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桔梗学園子育て記  作者: 八嶋緋色


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初デート

最近、百貨店が次々無くなりますよね。若い女性が出て行く県って、ショッピングが楽しめないところのような気がします。個人的意見ですが。

「明日、デートに行かないか?」

夕飯時に、柊に言われて、三津は「デートに着ていく服がない」と焦った。

柊や舞子達のように、政治家に会ったり、外部と交渉したりするスタッフは、外行きの服がある。柊もスーツ姿で前髪を上げたりすると、それなりの社会人に見える。しかし、三津は普段はTシャツに猿袴(さっぱかま)だし、修学旅行に行った時は桔梗高校の制服だった。


雲雀(ひばり)さん、デートって何を着て行ったらいいですか?」

「三津ちゃん、どこにデートに行くの?それによって服は替わるよね」

「どこに行くにしても、ジャージじゃ駄目ですよね」

「柊君は、いつものジャケットにチノパンかな?流石に、ジャケットの彼氏と一緒に行動するのに、ジャージはまずいかな?

そうだ。桔梗高校の制服ってジャケットに、タータンチェックのスカートだよね。制服デートって若い子がするじゃない?制服はどう?」


「制服なんか着ていったら、引率の先生と生徒じゃないですか」

「柊に何を着て行ったらいいか聞いたら?」

「聞きましたよ。そうしたら『何でもいい』って言うんです」

「男の子って、そういうところ気が利かないよね」

「雲雀さん、デートに相応しい服を貸してください」

監督におねだりするような内容ではないが、そのくらい三津は切羽詰まっていた。

雲雀は、三津らしからぬおねだりに苦笑したが、ふと思いついたことがあった。


「私の服じゃ、サイズが違いすぎるよ。チームの子も大きい子が多いからね。

そうだ。ちょうどいい。少しフライングだけれど、ソーイング部に行ってみよう」



 雲雀と三津は、岐阜分校のソーイング部を訪ねた。ここは、主にスポーツウエアの開発や修理をしている部門だ。糸川芙美(いとかわふみ)の姉、絹子がこの部門の代表者をしている。

絹子は、芙美とは違って、ふっくらとした体型の優しい印象の女性だ。


「初めまして、糸川絹子です。デートに行くんだって?駄目よ、デートに制服やジャージで行ったら。そうね、デートだったらワンピースがいいかもしれないけれど、行き場所が分からないなら、パンツルックが安全だよね」

「そうですね。スカートはほとんど、はいたことはないんで助かります。特にストッキングを破かずにはける自信がないんで」


「まあ、取りあえず、三津ちゃん。一周回ってみて?ふーん。自分のコンプレックスは?」

「たくさんあって。まず、怒り肩、胸とお尻が大きすぎること。背が低いこと。首が太くて短いこと・・・」


絹子は三津が、そんなにたくさんのコンプレックスを抱いていることにびっくりした。


「肩がしっかりあるとジャケットは似合うし、ウエストが細いので、女性らしい体型が作りやすいし、首が太いのはボートネックやVネックで目立たなくなるし、背が低いのは可愛いよね。悩むことはないと思うんだけれど」

