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隔離島・教団事件

作者: 柩屋清

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「今回の依頼は回避したい」


開口一番、ボクは大城刑事に、そう伝えた。

受ける条件としては自宅で任務を遂行し、架空の人物を(こしら)え、その人物がこの案件を担当する運びとなった、と返信、許可して(もら)う事。

大城刑事は了承したが理由を尋ねた。


「珍しく殺される予感がします」


ボクの任務は千里眼で事件の真相を知る仕事。

睡眠以前にその案件の資料などに手をかざし、眠りながら回想するーーというスタイルだ。

ただし、今回は事のラストから見えた。


「ーーならばキミの家のポストに取りに行く」


大城の提案にボクは了解し、鍵のナンバーを教えた。

依頼人が報復するとは、いか(ほど)の事件なのか。


*****


隔離島・教団事件ーー数十名の若者が集団自殺を図ったカルトな出来事。

島で生活し、汚れた競争社会から離脱し、共同生活を送る。

代表は東京出身の(はやし)(たけし)

建屋内に全員の遺書もあり、地元警察も服毒による集団自殺と断定した。


 ーー返答・初回ーー

自殺の本当の原因は資金・不足。教団の教義に見せかけただけ。

本当の代表は林ではない。林は主宰者のダミー。その人物より東京の私立高の学費を援助して貰った御返しに代表に()()()()()()

遺書は入会と同時に書かせていた志の書なので、ほぼ全員、文面は同じはず・・

大城は速やかに持ち帰ったボクの書類に目を通し、過去のデータと照らし合わせていた。


*****


 ーー返答・二回目ーー

林の父は当時・無職。母は表向きパート従業員。空いた時間で売春をしていた。

今回の依頼人、山田さと子の祖父・貴志(たかし)は既に死亡。別人の()()()()()による郵送依頼。

問題は()()()飲んだ”神の涙”という代物(しろもの)

これは集団自殺ではなく集団殺人です・・


 ーー返答・三回目ーー

林は興信所(など)により家庭の問題(とう)を犯人の男性に知られていた。

山田貴志のなりすましは犯人の父である。

ズバリ犯人は”神の涙”を全部・飲み干している人物。毒と判って一気に飲み干した人物がホシな(はず)。本来”神の涙”は教義上、味わって飲む、という習慣があったのです・・

大城は慌てて当時の警察資料を見た。状況証拠ばかりだが否定する気には、なれなかった。


*****


 ーー返答・四日目ーー

犯人は会計担当の伊藤文則(ふみのり)です。彼は彼なりに我が道を貫いたのですが父・武則(たけのり)により、その頃、資金の出資停止を宣告されていたのです。当時も今回も武則氏は衆議院出馬を打診される程の人物でした。息子の振舞いが、究極、目障りだったのかもしれません・・


「はっ!」


ボクは地下鉄へと向かう階段を降りる、その最中(さなか)、誰かに背中を押されていた。丁度(ちょうど)、夢に見た、あの光景どうりに攻撃されている。手すりに近い場所へと判断を変えていたので、ケガは無かった。


”人の目を気に掛け、事実を受け入れず、今の立場を守ろうとする意識は下劣ではないか!”


犯人の去り行く背中にボクは胸中、独りそう叫んで、身を立て直していた。


(了)

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