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戦士の休息

たまに、副題が上手くいかなくて困ることがあります。

「晴崇、ぐあいはどう?」

午後に光が差し込む保健室のベッドで、晴崇がやっと目を覚ました。


「ああ、圭。目を見てくれ、どうなっている?」

「少し、黒目が揺れている。でも、点滴も終わって、大分眠ったよね。顔色が良くなったよ」

晴崇ははっとして、身体を起こしたが、途端に頭が痛くなってしまった。

「今何時だ?」

「3時過ぎ。お昼、少し食べる?さっき、琉がお握りとおかずを持ってきてくれたんだけれど」


ベッドサイドには、白いお握りと漬物が置いてあった。

「大町さんが、修学旅行のお土産で買ってきた漬物だって。なんか群馬で有名な『たむらや』って漬物屋さんが、仙台でお店を再開したんだって。厨房にいる理子さんも、時間が経つと海苔がしけるから、塩結びを握ってくれた」

「琉は、いいお父さんとお母さんがいるんだな」


「そうだね。琉の友達にまで気を使ってくれるんだもんね。寝たまま、食べる?」

そう言うと、漬物を摘まんで、圭が口元に運んでくれた。

「お握りもくれ」

そう言うと、晴崇は、漬物をつまみにお握りを1つ平らげてしまった。

「急いで食べると、喉に詰まるよ。お茶は飲む?」

圭に頭を支えて貰って半身を起こすと、晴崇はゆっくり湯飲みの茶を飲み込んだ。

「なんか、こんな時間、久し振りだな」

「ていうか、多分始めてかも。双子の親は忙しくてね」

「俺も、最近ほとんどうちに帰れてないもんな」


「ミサイルがどうなったか、聞かないの?」

「3時にこんな状態なんだから、大丈夫だったんだろう?チーズケーキのお裾分けも来ているし、誕生日会も普通に開かれたみたいだし」

「晴崇って、チョコは食べるけれど、ケーキはレアチーズケーキしか食べられないの?」

「いやぁ、マーにね小さい頃レアチーズケーキが好きだって言ったら、その記憶が上書きされなくて、周囲の人はみんな、晴崇はレアチーズって刷り込みされている」

「あー。桔梗学園って、そんなにケーキを食べる機会がないもんね」

「まあ、嫌いじゃないから、敢えて否定しないけど」



晴崇のメニエール病によるめまいが治ったのは、翌日の朝だった。

「もっと秘密の部屋」ではいつものメンバーが集まっていたが、以前のような緊張感はなくなっていた。


「お早う。目を見せて」

京に両手で顔を挟まれた。

眼振(がんしん)も治ったね。でも、無理しちゃ駄目だよ。一度メニエール病になると、無理は利かないからね」

「はぁい。夕べは圭に肩も揉んで貰ったし、ゆっくり休んだから」

そう言いながら、晴崇は、秋田市ポートタワー「セリオン」からの映像をチェックした。


美規(みのり)が、晴崇に珈琲を渡しながら映像を解説し始めた。

「結論から言えば、外殻バリアと通常のバリアに挟まれた、核ミサイルは、そこで核融合をしたものの、エネルギーは地下に送られ、被害は出なかった。地下に送られたエネルギーは、水素電池のエネルギーに変換され、各地にその日のうちに運ばれ、次回の核攻撃の防御にはもう『ヤシマ作戦』は行わなくてよいということになった。後、10回くらい全国にバリアを張れるくらいの水素電池が出来たからね」


晴崇は、椅子を回して美規に身体(からだ)を向けた。

「で?次の攻撃の情報は傍受できましたか?」

美規は深いため息をついた。

「R国の動きはまだ十分に探れないが、K国は12月24日、宮城県の女川(おながわ)原発を標的に再度、核攻撃をするそうだ」


晴崇は、ゆっくり珈琲を飲み干して言った。

「マーの命日に再度攻撃して来るってことだね。美子さん、マーはこの情報を知っている?」

「うん。知っているよ」

美子はソファーに深々と腰を下ろして、何気(なにげ)ない風に言った。

「マーは、『K国に関しては3ヶ月も猶予があるから、次の行事も計画したらいいよ』って言っていた。修学旅行中に高校生からは、クリスマスマーケットや分校との交流会をしたいって言っていたし、大町技術員は賀来人と一緒になって、『下町遊園地』を作りたいって話で盛り上がったらしい」


「なんかなぁ」

「晴崇達も、そろそろ外が涼しくなるから、子連れでどこかに行かない?」


舞子が同意した。

「桔梗ヶ山に遠足に行かない?藤ヶ山と違って、地震で崩れているところもないし、晴崇が野生動物を追尾するシステムを作ってくれたから、東城寺周辺も安全じゃない」

晴崇が舞子を見て、不思議そうな顔をした。

「それって、東城寺の境内(けいだい)で遊ぶってこと?」

「うん。木の実を取ったり、隠れん坊をしたり、子供遊び場としては楽しいよ。多分、9月末なら、木陰も多くて、涼しいかな」

「そうだな。未満児と学園の外で遊ぶのもいいな」


「保育施設に人手が足りない場合は、お祖母ちゃん達が、手伝いに来てくれるよ」



 翌日から、食堂の掲示板に、9月から10月までの計画が競って、張り出された。


「未満児と遊ぼう at 東城寺境内 ボランティア募集中」

「岐阜分校、富山分校合同交流会 at 富山分校 参加者募集中」

「下町遊園地プロジェクト 参加者募集中 説明会開催 at 浜昼顔地区 山吹ゾーン」

「桔梗村、桔梗学園、C大学合同クリスマスマーケット 出店者募集中」

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