紅羽の夜の自由時間
新しい登場人物が多くてすいません。学校が舞台だと、人が増えてしまいます。名前も区別をするために、変わった名前が多くて、覚えにくいですね。
2日目の夕飯は昼と打って変わって、6人で食事を取ると言うことなく、それぞれ別々の行動を取った。
舞子と涼は、周囲の好奇の視線をものともせず、2人で食卓を囲んだ。夜の自由時間に武道場に行って、練習をするためだ。
紅羽は、涼の情報により、蹴斗達とバスケットができないか交渉するため、ファーストチルドレンの3名を探しに行った。
「蹴斗さん、今日はバスケットしますか?」
「御免、今日からドローンレース部の活動があるからそっちに行くんだ」
がっかりしている紅羽のところに鞠斗が、180センチ近い身長の女生徒を2人連れてきた。
「ほら、恥ずかしがってないで自己紹介しろよ」
「初めまして、高校2年の久保埜万里です」
「久保埜笑万です。憧れの高木選手に会えるなんて光栄です。あの、バスケット教えてもらえませんか」
どうも彼女たちは、食堂で紅羽のことに気づいて、こそこそ話していた2人らしかった。2人は背が高いので、蹴斗や鞠斗が目を掛けて育てていたと言うことだ。
妹の碧羽と同じ年の少女に出会ったことは、紅羽にしては想定外の喜びだった。早速、体育館に移動して、紅羽、鞠斗、万里、笑万の4人でバスケットが始まった。付き添い医師には彼女たちの母で、外科医の久保埜千尋がニコニコとついてきた。じゃんけんで紅羽と万里、鞠斗と笑万が組むことになった。
15分後、久保埜医師から「今日はそのくらいにしなさい」とドクターストップがかかった。一方的内容で紅羽のチームが勝った。身長190センチを越える鞠斗の頭上を、恐ろしい正確さで、紅羽は3ポイントシュートを立て続けに打つかと思うと、むきになって跳び上がる鞠斗の足下を悠々とカットインして、自分に笑万を引きつけて、最後に万里にボールを渡す。
「くっそー」と座り込む鞠斗を横目に、紅羽は久し振りのバスケットに目を輝かせていた。
「先輩、すごいです。3ポイント、ほとんど外さないんですね」
「うち、海外の選手と比較すると小さいんで、3ポイント外すと勝負にならないんだよね」
「毎日何本打ったら、そんなに入るんですか」
「スラムダンクの桜木花道は10日で2万本だったけど、漫然と打ってたら駄目だよね。リングの手前に乗るように意識して打つんだ。でも、1日延べにして2千本は打ってたかな。シュート練習もそんなに外さなければ、手前に返ってくるから、2千本でもたいして時間はかからないよ」
「神」「リバウンドいらず」といって双子は両手を組んで天井を仰いだ。
「世界レベルは考えることが違うな」鞠斗はフロアに大の字にひっくり返ってしまった。
「2人も上手いよ。万里はスクリーンアウトが上手だから、カットインしやすかったし、笑万はリバウンドの位置取りが上手だよね。背の高い男子とやっていたから、体幹がしっかりしている。これに走れる俊足が入れば、いいチームになるね」
気がつくとコートのまわりには、10人近い中高生の男女がいた。その中に今年の体育祭を提案した越生五月もいた。
「体育祭で男女混合のバスケットの試合やってもいいですか?」
そんな提案が体育祭実行委員会で、この後検討されることになった。