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大食堂

昨晩、10話、アップしましたが、1話目は後半、かなり付け足しました。

 女子が食堂に着いた時には、男子はもう食べ終わって帰るところだった。

女子に向かって柊が声をかけてきた。

「すっげー、おいしかったよ。俺たちこれからお姫様のお迎えに行ってきま~す」


「鞠斗ぉ~。そんな乱れた服でそちらのお姫様達とお話ししてたの?」

蹴斗(しゅうと)鞠斗(まりと)の緩んだネクタイをつかんで構った。


紅羽が舞子の耳元で「そういうこと?二人の関係って・・・・」とささやいた。


蹴斗の手から、ネクタイを引っ張って、「誤解されるだろう?」と鞠斗は食堂の中に入っていった。

勤務時間は終わったが、食堂の案内はしてくれるようだ。


 大食堂は1階だが、強い西日が入らないように地面から一階分下がっている。壁面は一面ガラス張りで、目の前にはハーブガーデンが広がっている。奥には梅、柚、無花果(いちじく)の木が数本ずつ植えてある。木の下には雨が降るのを待つように紫陽花(あじさい)が並んでいる。それを見ながら食事をしてもいいし、入り口から離れた場所には、TVの画面がいくつか並んでいて、すべて英語の放送が流れている。


 窓際の一番明るい席には、学園長がゆったりとハーブティーを飲んでいる。夕飯はこちらで食べるようだ。カフェテリア方式なので、鞠斗の後に着いてレーンに並ぶ。食事が自動的に出される口に、桔梗バンドをかざすと、予想通り空豆とエビの炒め物が渡される。


「あれ?」紅羽(くれは)がみんなと違う料理を渡されて固まっていると、鞠斗が振り返って、「お前、エビ食えないんじゃないか」と教えてくれる。エビが食べられない紅羽には、青椒肉絲(チンジャオロース)()でた空豆が添えられていた。

「残すなよ。カロリー計算されているんだからな。でも人に食べてもらうのはいいんだぞ」と、紅羽のトレーにある茹でた空豆に視線を走らせる。

「鞠斗。嘘教えるな」と鞠斗の脇腹をペンの芯でつついて、「今日の栄養士」とネームプレートを下げた女性が怒る。鞠斗は急に子供の顔をして、肩をすくめる。

「ばれなきゃいいんだ」という小さな声は、すぐ後ろにいた舞子にしか聞こえていなかった。


 4人で席に着くと、「高木さんだ」とか「東城寺さんもいる」などのささやきが聞こえた。

「みんな別に悪気があって言っているんじゃない。話しかけたら何でも教えてくれる先輩だ」

4人分の水を持ってきた鞠斗が言う。


「寮に帰ったら、洗濯乾燥室のシステムや温泉なんかも、女子寮の誰かに案内してもらえばいい。

明日の連絡の確認方法も、部屋に入って俺には教えられないからな。

食事が終わったら、俺の仕事は終わりで解散だから聞きたいことがあれば今のうちだぞ」


圭が慌てて、スマホのメモ帳を開いた。

「あの自由時間に『部活動』もあるって言っていたと思うんですけれど、それはどういうものですか」

「ああ、自由時間に何人か集まって同じことをするのを『部活動』と言うだけだ、蹴斗(しゅうと)も『ドローンレース』の部活動に入っているから、多分(りゅう)なんか誘われているんじゃないか。ドローンレース大会に参加するには最低4人はいるらしいからな」


「鞠斗さんも部活動やっているんですか」舞子が聞いた。

「俺は一人で運動するのが好きだな。走ったり、水泳したり、バスケットしたり」

「バスケットしてもいいんですか」紅羽が飛びついた。

「俺たちがバスケしていたら、入ってきたら?2対2ができるな」


「他にどんなスポーツが出来るんですか」圭が聞く。

「西棟のB2にはeスポーツやゲームの演習場があるし、体育館の上5階にはグランドもある。入るのに許可がいるけれど、射撃練習場もある」

「競技射撃ですか」

「いや、実戦用だ。近くの山の害獣を撃つために、結構リアルな猪や熊が出てくる映像があって、それと戦っているって言ってた」

「桔梗ヶ山にも秋と春に猪出ますもんね。祖父がたまに退治に出かけていました」舞子が割り込んだ。

「出産後は習ったらいいよ。男どもはこの秋から現場に出るけど」


筍ご飯の最後の一口を食べながら鞠斗は言った。

紅羽が思い出したように言った。

「最後に、明日はどこへ行ったらいいのですか」

「部屋の情報表示装置見れば、みんな分かるけど、まあ教える。


朝、6時半に薫風庵の坂の下に行って。晴崇(はるたか)がそこに待っているから、畑に連れて行ってもらうといいよ。

明日は雨だから、それぞれの部屋に置いてあるレインコートと長靴を着て外に出ること。服装は家事が出来る服装なら何でもいい。

9時と14時の基礎学習は、昨日行った東棟B2のクラスルーム。自由時間は明日は学園内を探索したら?桔梗バンドが赤くなるところ以外はどこでも行けるから。

また疑問があったら、朝ご飯の時、まさちゃん、いや、学園長に聞けばいいよ。ご馳走様。じゃあお休み」

そう言って鞠斗は、スーツを肩に引っかけて、食器を下げに行ってしまった。


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