「こしかぜ」と県庁の中
すいません。この話の前に新しい話を挟みました。
帰りのドローンの中で賀来人は、技術員大町の話を琉と圭にした。
「へー。スタンプを押していなくても、元々中にいた人はバリアの中に入っていられるんだ」
琉がその話に食い付いた。
「圭はそういう例を知っている?」
「いや、知らない。帰ったら晴崇に聞いてみる。もしかしたら、バリアのバグかも知れないし、早めにその2人にスタンプを押さないと、彼らはその内、バリアから弾かれるかも知れないね。今は洪水から守る程度のバリアだけれど、その内、暑さや野生動物などからも守れるようにバリアを強くするかも知れないからね」
「ああ、危険と言えば野生動物もいたね。今動物たちはどこに避難しているんだろう?」
「わからない。でも、今日は新潟市全域を自衛隊が避難者を捜索しているらしいけれど、県警察は桔梗村を捜索するらしいから、動物についても分かるかも知れないね」
「なんで、わかるの?」
「桔梗学園のスタンプで生体反応をチェックできる機械を自衛隊と県警に貸し出してあるから、そこで取得したデータは桔梗学園にも入ってくるよ」
同じ時間、新潟県警のヘリ「こしかぜ」の中
新潟県警は地震の前に、県庁の屋上に県警のヘリ、「ときかぜ」「ゆきかぜ」「こしかぜ」の3機を避難させており、自衛隊と共同で今回の地震の避難者捜索に当たっている。
「新潟市内も水浸しだけれど、桔梗村もひどいすね。さっき、『ゆきかぜ』が国道で見つけたのは、やぱり桔梗村村長だったらしいすね。もう少し早くジャイアントスワンにたどり着いていれば助かったのにな」
「ああ。まあ、こっちは生きている被災者を見つけたいもんだね。まず、病院と老人ホームには生体反応はないな。桔梗学園のドローンが、被災当日中の人や医者を長岡に移送したらしいからな」
「桔梗学園のドローンって、何人運べるんすか」
「なんか、大型バス1台入るくらい大きいのがあるらしいよ」
「それはもう、ドローンじゃないすね」
「ヘリだってそこまで運べないよ。飛行船レベルだよね」
「まじ、巨人とだって戦えるんじゃないんすか」
「あれ、タブレットに生体反応は出てないけれど、屋根の上に人が避難しているじゃないか」
「ということは、桔梗村村民じゃないってことすか?」
「なんか、あの人達、でかいバックをいくつも持っているな」
「まさか、泥棒さんとか」
「じゃあ、まずバックを引き上げようか」
引き上げたバックには、各家から盗み出した通帳や判子、貴重品がたっぷり入っていた。
「お前、いい感しているな。次は引き上げたら、すぐ、手錠をはめるぞ」
かくして、新潟県警は人命救助と空き巣確保を同時におこなった。
空き巣は有り難いことに、桔梗村村民が留守の間、各家から貴重品を運び出してくれたのだ。
その後、「こしかぜ」はゆっくり桔梗村の上空を旋回して、生体反応が桔梗高校と桔梗小学校にしかないことを確認し、新潟市南区の捜索に回った。
同じ時間、新潟県庁の中。
「高木さん、奥さんから連絡ありました?」
「近さん、今連絡を受けました。桔梗高校にみんな無事避難しているそうです。近さんの娘さん2人も無事だそうですよ」
「ありがとうございます。長女の澄子は大学に行って大分大人になったみたいなんですが、次女の清那が我が儘放題で、皆さんに迷惑掛けていないといいですけれど。
今、嫁は実家の新発田市に避難しているんですけれど、水が引いたら、娘達はそっちに避難させようと思います」
「そうですね。その方が安心ですよ。土木課の私達は、退職しない限り、復興の仕事から外れませんからね」
「高木さんの奥さんも娘さんも、桔梗高校に避難しているんですよね」
「家の貴重品は、東城寺さんに預かって貰っているんですが、嫁は多分、自分の生徒がいる限り、高校にいると思いますよ」
「県庁は当分住むことが出来るような施設が完備していますが、夜になると、むっと汚水の匂いが上がってくるのは困りますよね」
「いくらエアーマットがあっても会議室では寝苦しいですよね」
高木三太郎と近澄人は、県庁の窓から新潟の街を見下ろしながら、話し合っていた。
「でも、新潟市は本当に避難が完了していて良かったですね」
「本当ですよね。あの『新潟県広域交流会』の当日に地震があるなんて、花口県知事は占い師でも雇ったんでしょうかね」
「高木さん、噂なんですけれどね。南海トラフ大地震対策で、四国でもこういう交流会があるらしいですよ」
「ああ、私もその噂を聞きました。今度は『西日本大規模避難訓練週間』って名前にするって話ですよね」
「日付は6月4日から11日。兵庫県庁に勤めている友人から聞いたんです。昨日も電話がかかってきて、『新潟どうだ?』って」
「知さん、新潟の様子を見れば、西日本も本気になりますよね。南海トラフ大地震は6月11日ですか。でも、それが起こったら、自衛隊の総力が西日本に行きますから、水が引いた後の道路を作るのは、私達の仕事ですね」
「新潟市内にある重機は、大丈夫ですかね?」
「それの避難の提案もしました。重機レンタル会社さんなんかは、高台に自社のトラック使って重機を運んだみたいです」
「桔梗村には道路を作る重機なんて無いですよね。それも桔梗学園村から援助をして貰うしかないですね。重機もガソリンがいるから、まずはガソリンを調達してお願いしないといけないですかね」
「近さん、私と女房はこの間、桔梗学園の中に入ったんですよ。上の娘の結婚式があるからって。そこで、桔梗学園には、水素で動く重機が開発されて、実用化されているらしいんです。他にもバイオマス燃料で動くドローンとか・・・」
「すごいですね。あそこの研究所、KKGでしたっけ?何を作っているか謎ですが、災害対応のトイレ以外も研究しているんですか。私も入社したいですね」
「社員は、ほとんど女性ばかりだそうですよ」
「うらやましい。いや、家の嫁さんに怒られますね。高木さんのところの下のお嬢さんは、桔梗学園に入らないんですか?」
「恥ずかしながら、試験に落ちたそうです」
お父さん、三津と碧羽は今、避難所経営の課題で、試験を受験中なのだ。
本人達は気づいていないけれど。
いっぱい話をためて、一日一つずつアップしていたら、とんでもないミスをしました。わかりにくかった人ごめんなさい。話が1つ抜けていました。お詫び?に今日は話を複数アップします。