絹子のアドバイスは三津には刺さらないようである。しょうがないので、自分が羽織っているオフホワイトのシャツを脱ぎだした。

「じゃあ、取りあえずこのシャツを着てみて」


「え?大きくないですか?」

「まあまあ、袖をまくるね。どう?鏡を見て、胸と首は気になる?」

絹子のたっぷりしたシャツを着て、首を少し後ろに抜くと、今まで気になっていた胸と首の欠点は全く気にならなくなった。


「雲雀ちゃん、どう思う?」

「うーん。もったいないな。折角の胸とウエストもっと出したいね」


「じゃあ、このニットはどう?」

今度はソーイング部の棚から、体の線がしっかり出る黒色のサマーニットを出してきた。

そして、そこに淡い色のプリーツパンツを合わせてきた。

「このパンツはウエストがゴムで嬉しいです。ニットは・・・・胸が強調されて恥ずかしいです」

「そこでだ。後はショート丈のきれいめデニムジャケットを羽織れば、胸は目立たないし、コーデは完成かな?」


雲雀は盛大に拍手をした。

「あの。パンツも黒じゃ駄目ですか?」

「前身黒って、可愛くないよ。パンツを黒にするなら、ニットを華やかな色、例えば、ペールピンクや赤にしないと、デートじゃない!」

「まあ、三津ちゃん。お食事の時に、薄い色を着て汚すと気になるじゃない?明日は、こんな感じで行ってご覧。このプリーツパンツだったら、スニーカーを履いていっても可愛いよ」

「ヒールじゃなくていいですか?」

「慣れない靴は、デートの後半で足が痛くて楽しめなくなるから」


鏡の前で、頭を捻っている三津を横目に、絹子と雲雀は仕事モードになっていた。


「雲雀さん。制服もこんな組み合わせでいいですか?」

「絹子さん、いいよ。ウエストゴムのパンツは、妊婦さんも穿きやすいし、デニムジャケットは、胸のラインを隠してくれるんで、野球部の制服はこのパターンのイロチ(色違い)でいこうか」

「いいですね。人によって似合う色がありますからね」


 三津は突然、「制服」と言う言葉が出てきて、戸惑った。

「え?『制服』って何ですか?」

「私達のチームは優勝する気だからね。優勝後、チームで移動する時に、ユニホームじゃ味気(あじけ)ないじゃない?だから、以前から『野球部の制服』を作ろうと考えていたんだ。

でも、みんな全く同じスーツも味気ないので、ジャケットだけ、デニム縛りにしようかと考えていたんだ。

ただし、普通のデニムジャケットって重いでしょ?肩こりに悩む妊婦さんには、不向きなので、軽くてストレッチが効く生地を、産地にお願いしていたんだ」

「確かに、このデニムジャケットは、軽くてカーディガンみたいです。6月に着て行っても暑くなさそうです」

「そう、これは夏向きのジャケットだからね。試合前にはみんなの制服決めるから、三津はこれでOK?みんなより一足先に決めちゃったね。中のニットはシャツでもいいんだよ。

今日はデートだからドレスダウンしたけれどね」

三津は、ソーイング部の部屋に、自分サイズのジャケットやパンツがあったことに納得した。



「いつもと違う感じだね」

「似合わない?」

「いや、いつもより大人っぽいかな?」

翌朝、ジャケット姿で、校門のところで待っていた柊は、いつもと違う三津に目を見張った。

「柊が、どこに行くか教えてくれないから、服に悩んだよ」

「ゴメン。驚かせたかったから、行き先は内緒にしたけれど、変なプレッシャーかけたかな?」


 今日、梢を保育施設に預けて出かける先は、岐阜駅前の商業地だった。岐阜県は百貨店が1軒も無い県の一つに数えられていたが、震災後、和歌山と三重の被災者を受け入れたことで、人口が増加した。半導体や精密機械工場、それにドローン製造の工場が移転したことで、労働人口も増加した。その購買力に答えられるように、岐阜駅前に巨大商業施設が建設されたのだ。


