第六話 引きこもりを外へ連れ出す方法
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ペット探しはあっさり終わった。途中で私の放った霊波を感じた精霊がやってきたり、リーナちゃんがどんくさくてペットが何度か逃げたりしたけれど、まあ誤差のようなものだ。
その後も私が手伝いながらいろいろとクエストをこなしたところ、リーナちゃんのお財布にはお金がたまるようになった。悪い意味で瘦せていた体つきも若干マシになったかもしれない。
私のスキルの実験もした。希望の星だった『聖剣召喚』で呼び出される聖剣は残念だけど普通に実体があった。なんで私のスキルで呼び出したものを私が使えないの? その剣、『霊剣アレディア』は切った相手のステータスを減少させるチートじみた能力を持っているだけに使えないのが残念すぎる。まあでも、私以外の人も特殊能力を使えないだけで剣を振ることはできるみたいだから、とりあえずはリーナちゃんに使ってもらおうかな。ちなみに見た目は青白く発行する刀身を持つショートソードだ。ご丁寧に鍔や柄の部分には髑髏の装飾がしてある。あれ、聖剣、よね? 髑髏??
とまあそんな感じで異世界を数日過ごした私のステータスはこんな感じになっている。
霊群優花 人族Lv.- 状態:死亡
筋力:‐
持久力:‐
魔力:‐
抵抗力:‐
(魂力:28721/28721)
スキル
霊魂操作Lv.7 霊魂干渉Lv.6 霊属性攻撃Lv.5 勇者Lv.2 聖剣召喚 聖属性攻撃Lv.1 魂魄超強化Lv.1 聖属性無効 言語自動翻訳
称号
完全なる死者 死神を退けし者 勇者 覗き魔 スキル創造者
王都に住みつく悪霊を適当に祓っていたら勇者スキルのレベルが上がったみたい。魔王が不死者だったりしないかな? それなら私も勇者できるんだけど。
というわけで、リーナちゃんとの共同生活にも慣れてきた私は今一つの問題に直面していた。それは
「街の外に行きたい!」
「一人で行ったらいいじゃないですか」
「私はリーナちゃんと行きたいのよ」
「嫌です。私は街から出たくありません」
リーナちゃんが引きこもりなことだ。
私は何としても街の外で冒険をしたいのに、リーナちゃんがうなずいてくれない。ひとりで行けばって思われるかもしれないけれど、私が行っても全く反応がないからVRで映像を見てるのと同じ感じになってしまうのよね。それならせめてリーナちゃんを連れて行くことでVRゲーム風にしたい。
「採取とか討伐とかのクエストをこなしたほうが実入りいいよ? お金欲しくないの?」
「欲しいですけれど、それ以上に命が大事です。安全第一に質素な暮らしを続けたいです」
「質素というよりは不健康な生活だけどね。そのうち病気になっちゃうよ?」
「うっ……」
うーん。何かいい手はないかな。ちなみにの話だけれど、実はお金を稼ぐだけならばいい手段がある。情報屋を始めることだ。私ならいくらでも情報を集めることができるから、基盤さえ手に入ればいくらでも稼げると思う。やりようによっては王都を裏から牛耳ることもできるだろう。とはいえこれをすると冒険なんてできなくなるし、街から出るよりもある意味危険が多いからリーナちゃんにはあえて伝えてないけど。
「リーナちゃんにはレーダーもついているんだからさ」
「ちょっと待ってください。ついているってなんですかついているって」
「魔物が近づいてきたら分かるじゃん」
「だから話を、はあ、もういいです。確かに魔物が近づいてきたら分かりますが、そもそもなんで私が悪いみたいな感じで話を進めるんですか。勝手に居候しているのは優花さんですよね」
そういう細かい事を気にしていたらストレスのせいでお肌あれるよ? ちなみに私は透き通るような卵肌だ。物理的にも透き通っている。
と、私はここでいいアイデアが思い浮かんだ。
「じゃあさ。一回冒険者パーティの荷物持ちしてみようよ。荷運びスキルがあるから引く手はあるでしょ。お願い!」
「ああもう、分かりました! 今回は折れます! その代わり、ちゃんと私が危険にあわないように危険な魔物を見つけたら教えてくださいよ?」
やった勝った! 勝ったよみんな! これでタイトル詐欺って言われずに済む!
