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「旦那様、書簡が届いております。」とフィーネを王城へ送り届けた後に執事から書簡を渡されたヴィンス。

書簡の送り主は予想通りの人物だった。

ニヤリと悪い顔をした彼に執事は寒気を覚えた。

この表情をしたヴィンスを止められる者は少ない。


「大丈夫だって。今はまだ準備段階なんだから。

それより、この前頼んだやつは大丈夫か?」

「はい、旦那様。滞りなく。」

「ありがとう。とっととこの問題を解決して彼には国へお帰り願わなければね?」

「いつでも実行できますので。」

「うん。君が執事になってくれてよかったよ。」


ヴィンスが湯浴みに行くのを見送った執事は静かに「もうすぐだ…。」と呟いた。


………


「お初にお目にかかります。サフィス侯爵家当主のヴィンセントと申します。」

「サフィス侯爵、今日は訪問を許可してくれてありがとう。

知っていると思うが、レオン=ダピールだ。」


フィーネにダピールの話をしてから数日後、何故かレオンから訪問したいと先触れが届いた。

ヴィンスもそれを伝えた執事も何故このタイミング?と思ったが、断る理由もないし他国の王族だからと訪問を許可したのだ。

だが、学院を早退してまで来るとは愚かな…


「単刀直入に言おう。シルフィーネ姫との婚約を破棄してくれ。

彼女こそ、ダピールの王妃に相応しい。」

「お断りします。」

「何故だ?王族である私の命令が聞けないのか?」

「私はカルリア王国の王族に忠誠を誓っています。ダピール国の王族の命令を聞く必要はありません。」

「なっ!」

「それに、レオン殿下は王太子ではございませんよね?」

「直に私が王太子になるのだ!」

「左様ですか。だとしてもシルフィーネ殿下は私の婚約者にございます。婚約破棄は私が死なない限りあり得ません。

お話がそれだけならばお帰りを。」

「貴様!いいのか!?サフィス侯爵家はダピールの魔石をこの国に輸入しているのだろう?それを私の命令て中止にだって出来るんだぞ!?」

「脅しですか?」

「だったら何だって言うんだ!」

「この会話はシルフィーネ様もお聞きになりますよ?」

「何!?嘘をつくな!」

「映像と音声を復元できる魔法がありますので。」

「そんな魔法があるわけ…」

「私が開発しましたから。」

「は?」

「私、殿下程ではありませんが魔法が得意なんですよ。」

「ちっ!」


舌打ちしてレオンは帰っていった。

「旦那様、塩を撒いておきます。」と執事が言った。

そんな執事の表情をクスクスと笑いながら「大量に頼むよ。それと、このソファと茶器も交換しよう。あと、絨毯も。窓も全部開けて換気もしといてくれる?」とヴィンスは楽しそうに言ったのだった。