「すごいね。動く歩道も完備しているんだね」

「ああ、高層ビルを作る時間が無かったから、低層階の建物に商店を並べたので、移動距離が半端(はんぱ)ないからね。

今日の最初の目的地は、ここだよ」


 その店は商業施設の1階の中程にあったジュエリーショップだった。

「この店は、うちの両親が作った結婚指輪のメーカーも扱っているんだ」

「ご両親はどのメーカーの指輪を買ったの?」

「さあ?三津の欲しい指輪が違うメーカーだと困るから、まずは指輪を見てみよう」

そう言われても、三津は結婚指輪の何が良いのか分からなかった。ただ、普段つけることを考えると、細身で宝石などが着いていない方が良かった。


「僕も自分がつけることを考えると、石が着いていても埋め込んであるものがいいかものね」

三津は店員に聞こえないように、柊に耳打ちした。

「予算は?」

「二人で20万ちょっとかな?」

「え?1本10万?私はそんなに出せないよ」

「高校生に買わせたりしないよ。僕が買ってプレゼントするんじゃないか」

「じゃあ、なるべく安いので・・・」


柊は笑って、店員に声をかけた。

「そこのプラチナの指輪を見せてください」

「はい。では、サイズをお計りしますので、これをはめてください」

そう言って、ゲージ用のリングを差し出した店員の綺麗な指を見て、三津は手を握り込んでしまった。

まだ、津波の時に傷ついた爪が生えそろっていないだけでは無く、手も日焼けで真っ黒だったからだ。


「彼女さんはとってもお若いのですね」

「はい。18歳になったばかりですから」

「いいですね。若いお肌は張りがあって、指輪で飾らなくても綺麗なんて羨ましいです」


何時(いつ)までも三津がもじもじしているので、柊が先に動いた。

「じゃあ、僕が先にサイズを測るよ」

そう言って、出した柊の手は日に焼けて、傷だらけだった。最近は津波の後片付けをしているので、よく見ると顔もかなり日に焼けていた。


柊は、銅製の指輪を外して、シンプルな男性用の指輪をつけて見せた。

店員は外した銅製の指輪を見た。

「この指輪は特注ですか?毎日磨いて大切にされているんですね」

「銅なので、緑青(ろくしょう)が浮かないように気を使っています」


「大切にされている婚約指輪なんですね。では、二つの指輪を重ねづけしますか?それであれば、プラチナとピンクゴールドのコンビにしても綺麗ですね」

盛大に?マークを頭の上に浮かべている三津に柊が説明した。

「ピンクゴールドって、金に銅や銀、パラジウムなどを混ぜた合金なんだ。だから、プラチナの銀色と銅の間にちょうどいい色の緩衝材になるかな」

「そうですね。ただ、銅と同じように少しお手入れが大変ですかね?また、サイズを変えるのは難しいと思います。スポーツされる時はプラチナが良いとおっしゃる方も多いですね」


柊が難しい顔をして悩んでいる三津に笑いかけた。

「先のことは考えなくていいよ。野球する時はプラチナリングだけでもいいし、サイズはみんな変わるものだから、また、新しいのを買ってもいい。うちの母親はスキー場で指輪をなくして、父親に買い直して貰っていた」

「えー。お父様、怒らなかったのですか?」

「うちの母親って、海外の税関で『婚約指輪は賄賂(わいろ)として渡した』って、豪語する人だから。父親も何も言わなかったよ。2本目の指輪は、カルティエのトリニティをおねだりされて、『しょうがないな』って買っていたみたい」


店員も話題に乗ってきた。

「カルティエはありませんが、ティファニーのトリニティリングなら、ここにもありますよ。ご覧になりますか?」

高そうな指輪を勧められそうなので、三津は身構えた。

「いえ、プラチナの地味(じみ)なのでいいです」

「そうですね。高い指輪が買える時には、手がしわしわになってしまうんですよね。お若い時はどんな指輪をされても、綺麗ですよね」

商売っ気の無い店員である。結局、三津と柊はシンプルなプラチナの指輪をオーダーした。



「ああ、緊張した。柊はああいうお店に慣れているのね」

「おいおい、結婚指輪を何度も買う人なんていないよ。僕だって初めてだから。でも多分、三津は、野球している時もつけられる指輪を選ぶって思っていたよ。予算範囲内で助かりました」


