場の雰囲気が「大丈夫か?」というものに変わった。舞子は気にせず続けた。


「この大会の優勝者は、予選を免除されます。出産後1ヶ月は流石(さすが)に休養を取らなければならないのですが、その後、4月までの残り2ヶ月で、試合に出られるような体に戻したいのです。そのために皆さんにご協力をいただきたい。まず、協力をお願いする前に私のことをもっと知っていただきたいので、少しお時間をください」


涼が、世界選手権や全日本女子柔道選手権で、舞子が投げ技で一本勝ちした画像を次々と流した。画像は真子学園長の許可を得て、母の勝子に届けて貰ったデータから落としたものである。


「ご覧になったとおり、当時の私は、体力に任せて攻め続けるスタイルでした。得意な技は、足払い、大外刈、内股です。しかし、今回、練習量が減ることにより、多分試合の時には、このような体力も体重もないことが予想されます。それでも勝ちたい。私の考えた作戦は、次のようなものです。


1 今まで使わなかった寝技。特に関節技を多用した柔道スタイルに変えること。

2 反射神経を磨くこと。

3 腕力や筋力を極力維持して、怪我をせずに試合できる体を作ること。

以上の3つです。


 ここで皆さんに協力いただきたいことを申し上げます。

1 各種格闘技で用いられる関節技をお教えいただきたい。

2 反射神経を磨く、ゲームのようなものを開発していただきたい。「フィットスポーツ」のようなプログラムを改造して、仮想敵に対抗できるような運動ができるゲームを作っていただきたい。

3 妊娠中でもできる筋力トレーニングの指導をいただきたい。また、お医者様からのサポートもいただきたい。

 

これら3点のどれでも結構です。協力できる。もしくは勝つためのヒントがある方など、ご教示ください」


「最後に、現在全日本女子柔道選手権でベスト4に上がる可能性がある選手を紹介します。また、今年デビューする可能性のある強豪選手も紹介します」


涼が動画を次々と映し出していく。

最後の選手との試合を映し出すと、生徒達から悲鳴が上がる。何度も相手選手から足蹴りを受け、痛みで(ひざまづ)く舞子。最後には足払いをかわし、大外刈りをかけ舞子が勝つシーンが映し出されると、会場から拍手が起こる。

舞子が補足説明と最後の依頼を提示する。

「最後の選手が決勝で当たると予想される熊本選手です。ご覧の通り、足払いという名のローキックを多用する選手です。高校1年のインターハイの決勝の時も彼女と対戦しましたが、試合後私の足はこのようになりました」


涼が、腫れ上がった舞子のすねの画像を映し出した。会場中から「うわー」という声が上がった。

「この後、ここからばい菌が入り、私は1週間入院しました」

外科医の久保埜がつぶやいた。「蜂窩織炎(ほうかしきえん)だ」


「最後のお願いは、このキックを受けても大丈夫なサポーター、もしくはこれをガードする方法のアイデアがありましたら、教えていただきたいと言うことです。柔道では堅いものを身につけることはルール上できません。厚いサポーターも、柔道着のズボンのサイズ上、身に付けられません。参考に柔道の現在のルールも、学園のサイトにあげておきます。試合に出ることは、私にとって決定事項です。是非ご協力お願いします」


会場中から拍手が沸いた。舞子はこれで後へは引き下がれないと腹をくくることができた。



急に、五月の話から飛んだようですが、次回は五月のプレゼンです。

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