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「そんなに通っていたの?」

「ええ。少しでも貴女の声が聴きたくて…。」


ヴィンスはフィーネの頬に手を添える。


「ヴィンセント…?」

「ヴィンスと呼んでください。」

「ヴィ…ン…ス…」


頬に当たる彼の手と言葉から伝わる熱で真っ赤になるフィーネ。


「はい。私もフィーネ様とお呼びしても?」

「も、もちろん!」

「フィーネ様は本当にお可愛らしいですね。」

「ヴィンス、恥ずかしいわ…。」

「お可愛らしいフィーネ様が悪いのですよ?」


彼は頬から手を滑らせていき彼女の口唇を撫でる。


「フィーネ様、愛しております。」

「わ、私も、ヴィンスを愛しているわ。」


彼女は緊張しながらも目を閉じる。そして彼は彼女の口唇に自身のを重ねる。

彼女は少しドキッとしたのか身体が跳ねる。そんな仕草も彼にとっては愛おしく、心が満たされた。


すぐに終わると思っていた口づけは角度をかえて何度も彼女の口唇に降り注ぐ。

フィーネは緊張がピークに達してしまったようで膝から崩れそうになった。そんな彼女を満足そうな表情のヴィンスが支える。


「フィーネ様、名残惜しいですが陛下の元へ戻りましょうか?」

「ちょ、ちょっと…待って…。心臓が…保たない…」

「では、抱きかかえて行きましょうか?」

「じ、自分で歩けますわ!!」

「はは。やはり可愛いですね。」

「もうっ!行くわよ?」

「はい、俺の可愛いフィーネ様。」

「そ、そういうのは恥ずかしいから止めて!」

「残念ですがそれは出来ません。さ、本当に陛下の所へ行かないと、陛下が拗ねてしまわれますよ?」

「ヴィンスの意地悪。」


不貞腐れた表情をしてもしっかりとヴィンスの腕を掴んで離さないフィーネだった。


………


その後、ヴィンスとフィーネの婚約は成立した。

そして学院を卒業したヴィンスは程なくして侯爵位を継ぎ、立太子したばかりのエリックの外交をサポートしながら侯爵の仕事と商会の運営をしている。

 

「フィーネ様、こちら新作のコルディス産のハーブティーです。」


生憎の雨でのヴィンスたちのお茶会の日。

ハーブティーをフィーネの前に置きながら、彼女の隣に腰掛け自身の方へ引き寄せたヴィンス。


「ありがとう、ヴィンス。そういえばキャシーの様子はどう?最近会えていないのだけど?」

「妹は学院を休んでコルディスへ行く機会が増えていますからね。」


キャシーはレイノルド公子との婚約が公となり、花嫁修業と商売のためにコルディスへ行くことが増えていた。


「ふふ、そうなのね。」

「時にフィーネ様。来月末にダピール王国の第三王子殿下が留学に来られるそうですね?」

「そのようよ。私たちのクラスメートになると先生が仰っていたわ。」

「なんでも、絶世の美少年だとか。」

「そうなの?」

「はい。ですから気をつけてくださいね?」

「気をつけるって何を?」


コテンと首を傾げるフィーネ。


「はあ…。わかっていないのですね…。」


ヴィンスは彼女を自身の膝の上に乗せ、真剣な眼差しを向けた。


「ダピール王子にはまだ婚約者がおりません。」

「そうね。第三王子だから緩いのかしら?それとも好きなご令嬢がいるとか?それでも私はヴィンスと婚約しているのだから、関係ないでしょう?」

「それでも、王子に望まれたらどうします?」

「えっ…?」

「これはあくまで噂ですが、ダピール国の王配殿下は元々他の令嬢と婚約されていたそうです。それをほぼ無理矢理に解消して今の地位に()()()()()そうです。

あの国の王族は手段を選ばないことで有名なのですよ。

商人やそれを生業にしている貴族はきちんと手段を選んでおりますが、そんな噂のある陛下の御子ですから、心配になるのです。」

「知らなかったわ…」

「まあ、もしも俺のフィーネ様にちょっかいを出すようならばダピール国との商売は切り上げて抵抗しますけどね。サフィス商会との取引がなくなって痛手を追うのはあちらですから。」


腹黒そうな笑みをみせ、彼女の頭を撫でるヴィンス。


「き、き、気をつけるから、大丈夫よっ?」

「貴女は俺のですからね?」

「わ、わかっているわ!」


真っ赤な顔のフィーネの額に口づけをしてからヴィンスは微笑む。


「ヴィンス!?」

「はは。フィーネ様は本当に可愛いですね。」

「あなた最近、スキンシップが多い気がするのだけど…?」

「そうですか?普通だと思いますよ?

