第二十一話 帰ってきた日常
本日は2話投稿!
こちらが一話目です。
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「ん、んう」
なんですか? 眠たいのでもう少し眠らせて欲しいんですが。
「あ、目が覚め」
「リーナ!」
がばっ、と勢いよく抱き着かれて負荷を感じた私の体は、急速に目ざめへと向かいました。
「え、なに、え、え??」
な、なんですか皆さん。私を取り囲んだりして。あ、ちょ、アーシャさんも一回離れて下さい。
「よ゛がっだ。よ゛がっだよ゛ぉお」
「ほらほら離れて。リーナも困ってる」
「びぇええん」
「すみませんカレンさん。あの……何があったんですか?」
本当に今どういう状況なのかが分からないんですけれど。こういう時に一番頼りになる優花さんは状況を面白がっている顔でこちらを見ていますし、そもそもいま彼女を頼ることはできません。他のどなたか教えて下さらないでしょうか?
「それに関しては俺が説明しよう」
「えっと……ヘイムさん」
「ああ。実はだな」
彼の話によると、私達が大鬼の足止めをしている間に前線にいた戦力が戻ってきたらしく、後方で湧いた魔物たちはあっさりと一掃されたらしいです。そこまでは良かったんですが、大鬼が倒れた後急に私が気絶してしまったらしくて、皆さんに心配をかけてしまったようです。
……どうしましょう? 大鬼と戦っていた記憶はあるのですが、途中から丸ごと記憶が抜け落ちてしまっています。困り果てて優花さんを見ると、端的に「事実だよ」と伝えてくれました。そうですか。何か大事なことを忘れてしまっている気もしますが、優花さんが問題なさそうな顔をしているので大丈夫ですよね。
「それでだ。明日にでも領主様から今回の件について報酬があるらしい。リーナも今回は大活躍だったから、直接報酬が渡されることもあるかもな」
「わっ、わたしにですか?」
「当然だろ! リーナがいなきゃ俺たちも、そして街もどうなってたかわかんないんだ。本当に感謝してるぜ!」
クルトさんまで。ただ優花さんの力をお借りしただけで、私自身の力じゃないっていうのに……。
そんなことを思っていた矢先です。ドタドタという足音が聞こえたかと思うと、次の瞬間、扉が開け放たれ、私は視界を防がれてしまいました。
「む、むぐぐ」
「ああ、よかったリーナちゃんが無事で! 倒れたって聞いたから心配だったのよ! 大丈夫? 怪我はない?」
こ、コリーナさん苦しいです。
「お、おい……」
「ああ、ごめんなさい! 私ったらつい。……リーナちゃん、この人たちは?」
ああもう、状況がどんどんややこしくなっていきます。ちょっと優花さんもゲラゲラ笑っていないで助けてくださいよ。あ、ちょ、置いていかないでください! 優花さん、優花さんってば―!!!
「酷い目にあいました」
「あっはっはっは。まあまあ、それだけ愛されているってことだよ」
「そうですかねぇ、って何誤魔化そうとしているんですか。私を置いて逃げたことを忘れてませんからね」
「ごめん、ごめんて」
むぅ。本当にこの幽霊は、分かっているんでしょうか?
