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8/12

翌日、レオンはフィーネとキャシーを誘い始めた。


「シルフィーネ姫、お昼を一緒にどうだろうか?」

「レオン殿下、申し訳ありませんが、昼食後に所用がありますの。」

「そうか…キャサリン嬢は?」

「申し訳ございません。昼食後にはコルディス公子殿下と通信をする約束がございますので。」

「そうか…。

また、誘ってもいいだろうか…?」

「申し訳ありませんが、学院内とはいえ護衛の都合上、王族は専用の個室で食事を摂ることを義務付けられております。そこへ婚約者でもない男性を入れることは出来ません。」

「私は公子殿下と大公国のことをお話しているので、シルフィーネ様に場所をお借りしなければならないのです。」

「そ、そうか…。で、では放課後は?」


諦めの悪いレオンは放課後はどうか提案してくる。

ここまで断られても折れない心は評価したいと誰もが思っていたが、フィーネたちはその心を簡単にへし折る。


「放課後はキャサリンを伴いサフィス邸へ行くので無理ですわ。

私、婚約が決まってから侯爵邸で勉強をしておりますの。」

「では、姫もキャサリン嬢も茶をしている時間はないのだな…?」

「「はい。申し訳ございませ。」」


一ミリも申し訳なく思っていない返事だったが、百戦錬磨だったレオンには断られたことだけが強烈に心に刻まれる。


「そうか…。でもね、シルフィーネ姫もキャサリン嬢もこれだけは覚えておいて?僕は大国であるダピールの王子だからね。婚約者とどちらが立場が上なのか見極めたほうがいいよ?」


そう言って、レオンは側近と去っていった。

そして、昼休み。ふたりはそれぞれ通信機を出して、レオンの所業を伝える。


ちっ!とヴィンスとレイノルドは同時に舌打ちする。


[ダピールとの商売から手を引こうかな…]

[ヴィンス、そうしよう!キャシーにもちょっかい出したんだから、うちも交渉するのを辞めようと思う!]

「ちょっと、ヴィンス、何を言っているの!?」

「レイもこんな簡単に決めてはいけませんわ!」

[フィーネ様にちょっかいをかけたのは向こうです。]

[キャシーを誘うなんて困った王子だよ!]


ヴィンスとレイノルドは不機嫌だ。

「やりすぎではなくて?」とフィーネが心配するも[少しず撤退させれば問題ないです。寧ろ優しさを残しておりますが?]という始末だった。

それぞれの通信が切れたので、フィーネたちは一息ついた。


「ヴィンスお兄様は本当に商会を撤退させるおつもりなのでしょうか…?」

「どうかしら…でもね、キャシーも知っているとは思うけど、あの国は直に資源が尽きるわ。」


ダピールは宝石に魔力を込めた魔石の一大産地。

他国に魔石がないわけではないのだが、魔法大国であるダピールの魔石はとても良質なのだ。

しかし、近年産出量が減っていて資源が底をつくのは時間の問題だと言われている。


「そうですね。」

「その資源が尽きたとき、女王陛下がどう動くのか。そして、レオン殿下がどこまで国の惨状をご存知なのか。」

「左様ですね。しかし、レオン殿下は資源は無限にあると思い込むタイプかと。まだ一日しか知りませんが、ダピールで運営している商会の会頭たちは一様に第三王子は思い込みが激しいと言っておりましたから…。」

「はあ…。どうして陛下は留学を許可なされたのかしら…?」

「フィーネ様、ダピールにいる商会の会頭からの情報なのですが、女王陛下は王太子にレオン殿下を就任させるつもりのようです。」

「えっ!?第三王子なのに!?」

「はい。これは兄が集めた情報も同様でしたので間違いありません。

ここだけの話ですが、レオン殿下は女王陛下と男妾の御子で陛下はその男妾にメロメロだとか。」

「正式な王配との御子ではないのに王太子ですって!?信じられないわ!」

「ダピールは女王陛下が法律なのです。ですから王配殿下は自身の御子である第一王子を王太子にしようと動いていらっしゃるそうです。詳しくは本日の勉強の時間に兄から教えてもらってくださいませね?」

