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午前の学習とそれぞれの昼食

 9時からは東棟B2のクラスルームで、基礎的な学習が始まる。女子は9時5分前に「2806」のクラスルームに入り、男子は時間ギリギリに「MEN28」のクラスルームに入った。

 中に入ると英文法の、少し年季の入った本3冊と、タブレットとヘッドホンが各3台広い机の上に置いてあった。とりあえずヘッドホンを付けてタブレットを起動してみる。桔梗(ききょう)バンドをつけてタブレットの前にいるせいか、すぐ「HELLO MAIKO」などの文字が表示された。次に、それぞれの英語力を試すテストが始まった。舞子はリスニングが、紅羽(くれは)はリーディングが、圭は英文法が弱いと判定された。そして3人共通に現代語で普通に使われている単語や熟語が弱いと判定された。

 タブレットはその後、それぞれに勧める勉強法とそれを紹介するビデオを流した。

 3人はタブレットの電源が、プツッと切れたことで、昼食時間が来たことに気がついた。

「なんか、頭がしゅーっと焦げたような気がする」


 紅羽がクラスルームのドアを開けながら言った。廊下で男子3人組と合流した。涼がうなずき気味だったので、英語の勉強がきつかったことが分かる。反対に柊は母親と一緒に、海外に数年滞在したこともあるので、英語の勉強が楽しかったようだ。

「彼女はAIなのかな、きれいな外国人のお姉さんとずーっとお話しするって勉強で、楽しかった。

明日は2人でマンハッタンをデートするって約束しちゃった」

琉が「リア充もどき。⚫ね」と親指を下に向けていた。


 昼食には、男子が頑張って取ってきた筍がふんだんに使われていた。油揚げ入りの筍ご飯に、豚肉と筍の煮物。男子には何故か、鶏の唐揚げが女子より2つほど多くのっている。肉体労働のご褒美だろう。舞子がちらっと、男子のトレーを覗いていた。

 デザートには贅沢にサクランボがのっていた。「さっ佐藤錦ではないか」と柊までも感嘆していた。


 今日は情報交換を兼ねて、6人で机を囲んだ。男子は注目されているのを感じていたが、それを無視するように、同期の女子と会話を進めた。


 琉と圭は食事の間中、話が弾んでいた。

「板垣さんって。『ドローンシミュレータ』やっていたの?え?もしかしてあの有名な『リング』さんだったの。感動だな。2年前のランキング1位取ってから、あんまりゲームに入ってこなかったんで、どうしたのかなって思ってたんだ。

それでね。蹴斗君がドローンの部活動作っていて入らないかって。世界大会目指すのに4名必要なんだって。俺はメカやりたいんだけど、やっぱパイロットは圭さんしかいないよ」

「まあ、見るだけなら。入るかどうかは、後で考えていいだろ」

どうも、部活動の勧誘をしていたらしい。


 紅羽は柊と隣に座ったので、質問をしていた。

「ところで、男子って昼寝時間あるの?」

「まあ、いろいろしていいらしいんだけど、僕と琉は、昨夜は3時まで妹たちの夜泣きで眠れなかったんで、今日は寝ると思う」


 舞子と涼は「食堂会議」のプレゼンの打ち合わせを始めた。

「でね、今週末の土曜日の夕飯時に、『食堂会議』でプレゼンするように申し込んじゃった」

「『食堂会議』は何か、なんとなく分かったんだけれど、何を依頼するんだ」

「まずは、妊婦でできる運動のサポートを、ドクターや運動の専門家に依頼したいんだ」

「運動の専門家っているの?」

「1人1人確認するより、一括して聞いた方が効率的でしょ?」

「まあね。ドクターに健康面のサポートを頼むのは良いと思う」

「それから、圭と話したんだけど、『フィットスポーツ』みたいなアプリを、柔道風に改造できるかもって言っていたんだ。だから、試合のシミュレーションができるアプリの提案ができる人を探すのもありかな。圭も考えてくれるって」

(圭って、ゲームを改良できるくらいのプログラム能力があるんだ。何にも取り柄がないの俺だけだな)


「それとね。サポーターの改良をお願いできるかなって考えている。多分、決勝で当たる熊本成美(くまもとなるみ)ちゃん。足払いって言って、ローキックするじゃない」

「あー。中学の時、舞子が蜂窩織炎(ほうかしきえん)になったときの相手」


「蜂窩織炎」とは、皮膚の深い部分で生じた感染症だが、柔道などで、繰り返し蹴られて膝下に傷ができると、細菌が入り込みかかってしまう例がある。舞子も傷から感染し、膿がたまり、発熱してしまった。父親の指導の下、なかなか練習を休めなかった舞子は、感染を放置して入院して点滴治療をしたのだ。


「でも、どんな厚いサポーターでも蹴られ続けたら傷はできるよ」

「なんか、卵が落ちても割れないって材質があるじゃない?あんな風に、衝撃を吸収する新素材があったら良いな」

「まあそんなのがあったら、ヘッドギアにして、柔道の死亡事故を減らせるかもね」

「受け身の痛さも軽減できるかも」

「まさか、妊婦には使わないだろうね」

「流石にそれはない」

「大体受け身の痛さを軽減なんて言ったら、潜水服みたいに厚いサポーターになるし、暑く着ていられないし、動きも鈍くなるよ」

「だね。スプレーで吹き付けて、冷やしたら取れるような膜ができたら良いのに」

「まさか、それも依頼してみるの?」

「うん、依頼するのはタダだしね」


 どんなプレゼンになるのか。楽しみである。


 食後、他の5人は部屋に戻っていったが、涼は自分のできることをしようと、そのまま食堂に残った。




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