あのあと、私は彼らを紹介させ合ったり子爵家の方に話をしたりして、ようやく一人に、いえ、優花さんと二人になれたときにはすっかり日が暮れていました。報酬の話は子爵家の方にも言われてしまいました。私は本当に何もしていませんのに……。しかも、それどころか領主様が私にお会いしたいって仰っているようなのです。うぅ、胃が痛くなってきました。
「どうして私なんかに」
「ま、貰えるものは貰っておいたら良いんじゃないかな? 領主様が会いたいっていうのも悪い話じゃないだろうし、権力と懇意にしておいて損はないよ」
私は権力とか関係ないけどね、と付け足す優花さん。良いですよね幽霊は。天上の方々の機嫌を損ねる心配なんて全くしなくていいんですから。
「……まだ怒ってる?」
「怒ってません」
「いいや、絶対に怒ってるね」
ええそうです。私は怒っていますよ。気絶から覚めたのに心配の一つもしてくれない優花さんのことなんてもう知りません。精々私の醜態を笑ってみていればいいんです。
ツンとした態度を取っていたら、優花さんも流石に堪えたのか、オロオロとし始めました。
「ふふっ」
いつも飄々としている彼女の珍しい様子に、思わず笑みがこぼれてしまいます。だめです、今笑ったらバレてしまいます。抑えてください私。
「あ、からかったなー」
「ふふふっ。優花さんが酷いのが悪いんですよ。たまには仕返しです!」
こうして二人でふざけ合うことができるのも、あの戦いを乗り切ったお陰なんですよね。ああ、今更ですが、本当に終わったんだという実感が湧いてきました。
本当に、無事に終わってよかったです。
翌日、私たちは領主様の御屋敷に招かれていました。呼ばれたのは主に四級以上の冒険者が多く、中には当然ながら『さざ波』のお二人も含まれています。うっ、明らかに私浮いているんですが、本当に大丈夫なんでしょうか?
「リーナちゃんは僕たちと一緒にいようね。大丈夫、みんな顔は怖いけど優しいからさ」
「ほら、言われているぞ顔面ゴリラ」
「そこまで言われてねえだろ!?」
「くすっ」
そんなやり取りがおかしくて、思わず笑ってしまいました。駄目です。人に失礼な真似をしてはいけません。死んだお母さんもそう言っていました。
「あ、笑った!」
「ご、ごめんなさい! つい……」
「いやいや、いいんだよ。子供は元気が一番さ。それにおいらたちも感謝しているんだよ? よく俺らが戻るまで耐えてくれた。ありがとな」
上級冒険者に感謝されたことなど一度もなかったので、私は思わず身体を固くしてしまいます。悪い方々じゃないのは分かるんですけれど、どうしても慣れません。
「ねえリーナちゃん。良い事を教えてあげよっか?」
? 良い事って何ですか優花さん。
「みんな私からすれば雑魚よ」
ちょ、なんてこと言うんですか!? いくら事実でも失礼ですよ!?
なんてことがありつつも、そんな優花さんのおかげでなんとか緊張をほぐすことができた私は、その後はリラックスして皆さんとお話しできました。皆さん流石はベテランといったところで、ためになる話も多く、とても面白かったです。
そのまま領主様とも少しばかりお話をし、想像以上の報酬をいただけた後、集まりは解散となって祝勝会へと移行するはずだったのですが……。
「リーナ様、少しだけお待ちしていただけませんか?」
「ひゃ、ひゃい!」
なんと家令の方に呼び止められてしまいました。え、なんで私!? 何か失礼なことでもしてしまったのでしょうか……?
「別に取って食おうというわけではございません。ただ、当家の専属宝石職人のライムンド様が、どうしてもリーナ様にお話を伺いたいと申すので」
宝石職人の方が? いったい何の御用なのでしょう?
そのご案内されたのは応接間と思しき場所でした。見るからに高価そうな調度品が置かれていてとてもきれいなんですが、万が一ものを壊してしまったときのことを考えると、胃がキリキリ痛みます。
「儂がライムンドじゃ。よろしく」
「ぼ、冒険者のリーナです! 初めまして!」
「そう硬くならなくとも良い。儂はただ、お主のそのペンダントについて聞きたいだけなんじゃ」
私のペンダントですか? 別に何の変哲もない、普通のペンダントだと思いますけれど。
「単刀直入に聞く。主はそれをどこで手に入れた?」
「どこでって、私の母の形見なんですけれど……。あの、このペンダントに何かあるんですか?」
「ぬ。その様子だと何も知らないようじゃな」
聞きたいか? というライムンド様の問いに、反射的に頷いてしまいます。だって、ずっとわからなかった母の、そして父のルーツが分かるかもしれないんですよ? ずっと気にしないようにしていたとはいえ、気になるものは気になってしまいます。
その後、ライムンド様から語られた話は衝撃的なものでした。
戦いも終わり平穏な日常が帰ってきました。
そんな中、何やらリーナに話があるようです。