「わかったわ。」


………


「ねえ、ヴィンス…?」

「何ですか、フィーネ?」


放課後にサフィス邸についたフィーネとキャシー。

到着直後にフィーネはヴィンスに横抱きにされて攫われていき、執務室に入った途端に彼の膝の上に座らされた。

彼女は何故この状態かと聞くために彼の名前を呼ぶがご機嫌斜めなようで、いつもは敬称をつけるのに呼び捨てをしている。(彼女に咎める意思はないけれど…。)


「どうして、私捕まってしまったのかしら?」

「おや、フィーネは俺に捕まった理由に心当たりがないと?」

「うっ…今日、必要以上にレオン殿下とお話したせい…?」


おずおずと答えるフィーネ。


「そうです。フィーネは俺の婚約者です。いくら他国の王族とはいえ、許し難いのですよ。」

「ヴィンス、あのね、おかしなことを言ってもいいかしら?」

「なんです?」

「私ね、貴方が嫉妬してくれることがこの上なく嬉しいの。」


彼女は彼を抱きしめる。


「フィーネが嬉しい…?」

「ヴィンスに想われているのがわかってとても嬉しいの。

そ、それにフィーネって呼び捨てにされるのも本当はとても嬉しいのよ?だから、今日からそう呼んでほしい…」

「よろしいのですか?」

「ええ。私たちは婚約者ですもの。」

「フィーネ。」

「なあに、ヴィンス?」


彼は彼女がコテンと首を傾げながらの返事に身悶える。

「フィーネ、可愛すぎませんか?」と額に口づけるヴィンス。

真っ赤な彼女に愛情たっぷりに口づけを落とし彼女を堪能した。


フィーネを堪能した後、ヴィンスはダピール国について話をすることにした。


「キャシーから聞いたと思いますが、女王陛下は第三王子であるレオン殿下を。王配殿下は第一王子殿下を王太子にと望んでいるのは事実です。」

「ダピールは女王陛下が法律だとも言っていたわ。」

「そうです。以前にも話ましたが、女王陛下は王太子時代に無理矢理、現在の王配殿下を婚約者にさせたのです。

当時の王配殿下の婚約者の純潔を奪って… 」

「ひ、酷い!」

「ええ。しかも、女王陛下は王配殿下のことを好きではないのです。

男妾の身分が王配になるには足りないので、公爵家の嫡男だった王配殿下を選んだそうです。」

「選んだって…しかも公爵家の嫡男ならば相手の令嬢も高位貴族でしょう!?」

「はい。ダピール国が建国されてからある侯爵家のご令嬢でした。事件後は一家で他国へ亡命しています。」

「そんな…」

「前陛下も事を大きくしないために子どもを二人産むまでは男妾は認めないと宣言されて、産まれたのが第一王子殿下と第二王子殿下なのです。

王族の血が汚れることを危惧した王配殿下と前陛下の信頼の篤い家臣たちが第一王子殿下の立太子を後押ししているのですが、最愛の男妾との間に産まれた第三王子を立太子すると女王陛下が躍起になっていると。

まあ、議会の半数が賛成しないと出来ませんので、現在は王太子が不在ですけどね。」

「そうだったの…

自分と恋人との未来のためだけに他者を貶めるなんて…。考えられないわ…。」



「本当はこんな話フィーネにはしたくありませんでした…。

貴女には綺麗な話だけ伝えられたらどんなによかったか…」


少し落ち込むヴィンスを見てフィーネは彼に抱きついた。


「ヴィンス、私は貴方の妻になるのよ?隠し事はいけないわ?それがどれだけ汚い話でもちゃんと言ってほしい。」

「ありがとう、フィーネ…。

これから、俺がどれだけ汚いことをしても傍にあてくれますか?」

「もちろんよ。法律に触れるようなことは駄目だけど、そんなことヴィンスはしないでしょう?」

「それはもちろんしません。」

「ならいいわ。でも、何かするときはちゃんと話して?」

「はい、フィーネ。」

「ふふ。では、勉強を再開しましょう?」

「そうですね。ではサフィス家がダピール国と交易を始めた時代の話を…。」


彼女を膝の上に乗せたまま、話を続けたヴィンスだった。

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