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先輩の策略

2010年、妊娠した高校生が、自由に先進的に学ぶことができる「桔梗学園」が設立した。それは単に少子化対策や男女雇用機会均等のための学校ではなかった。設立に関わった五十嵐三姉妹の本当の目的は何か。

物語はそこから18年経ったところから始まります。柔道日本一の少女舞子、バスケット美人姉妹の長女紅羽、ドローンパイロット圭の三少女が、高校3年になって突然妊婦になってしまい、桔梗学園に入学したところからスタート。そこに桔梗学園初の男子学生の入学。18歳になっていた桔梗学園の一期生の子供達が紡ぐ、ちょっと未来の青春学園物語。

 妊娠にいたる場面はぼんやりしていますが、BL的要素もありますので、ご注意ください。

 

 「健太、新部長はお前しかいないよ。俺たちが果たせなかった甲子園出場の夢をかなえてくれよ」

そう言って、3年生を送る会では多くの先輩が健太に声をかけていった。今年の桔梗(ききょう)高校は1年生からエースを務める五十沢健太(いかざわけんた)に、同じく1年からバッテリーを組んでいた強肩の山田一雄と、その弟で左腕の山田雄太を擁し、戦力が充実している。昨年の県大会はベスト4で涙をのんだが、今年こそ甲子園に行けるのではないかと、野球部OBだけでなく、桔梗村全体が盛り上がっている。


 「去年の県大会は俺が抑えきれず、甲子園に行けなくて済まなかった」

卒業生の仲村が健太に声をかけてきた。球数(たまかず)制限のおかげで、準決勝は健太が最後まで投げきれず、3年生の仲村がリリーフとして入ったのだ。2年間大きな試合のピッチャーはすべて、五十沢が務めてきたので、仲村にとっては初めての公式戦のマウンドだった。そして緊張感でなかなかストライクが取れず、折角先制していた点数を守り切れず、桔梗高校野球部は敗退したのだった。


「先輩、一人のせいではないですよ。僕も早めに抑えておけばよかったのですから」

悪気のない五十沢の言葉は、仲村の心をえぐった。

イケメンでさわやかで成績もよい五十沢。女子にもてるだけでなく、オリンピック候補選手の高木紅羽(たかぎくれは)と付き合っているという噂もある。


 仲村の心に悪意の目が芽生えた。

「五十沢、例年、3年生を送る会で、後輩にシークレットミッションが下されるのを知っているか?」

「仲村先輩、何ですか?教えてください。俺たち後輩にも伝えなきゃいけない伝統なんですよね」

「18歳になった3年生にしかできないミッションなんだけど」

「自分、4月生まれです」

その言葉を聞いて、仲村は尻のポケットから財布を取り出し、その小銭入れからゴム製品をぬきだした。

「春の大会前に、18歳の乙女にこれを使うんだ。これが桔梗高校野球部の伝統だ。でもこれを成功できたのは30年前、初めて甲子園に行った年のキャプテン一人だと聞いている」

「どうしてですか」

「誰もが、お前みたいに女をよりどりみどりなわけないだろう。練習で忙しくて、女と付き合う時間もないし、まして春の大会前に18歳の処女(おとめ)が簡単に見つかるか?」

仲村は、健太の彼女と言われる高木紅羽が4月生まれと言うことを承知している。そして2人の家が向かい合わせに建っていることも。

「先輩、これを使うと甲子園に行けるかもしれないってことですね」

(成績はいいけれど、こいつ馬鹿だな。まあ、お前の運がどこまで続いているか。卒業後も楽しみしているよ)


4月、五十沢健太(いかざわけんた)の部屋には、いつものように、床に寝転んで漫画に読みふけっている紅羽がいた。しかし、今日は紅羽の妹、碧羽(あおば)は友達の家でお泊まり会だと言って、ここにはいなかった。

健太の母親も同窓会と言ってめかし込んで出て行った。父親も2泊3日の出張で、今晩は紅羽と2人きりなのだ。今日がチャンスだ。健太は例の話を紅羽に持ちかけることにした。


「3月にさ、野球部の3年生送る会があったんだけど」

「あー、うちらもあった。先輩に花束と色紙送ったよ」

「先輩から、・・・・何か貰った?」

「バスケ部はね。部室に置くものをいつも貰うんだ。今年はね、室内乾燥機だったな?部室って湿度が高いでしょ」

紅羽は漫画から目を離さずに、いつものように受け答えをする。健太は、勉強机の脇の椅子に座って、椅子をぐるぐる回しながら聞いた。

「紅羽、個人には何か貰った?」

「私はね、オリンピックに持って行くバスタオル。部員全員の名前入りのやつ貰った。『狙え、金メダル』なんて刺繍も入っていたな。ん?野球部は後輩に何か残すの?」

「俺らは、甲子園で掲げてくれって、新しい部旗を貰った」

「お互い、責任重大ですな」

軽くそう言って、紅羽は立ち上がって、健太の勉強机にあったポッキーの箱に手を伸ばした。

健太は、ポッキーをつかんだ紅羽の手を持って、そのポッキーを自分の口に入れてしまった。

「あー。ずるい。うちが食べようとしたのに」

「昔、こういうの流行ったよな」そう言うと、健太は口のポッキーを、紅羽の口に近づけた。

「キスをしないで、どこまで食べられるかでしょ?でも最後に・・」

紅羽は、健太の目が笑っていないことに気がついた。健太は紅羽の腰を引き寄せて、自分の膝にまたがせて、紅羽にポッキーを(くわ)えさせた。

何も言わず、ポッキーを食べ進んで、2人の唇が自然と触れあった。

「俺とこういうことするのは、嫌か?」

「チョコの味しかしないなぁ」

紅羽、こんなこと何でもないようにふざけてはぐらかした。


「実は3年生を送る会で、先輩からこんなものを貰ったんだ」

健太は勉強机の引き出しから、仲村先輩から貰った例のゴム製品を出した。

「やーだ。野球部ってエロ」紅羽は健太の腕から逃げようとするが、がっしりと捕まえられて逃げられない。

「真面目な話なんだ。先輩の話だと・・・」と健太は仲村の言ったミッションの話を、紅羽にした。

いつもの紅羽ならば、「そんな馬鹿な話あるわけないじゃん」と一笑(いっしょう)にふすのだが、雰囲気というのは怖いもので、耳のそばでゆっくりと話されると、信じてしまうものだ。

「こんなことで、甲子園に行ける可能性が高まるの?」

「少しでも可能性があることなら何でもしたい」


この行為は、オリンピックに行けない可能性を生むと言うことに、18歳になったばかりの若者は気づかなかった。

 

すべて終わった後、ゴミ箱に捨てられたゴム製品に、小さな穴が開いていたことにも2人は気づかなかった。


そして、天は仲村に微笑んだ。


昨晩、アップしましたが、後半かなり修正して改訂版を作りました。是非お読みくださり、感想、誤字脱字などのご教示いただければ幸いです。

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