それとも、俺の愛は重いですか?」

「そ、そんなことないわ。」


フィーネはこんなに愛されていつか溶かされてしまうのではないかと少しだけ心配になった。


………


「皆、ダピール王国第三王子のレオンだ。準備の都合で中途半端な時期に編入してきたが、よろしく頼むよ。」


教室で爽やかスマイルで挨拶をしたレオン。授業が終わり昼休みにフィーネは声をかけた。


「レオン殿下、カルリア王国の王女シルフィーネですわ。ご挨拶が遅れ申し訳ありませんわ。」

「シルフィーネ姫、同じクラスで助かるよ。よろしく。」

「そしてこちらは、私の学友であり()()になるキャサリン=サフィス侯爵令嬢です。」

「レオン殿下にご挨拶申し上げます。サフィス侯爵の()のキャサリンと申します。」

「姫の義妹で侯爵の妹?」

「私の婚約者はサフィス侯爵家の当主ですの。」

「私の兄はサフィス侯爵家の当主ですの。兄は学院を卒業とほぼ同時に当主となりました。」


フィーネはヴィンスに気をつけると約束してから挨拶の時点で婚約者がいることを強調しようと決めていた。そして、キャシーならば空気を読んでくれるだろうと思っていた。


「そ、そうだったのが。姫には婚約者がいたのだね。知らなかったよ。」

「ふふ。発表になったのは最近ですもの。

それよりも学院内を令息に案内させますか?」

「いや、大丈夫だ。学院内のことは事前に把握している。

それよりも、キャサリン嬢は婚約者は?」


周りで聞いていた生徒たちは驚いた。

「こいつ、王子のくせに知らないのか…?というかシルフィーネ殿下からサフィス嬢(様)に乗り換える気…?」

という心の声が漏れそうになっていた。


「あら?レオン殿下はご存知ありませんのね?ふふ。」

「シルフィーネ様、ダピール王国と大公国に国交は殆どございませんので、知らなくても当然ですわ。ふふ。」


ふたりが何故笑っているのか見当もつかないレオン。

そこへ、側近(授業外のみ同行を許可されている)が耳打ちした。


「何!?キャサリン嬢はコルディス大公国の次期大公妃だと!?」

「はい。私の婚約者はコルディス大公国の次期大公であるレイノルド公子殿下ですわ。」

「婚約前から我が国と大公国の架け橋になったのだもの、レイノルド殿下とキャサリンの婚約は当然の流れよね。ね、皆様?」


フィーネは周りの生徒を見やる。この国でサフィス家の功績を知らない者はいない。(少し前はいたけれど…。)

生徒たちら微笑みを絶やさずに肯定する。


「そ、そうなのか。キャサリン嬢は凄いのだね。」

「恐縮です。」

「では、僕は学院長にも呼ばれているのでこれで…。」


何となくばつが悪い感じで教室を出ていくレオンと側近。


「噂通りの王子殿下でしたわね…。」

「(阿呆王子がここにもいるとは…)フィーネ様、気をつけてくださいね?」

「兄妹揃って心配しすぎではなくて?」

「そんなことはありませんわ!

ですから通信機は常に持ち歩いてくださいね?」

「学院内よ?」

「それでもです。私が休んだときはお一人になることもありますから。」

「は〜い…。」

「可愛く返事をするのは兄の前だけにしてくださいませね?」

「!!」

「さ、私たちも昼食へ参りましょうか?どうせ食後に兄から通信がはいるのでしょうから。」

「それはあなたも同じでしょう?」

「私たちは普段会えないからいいのですわ。」

「そういうもの?」

「そういうものですわ。兄が王城へ行く日は朝からとても機嫌がいいのですが、行かない日は…」

「行かない日は…?」

「察してください…フィーネ様…。」


ヴィンスがフィーネに会えない日は、雰囲気がとてと暗く…いや…物理的に一部が凍りついているので暗いというより寒い。それを解除できのは同じ程度の魔力を持つキャシーだけ。

なので平日は殆ど屋敷内が冬模様なサフィス邸であった。

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