ってあれ? いま私なんて思った? なんか変なことが頭に思い浮かんだ気がしたんだけれど。
「六級冒険者のギルだ。今日はよろしく頼む。でこっちが」
「リジルという」
「コリーナよ」
「ネイ」
「十級冒険者のリーナです! こちらこそよろしくお願いします!」
彼らは六級冒険者パーティ『岩牙』のメンバーだ。平均レベルは35で、ステータスは900ほど。今回は彼らのオーク討伐へ同行する。オークといえば薄い本の定番だけど、この世界の魔物はどうやら生殖行為を行わないらしい。魔力だまりから文字通りに「湧いてくる」存在なんだとか。リーナちゃんの今回の仕事は彼らに代わって討伐遠征に必要な道具や、魔物の残す魔石を集めるのが仕事だ。
「今回討伐するオークは下級の魔物だけど、万が一ということもあるから絶対に私より前に出ないでね」
「わかりました」
「よろしい。ねえ、リーナちゃんはどうして今回のクエストを受けたの?」
「どうして、ですか?」
「うん。冒険をしない冒険者がついに街から出るみたいって、ちょっとした話題になってるのよ?」
「え」
どうやらリーナちゃんはそこそこ有名人だったらしい。彼女みたいな少女は粗暴な冒険者たちといえど放っておけないということなのだろう。まあ、受付嬢のレイアさんが広めた気がしないでもないけど。
「私そんなこと言われていたんですか?」
「ああ。冒険者になるのは大抵が英雄願望のあるやつらだからな。金に困って冒険者になるやつもいるが、そういうやつらも他の選択肢と比べた上で選んでいる。全く街から出ないやつは中々いない」
「ほかのせんたくし?」
おっと? これはまずい気がするぞ?
「考えもしなかったって顔してるわね……。そうね、例えば」
「前方300m先に複数の魂の反応を感知! って伝えて!」
「うひゃっ!」
「なに!? どうしたの!?」
「い、いえ、なんでもないです」
なんとか誤魔化せたみたいね。リーナちゃんが思いっきりジト目で見てくるけれど、きっと大丈夫なはず。ん? 何か言ってる? えーっと、あとでお話があります? あ、はい。
「あ、えと、この先に何かがいるみたいです」
「へ?」
「その、実は私、感知系のスキルを持っていまして」
「そうなの? すごいじゃない! ねえ、リーダーきいてたでしょ」
「ああ。リジル、先へ行って少し見てきてくれ」
「了解」
いよいよ本物の魔物と異世界の戦闘が見られるのね。ワクワクしてきちゃった。でも何か違和感があるのよね。魂が不安定というか。
といったことを考えつつそわそわしながら待っていると、偵察を終えたらしいリジルさんが戻ってきた。
「どうだった」
「間違いなくオークだ。数は6」
「よし皆行くぞ。コリーナは魔法の準備をしておいてくれ。不意打ちで一発行くぞ」
「分かったわ」
「リーナ、出発前に伝えたように、いざという時のために魔法薬をいつでも出せるようにしておいてくれ」
「分かりました」
そしてついに……。
「目標確認」
「一発目から大きいの行くわよ。《エル・レブン・アルゼンテ》!」
コリーナさんの詠唱と共に土の槍が豚頭の怪人の胸に突き刺さった。怪物は霊魂を吹き出しながら倒れ伏し、音もなく体が崩壊する。そしてやがて一つの石だけが残った。霊魂を吹き出し、といったのは私から見た感想だ。恐らく実際に噴出しているのは魔力で、私が見たのはそれと重なっているだけの霊魂なのだろう。そして残った石が魔石みたいだ。
「行くぞ!」
その後はあっさりと戦闘が終わった。ギルさんの剣術とか、ネイさんの盾捌きとか、コリーナさんの魔法とか、リジルさんの攪乱とか、ところどころ荒っぽさは目立つけれど、そこそこ戦いなれている感じがする。彼らはいわゆる中堅の冒険者らしいので、おそらく人族で日常的に戦闘や訓練を行っている者の平均がこの程度なのだと思う。思っていたよりは普通だったかな?
問題は魔物の方だ。なんと魔物にはステータスがなかったのだ。教会にあった本にはこの世界に存在するあらゆる生物はステータスを持つと書いてあったから、もしかすると魔物は生物じゃないのかも。
「優花さん優花さん! 今の凄かったですね!」
っと、それよりもどうやらリーナちゃんは興奮してくれたみたい。しめしめ、これで冒険に興味を持ってくれるはずね。
あっさり終わる戦闘シーン。早くリーナに冒険者っぽいことをさせたいんですよ。
この世界にも鑑定スキルはありますが、それは相手のステータスを見れるものではなく、おおよその強さ(正確には魂力)を見るだけのスキルです。また高度な知性を持つ魔物は存在しません。なので魔物がステータスを持たないことに気づいた人間は優花が初だったりします。