「ねえ、お店では聞けなかったけれど、柊や涼君って、お金あるよね。桔梗学園で働いている以外に副業ってしているの?」

「涼は昔から、自作のアクセサリーを通販していたらしいよ。それに戎井(えびすい)呉服店をやっていたお祖父さんから少し、遺産を貰ったらしい」


「柊は?」

「僕は、HPでいろんな人の作品や商品を売って、手数料を貰ったり、株を運用したりしている」

「そういえば、藍深(あいみ)ちゃんの絵も売っているんだっけ?」

「そうだね。彼女の絵は、NFTアートに変換してからオークションで売っているから、少し手間が掛かるけれど、最近の『カラフル昆虫シリーズ』も、好調な売り上げだね」

「そのお金は、藍深ちゃんが管理しているの?」

「管理も運用も僕がしている。でも、この話は、雄太や家族にしちゃ駄目だよ。お金目当てで藍深に近づく人が出てくると困るから」

「でも、藍深ちゃんに彼氏が出来たら?」


自分に焼き餅を焼いているのかと、柊は三津の顔を伺った。しかし、純粋な好奇心らしいので、話を続けることにした。

「なあ、三津は宝くじに当たったら、僕に話すかな?」

三津は暫く考えて、答えた。

「柊や京ちゃんには、話すかな?」


「ありがとう。僕は三津には、信用されているみたいだね。一般に女の人は、宝くじに当たっても、夫には話さないらしい。それは妻の当選金も『自分のもの』と考える夫が多いからだよね。

僕は、藍深がこれから家族や彼氏に頼らなくても、自由になる金があったほうがいいと思っている。だから、藍深がもっとしっかり自分で金の管理が出来るまでは、僕が管理しようと思っている。鞠斗(まりと)にそうやって藍深を託されたしね」


二人は、個室のある店で昼食を食べることにした。


「柊は怒るかも知れないけれど、桔梗学園のHPで稼いだお金を、柊が個人的に使ってもいいの?」


柊は、担々麺のスープを蓮華(れんげ)で掬いながら答えた。三津の非難には、何も動じていないようだった。


「まだ、三津は桔梗学園に入って間が無いから、誤解しちゃうんだね。KKGや桔梗学園のシステムを説明するね。

KKGの人って、自分が発明したものの特許権を個人で有することになっている。だから、売上の10%を自分個人の利益として貰っているんだ。ただ、開発にKKGの費用を使っているので、販売権はKKGにある」


「特許権はKKGに無いんだね」

「そう。でも、特許の申請は研究職の人にとっては苦手なことなんだ。

時間も掛かるし、だから、特許の申請や、販売、PRなどをする部門もある。

その人達には、特許権が無い代わりに、同様に売上の10%を貰う権利がある」

「販売までに複数の人が関わるよね。みんなで10%を分けっこするの?」

「そこはAIが按分(あんぶん)するんだ。残った収入はみんなの生活費や、税金のように公共事業などに使って、最後の残りの金が、KKGの財産になる」


三津は、クリームたっぷりのフルーツパンケーキを頬張りながら、質問を続けた。

「じゃあ、今回の高野連関係の仕事は、私達に給料みたいなのは払われるの?」

「いい質問だね。甲子園球場を高野連が使う時は、無料だけれど、今回は1日30万で貸すことになっている。10日間の借用料は300万円。

入場料収益は普通にすべての観客を受け入れれば、10億円くらいになるけれど、その中から代表校の選手の宿泊費は、高野連が負担するし、役員の日当も出すよね。

僕たちや各分校からの応援も役員として、当然、日当が出るからね」

「そっか、私達は役員扱いなんだね」

「でも、全国ネットで、球場を10日間放映して貰えるから、宣伝効果は充分あるよ。野球場内でも、施設やグッズの説明・販売権も得ているし、球場やアゴラ飛騨内での食事提供や物販も、うちが一手に引き受けたからね」

「甲子園記念グッズは?」

「『甲子園』じゃないので、『飛騨GFドーム』グッズになるけれど、それは販売するみたい」


「選手写真の販売は?」

「今回は女子選手もいるので、望遠カメラを含むカメラの個人持ち込みは禁止する予定だよ。写真はスマホで撮ればいい」

「高野連は反対しなかった?」

「僕は三津の写真が、変なサイトに流出するのは我慢できないからね」

「もう、公私混同」


三津が赤くなって膨れると、柊が真面目な顔をした。


「いや、この球場は女子スポーツ選手の活躍の場にしたいので、そういうところは最初からしっかりしたい。入場ゲートの荷物検査については、空港並みのゲートを用意してある」