………


レオンが留学にきて半年経った今日は国内の伯爵家以上が集まる夜会が行われる。


「フィーネ、とても綺麗です。」

「ありがとう、ヴィンス。貴方もとても素敵よ?」

「キャシー、やっと会えた君が愛らしすぎて困るな。」

「ふふ、レイったら。お兄様たちもいるのに。」


王族の控室にヴィンス、フィーネ、キャシー、レイノルドがいる。

「皆、話がある。」とヴィンスが真剣な表情を向ける。

「今日は夜会の最中にエリック王太子殿下から話があると思うけど…」と彼は今から起こることを三人に伝えてから夜会の会場へ向かった。

そして会場にはレオンの姿もあった。

「皆、今日は集まってくれて感謝致します。」とエリックが挨拶を始めたときだった。

「緊急事態にございます!」と騎士が入ってきたのだ。


「どうした?」とエリックは険しい表情になる。

参加した貴族たちは何が起きたのか不安になっているが、エリックを含めてヴィンスたちは本当の事情を知っている。


「たった今、ダピール王国で反乱が起こりました!」

「何っ!?おい、貴様!ダピールで反乱だと!?」


騎士の言葉を聞いて、いち早く反応したのはレオンだった。


「国内の多くの貴族と国民が女王陛下への不満を募らせ、退位を迫るために反乱を起こしたそうです!」

「母上と父上は無事なのかっ!?」

「も、申し訳ありませんがそこまでは…」

「ちっ!使えない騎士だな!」


レオンは騎士に悪態をついている。


「レオン殿下、恐れなから申し上げます。」

「サフィス侯爵、何だ!?今は貴様の話してなど…」

「女王陛下の安否確認をしたほうがよろしいのではありませんか?」

「言われなくても!」


レオンは通信機を取り出し相手を呼び出そうとしたが繋がらない。その一部始終を見ていた貴族たちから「あの噂は本当だったのか?」「女王の悪政に困り果てた貴族や国民が近々反旗を翻すというやつか?本当だったんだな…」と聞こえてきた。


「何故だ!?何故、母上も父上も応答しない!?」

「これは大変ですね。レオン殿下、早馬をお貸ししますから、帰国してはいかがですか?」

「は!?」

「通信に応答がないということは最悪の結果も考えられましょう。」

「不敬だぞ!?」

「そうでしょうか?もしかしたら、貴方の王子という身分はもう既にないかもしれませんよ?

それとも、馬ではなく私が転移させましょうか?」

「転移…だと?」

「ええ。一瞬でダピールの王城へ着けますよ?

では、お元気で。()()()()()…。」


ヴィンスは【テレポート】と呟くとレオンの身体が浮いたと思ったら一瞬にして姿が消えた。


「ヴィンス、やりすぎだ。」

「エリック王太子殿下、申し訳ございません。」


ヴィンスとエリック以外には何が起きたか理解できていない。この王国でテレポートが使えるのはこの二人だけだからだ。

そしてヴィンスは彼の許可を得て参加している貴族に状況を説明する。


「皆様、ヴィンセント=サフィスです。

今回のダピール王国での反乱は王配殿下と第一、第二王子と貴族、国民が行ったものです。

女王…いえ…元女王陛下は悪政を指揮し、法律をコロコロと替え、男妾から産まれたレオンを王太子にしようとしていました。」

「たかが男妾の子どもを王太子に…?」「信じられない…」

「王配殿下は元公爵家の人間としても王族の血が汚れることを心配し、自身の子である第一王子を王太子に就けたかったのです。」


何よりも血を重んじる王族。王配の方が余程王族らしい考えをもっていた。


「王配殿下は無理矢理に今の地位に就かされた経緯もあり、どうにかしたいという気持ちが強くなったようです。

そして、反乱を起こす協力を我がサフィス家に求めてきたのです。」


サフィス家に書簡を送ってきたのは王配だった。

そして反乱を企てるために貴族をまとめ上げたのは…


「私の執事はダピールの元侯爵子息でした。ダピール国内の貴族に顔が効くので貴族を纏め、国民までもを纏めてみせてくれました。」


ヴィンスの専属執事は亡命してきた侯爵家の嫡男だった。侯爵令息だったときから政治的手腕を買われるような優秀な男だった。

彼ら一族はカルリア王国でも公爵家並みに力がありダピールとも繋がりのあるサフィス家にやってきたのだ。

今日、この日を迎えるために。


「そして本日、反乱を起こし女王陛下だった方に様々な悪事の証拠を突きつけて退位してもらい、その場で第一王子が王位に着くことが宣言させることにしたのです。

新国王陛下は元陛下と男妾を裁判にかけてから処刑することでしょう。」


ヴィンスが言い終わると貴族たちは納得した。

元々もダピールの噂は耳にしていたし、学院でのレオンの態度が酷いと子から報告を受けている貴族が多いからだ。

まあ、噂を流したのはヴィンスや街に隠れているサフィス家の手の者なのだが。


「ダピール国王が変わったのなら折を見て挨拶と祝いをせねばならないな。

では、カルリアとダピールが良好な関係を築けるよう願いながら、本日の夜会を楽しんでくれ!」


エリックが宣言して音楽が流れ始め、ダンスをしたり美味しい食事に舌鼓をうったり、会話を楽しんだのだった。

この国にいる一部ダピールの女王側についていた貴族を除いて…。

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