表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
139/250

大学移転交渉

明日は仕事があって、新作をアップできないかも知れませんので、今日は2本、アップします。

 6月30日、首都直下地震まで、後1ヶ月と半分。

薫風庵には移転を申し出る大学関係者が、今日も来ていた。


「お持たせですが」

そう言って、東京土産の「水無月(みなづき)」が並んだテーブルには、狼谷柊(かみやしゅう)と大学関係者が並んだ。


挨拶もそこそこに、珊瑚美規(さんごみのり)は6月30日しか製造販売されない「水無月」をほおばった。

「お気に召していただけて幸いです」

日本で1校しかない女子国立大学からきた教授が挨拶した。

柊が気を利かせて、教授の紹介を始めた。

「美規さん、こちらO女子大学の教授です。今回、移転の希望でいらっしゃいました」

「初めまして、まず、桔梗学園の移転条件を再度確認させていただきます。本学が必要としている学部は芸術、農学、情報系の学部です。工学、建築にも門戸を開いています。そして、教授はすべて女性、生徒もすべて女性という条件もあります」


「それで、N女子大は許されたのですね」

「はい、旧桔梗高校の校舎とその敷地を30億で借りてくださることになりました」

「30億。私立大学は思い切りがいいですね」

「早い者勝ちですから、後からT女子大学が35億という話をくださいましたが、既にN女子大に決まっていますから」

「値段を釣り上げることはされないのですね」

「そんな時間はありませんよ」


「N大学は借用という話ですが、どうして買い上げなかったのですか?差し支えなかったら教えてください」

「さあ?もっといい条件が見つかったら移転する気があったと思います。それでも、大学の財産や学生を避難させるには取りあえず場所が必要だったのではないでしょうか」

「うちはここに新たなキャンパスを作る気があるのですが」

「条件をのんでいただければ、どんな考えでも結構です」

「うちだと理学部の情報科学科と、芸術・表現行動科学科でしょうか。せめて理学部全体を受け入れて貰えませんか?」

「N女子大学は建築デザイン学部の建築デザイン学科だけが来ます」

「え?それに30億ですか?」

「はい」


「他に話に来ているところは?」

「次の間に、C大学さんがいます。多分園芸学部と工学部の希望を申し出るでしょう」


O女子大学はすごすご帰って行った。


「自分も帰りましょうか?」

「誰かにドローンで東三条まで遅らせればいいよ。千葉県のC大学の話の方が面白いですよ」

「面白いって・・」


結局、C大学は園芸学部と工学部のみの移転を受け入れ、桔梗村に新キャンパスを桔梗学園村と共同で作ることで話がついた。



「さあ、大学の受け入れはこれで終わりにしますか」

「ちょっと待ってください。芸術系の学部はまだ来ていませんし、茨城県の国立大学も、僕の大学からも話が来ているんですが・・・」

「残念だね。あまり受け入れても桔梗村のキャパを越えるから。それに優秀な人材は、大学を作ってから、引き抜いてきても間に合うから」

「はあ?」


「まずは、この地に授業できる箱と人が住める箱を並べないとね」

「マインクラフトじゃあるまいし」

「いや、箱の用意は出来ているんだ。後は整地をしてから、並べるだけだよ」

「琉から聞きましたよ。浜昼顔地区の住宅建築も始めたって。忙しいんじゃないですか?人手は足りますか」

「うん。かっこいい建物は、建築学部が来たら好きなように作らせればいいじゃん。災害廃棄物からコンクリを抜き出して、再生コンクリを作って、大型車両が通れる道を作ってあるので、C大学が来る前に、箱を並べた学園都市が出来るよ。

園芸科が来たら、土も多少入れ替えて、緑地も作ろうと考えている。学園都市を1から作るのってワクワクしないか?」


美規は、最後の「水無月」を美味しそうに口に頬張って、赤子のようにほっぺを叩いた。


「ところで、ずっと気になっていたんですが、どうして学生も教授も女子ばかりなんですか?」

「大学ではなかなか女性は教授になれなからね。1ヶ所ぐらい『女性による女性のための女性の学校』が出来てもいいんじゃないか。それに女性ばかりの方が、犯罪が少ない」

「なんか、俺が戻ってきにくい雰囲気だな」


「柊はこれで『大学との窓口』という仕事が終わったから、いつでも戻ってきていいぞ。それに女性はよりどりみどりだ」

「それでも、もてない俺ってよっぽど魅力がないんでしょうね」

「そうは思わないが、外務省にいる君のお母さんの椿さんも、造幣局のお父さんの松尾さんも、また別居だね。弟の桜治郎(おうじろう)はどうするんだ?」

「父親と一緒に住んでいますが、引き籠もっているみたいです」


美規はそれには全く興味を示さず話題を変えた。

「ふーん。梢ちゃんは椿さんと一緒に住むの?」

「いや、母さんはまたここに梢を預けたいと言っています」

「で?君はどうしたいの?」

柊は深くため息をついた。

「わかりました。ここで大学移転のコーディネートをします」

「そうだね。女子大生と教授の面倒をみてくれ」

「そう言うと、誤解を招きます」


そうなることを予想して、柊は身の回りのものを持って桔梗学園に帰って来たのだ。

梢は母親が後で届けてくれるだろう。

柊はまた琉と一緒の部屋で暮らすのが楽しみでもあった。

柊が遂に帰って来ましたね。ところで舞子の兄、東城寺悠太郎の仕事はまだ終わらないのでしょうか。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