軋轢
心霊スポットでの事件の翌日
学校の休み時間での事
「で、昨日はどうだったんだ?」
タケルの質問に正人が答える
「やっぱさ、ほら面白半分で良くないんだなってさ…」
「今日なら、俺も行けるぜ」皆の反応を見る為、わざとタケルはからかう様に言った。
「私は行かない」
「俺もパス」
黒木と美沙の反応だった。
黒木はタケルを見る
「なぁタケル、そういや転校生のあの神井って奴、初日以来、来てもねぇし、話しかけても返事もないし、愛想もねぇ、俺はあいつが笑った事すら見た事ない、男の直感って言うのか?なんかどっかキレてるヤバい奴な気がするんだけどよ、お前なんかあいつの事知ってるのか?」
タケルは一瞬返答に困る
「ん〜知ってるっちゃ知ってるし、知らないといやぁ」
「そうか」
黒木は席を立って廊下に歩いて出て行った。
「あ〜あ、黒木すねてった」美沙が言う
「あいつ、タケルとは今まで隠し事とか無しで、なんでも喋りあえてたのに、最近あんた、あいつになんにも言って無いんだね」
「私達に言えない事でもあるの?」
タケルの目をまっすぐ見つめる美沙
「まっ、別に良いけど、さて授業、授業」
タケルを心配し、気遣う様に正人が言い出した
「あの二人、昨日不思議な出来事があったから、ちょっと繊細になってるんだよ、気にすること無いよ」
神井は初日以来、学校には来て居なかった。
正直俺はあいつの事を何も知らない
何故ここに転校して来たのか?
今何処に住み、誰と暮らし、日々何をしてるのか…
何も知らない
くそっ
タケルは心の中思う
自分の体験した体験、こんなの誰に話せば理解される
正人はタケルの背中を見つめていた。
学校からの帰り道
何処となくぎこちない空気の中、タケルと黒木の二人が歩いていると、怒鳴り声が耳に届いてくる。
「てめぇ、気に食わねぇんだよ」
そこには、学校の先輩にあたる不良グループのボスが居た。
誰かの胸ぐらを掴んでいる
「神井」タケルは、そこに立つ神井の姿に気付く
「おいっ、あれ転校生の神井だぞ、まずいな助けに行くか」黒木がタケルに言った。
いや、危ないのは神井じゃない、あの先輩の方…
タケルが叫ぶ「神井止めろ」
「殺すぞ」
そう言われ、神井の目を見た不良グループのボスは後ずさりしていた。
ああ、こいつはヤバい、本当に喧嘩を売っちゃいけない相手だ、不良の直感とも言える嗅覚の様なものが、目の前に立つ相手の危険性を直感で感じ取っていた。
全身の毛穴が叫びだす
にげろ
殺される
その瞬間、後ろで見ていた黒木も同じだった
なんだよこいつ……
絶対に関わっちゃいけない
本当に同じ人間なのか?
両膝はガクガク震えている
俺が同学年の奴に、こんなにもビビってる?
嘘だろ…
その恐怖感は昨夜遭遇した霊とは、比にならない程だった。
「貴様、少しは強くなったんだろうな?」タケルを睨み付ける神井
「初日だけ学校来たと思ったら、もうサボりやがって、どう言うつもりだ?」
神井の脳裏に数日前の出来事が浮かぶ
それは北條との会話
「タケルくんに負けたみたいだね」
その場の空気が、一変する
「もうタケルくんの事を、ただの下っ端としてだけでは見れませんね」
「君が本当に強くなりたいと思うのなら、対極を知る必要性もあるのかも知れませんね」
「彼の扱う霊力の波動は陽の力、神井君とは対極、真の強さはそれらを統合したものの可能性も充分にあるのではないですか?」
「くだらん」
「鍛錬以外から、強さを得れる可能性があるとは思いませんか?更に強くなる為にタケルくんの学校とやらに通ってみる事を勧めます」
「ふざけるな」
ニヤリ
「どうでしょう、そしたら、すぐにこのレベルに到達する修行をつけてあげますよ」
北條の霊力が信じられないくらいに膨れ上がる
その瞬間
地球上に存在する全ての生き物は、肉体?はたまた本能?
突如心の奥底より響く魂の声
内から湧き上がるなにかに触れた気がした
「ねぇ、今なにか感じなかった?」
「なんか、胸が高鳴るっていうか、凄かったな、何今の?」
ちなみに余談になるが、タケルはこの時、これが北條による仕業だと言うことに気付いていた。
そのとんでもない霊力に触れた神井は言った
「必ずこの力を俺に、手に入れさせる事を約束するか?」
「良いでしょう」
神井は舌打ちし、その場を後にした。
神井の意識は現在に戻り、目の前のタケルに視線を向けた
「俺と勝負しろ、あのときの決着をつける時だ」
「正直に言う、今の俺じゃまだお前に勝てねぇ、だけど一ヶ月後の今日の日に、必ず勝負してやるよ」
暫し沈黙の時が流れる中、二人の視線はそれる事なくぶつかり合っていた。
「良いだろう」
おいっ、タケル本気か?あんな奴と喧嘩するなんて、あいつヤバいの分かるだろ、関わんな」
「あいつとは、決着つけなきゃなんねぇんだ」
「来月のこの時刻、北條の住む場所に来い、決着をつけるぞ、死ぬつもりで来い」
そう言い、神井は去って行く。
「分かんねぇけど、あいつはやべぇ、キレてやがるリミッターがねぇ、あんなのとは関わっちゃやべぇだろ、マジで平気で人を殺す目をしてやがった」
黒木はタケルの襟袖を掴んで必死に叫んでいた。
「心配ありがとよ、でも、ここは引けねぇんだ」
こうして、一ヶ月後、タケルと神井の決闘は決まる
あいつは躊躇なく、本気で俺を殺しに来るだろう
敗北は死を意味する
絶対に負ける訳にはいかないんだ…
俺は心の何処かで、あいつと仲良くなれるかも知れない、いや、あの旅を通じて友達だと思ってたんだ
タケルの拳は強く握り締められていた。
〜 アンブラインドワールド 次章〜