「じゃあ、写真は朝日放送と朝日新聞独占なんだね」

「それで充分だろう?岐阜分校の野球のユニホームは、濃い桔梗色にしたのも、透け防止だから」

「あの色にはそういう理由もあったの」



「さて、長居したね。最後にもう一つの目的地に行こう」

「どこに行くの?」

「三津に服を買いに行くんだ」

柊が、三津に私服の指定をしなかったのは、自分で服を買ってあげるつもりだったからだ。しかし、指輪を買いに行くのに、何の服でもいいというところが、恋愛初心者の柊らしいところだ。



柊と三津は、レディースのファッション関係の服が並んでいるゾーンまで歩いて行った。

柊は碧羽(あおば)に、三津が似合いそうなブランドを教えて貰っていた。


「えっと、この店かな?」

碧羽は、制服を卒業したばかりの三津に受け入れられやすい、「トラッド系の店」を紹介してくれた。

三津は、量販店での買い物しかしたことがないので、ショップ店員に声をかけられるとどうも緊張してしまう。

「いらっしゃいませ。何かお探しですか?」

「いつもパンツスタイルなので、ワンピースを探しています。仕事にも着ていけるタイプのものを何枚か見せていただけますか?」

柊は、今回も店員に気さくに話しかけた。


三津は、フリルがたっぷりなワンピースと、丈の長いものには、興味を示さなかったが、紺色のシャツワンピースには、興味を持った。

試着すると、腕回りと胸回りがきついので、1サイズ大きいものを持ってきて貰った。しかし、今度は丈が長すぎて、三津は気に入らなかった。

困ってしまった柊を前に店員が提案をした。

「胸が大きい方は、シャツを着ると胸のボタンが弾けそうで気になるんですよ。ニットか、レーヨンのゆったりしたブラウスに、テーパードパンツはいかがですか?お客様はパンツの方が着慣れていらっしゃいますし、ブラウスの上にカーディガンでも、仕事には差し支えがないですよ」


 結局、店員の勧めるコーディネートの方が、三津も気に入ったので、柊が希望するワンピースは買わないことになってしまった。紺色のテーパードパンツは、三津の走り込んで鍛えたヒップを美しく見せ、シンプルなボウタイが着いたブラウスは、三津の気にしていた胸を目立たなくした。若草色のゆったりしたカーディガンは、三津の顔色によく合っていた。


「秋になりましたら、ショート丈のジャケットなどもたくさん入荷しますので、是非その時はご来店ください」


 三津の買い物の紙袋を提げた柊に、三津は声をかけた。

「どうして、ワンピースがいいと思ったの?」

「着るのに楽かなって思っただけなんだけれど、パンツ姿が似合うんで、今日は店員さんに完敗です」

三津は柊の袖を引いた。

「ん?」

「えへ。こうやって並んでいると、仕事の同僚みたいな感じがするね」

「デートじゃなくて?」

「私も、柊の隣に仕事のパートナーとして立っていたいんだ」


 実は、岐阜の大規模商店街には、KKGが何店舗も出店していた。柊は、その店舗の営業状態の確認もあって、出かけたのだ。

今日出かけたところでは、KKGの店舗はネームバリューも無いので、さほど客の入りが良いとは思えなかった。だからこそ、夏の大会が終わって、その宣伝効果がどのように反映されるのか、そのために、足を運んだのだ。


「じゃあ、夏の大会が終わったら、もう一回、買い物に来ようね」

「アルバイト代が入ったら、私が、柊のシャツを買ってあげるね」


(そういうことじゃないんだが・・・・)

「楽しみにしているよ。そうだ、碧羽に御礼の土産を買って帰らないと。急がないとね。もう、そろそろ(こずえ)のお迎えの時間だ」

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