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殺人機の国  作者: こよみ
風神雷神編
6/6

ガラクタ


 その頃、『雷ノ神(かみなりのかみ)』であるミカヅチは建物の上を滑走していた。

 

 彼の目的は白錬に頼まれた神核の回収。


 そして、もう一つ──


「(白錬様も困ったものです。あの女の妹に会いたいだなんて……)」


 朱子を連れてくること。


 どうやら、だいぶ御執心のようで『神核の回収より優先して欲しい』とまで言われていた。

 

 そんな事、素直に朱子がのむわけなく、戦闘になるのは必須である。


 でも、ミカヅチは逆に楽しみだった。

 以前から気にくわなかった、あの女の妹を完膚なきまでに叩きのめせると。


「(どうやって痛め付けてやりましょうかね……?)」


 そんな事を考えていたら、目の前から三発の銃弾が飛来した。

 一発は建物の床に突き刺さり、残り二発はミカヅチが握り潰した。


「そこに隠れているのはバレていますよ? 出てきたらどうですか?」


 立ち止まり、目線を二棟先の建物に向けた。


「──やっぱりバレたか……」


 そう言って現れたのは、帰ったはずの外神だった。

 

「はい、もちろんです。それにしても、隠れるの下手ではないですか? 教えて差し上げましょうか?」


「おー、言ってくれるねぇ……。今度からは迷彩服とか着てくることにするわ」


「今度? 今、ここで死ぬのにですか?」


「他人の生き死にを勝手に決めんなよ。お前は神にでもなったつもりか?」


「はい、私は雷ノ神ですから」


「そうかいそうかい。まぁ……俺から言わせれば、お前らなんてただの──ガラクタだけどな?」


 外神が懐に隠しておいたスイッチを押すと、突き刺さった銃弾が爆発した。

 建物の上半分程が崩壊。そして、ミカヅチの姿は消えていた。

 

 いや、消えたわけではない。外神がいる二棟先の建物に移動しただけであった。

 

「いきなりは随分と卑怯ではないですかね?」


「そうか? 勝つためには何だってするのが戦いってやつじゃねーか?」


「確かに一理ありますね」


「だろ?」


 二人とも軽やかに会話をしているが、お互い臨戦態勢にはいっている。

 

 外神は両手に銃を構え、ミカヅチはバチバチと体に帯電をさせていた。

 どちらから攻撃してもおかしくはない状況の中で、外神は空に向けて一発の銃弾を撃った。


「戦闘開始の合図というわけですか?」


「まぁ、そんなところだ」


「では、いかせていただきます。【雷踵(らいしょう)】」


 足に電気を集中させ、踵落としを放った。轟音とともに屋上が崩壊。外神は一個先の建物に移っていた。


「ワイヤーですか……」


「おいおい……はえーな……。もう少し余裕を持たせてくれよ……」

 

 数秒後には、ミカヅチも外神と同じ建物に移動し終わっていた。

 

「そう言うわりには、驚いた顔一つもしないんですね」


「まぁな。お前より速い奴を知っているからなぁ……」


「ほう……。それはぜひ一度手合わせ願いたいものですね」


「やめとけやめとけ、自信なくすぞ」


 遠い目をしながら言う外神。過去の事を軽く思い出したみたいだ。

 

「そんなにですか?」


「そんなにだ。あいつは次元が違いすぎる。俺が言うのはなんだが、あいつ──『皇真宵』に出会ったら全力で逃げたほうが良いぞ?」


「ご忠告ありがとうございます」


「あっ、それと……。そこから直ぐに離れた方が良いぞ?」


 ミカヅチが気付いた時には、もう爆発していた。


 またしても爆弾を仕掛けていたみたいだ。ワイヤーで上空にいる外神は、下の様子を伺っていた。


「(多分、あんなのじゃ全然ダメージはいらないだろうなぁ……)」


 外神も予想はしていたが、完全に無傷だった。


「【雷飛弾(らいひだん)】」


 煙が晴れる間もなく、左手を銃に見立てて電気の弾を放つ。その弾は高速で外神に迫っていく。

 

 上空で体をひねってかわすが、間髪入れずに放たれる弾丸。何発か体を掠めていく。


「いや、撃ち込み過ぎだろ。さっきから当たってるっつうの」


「完全には当たってないですよね?」


「いや、一発でも当たったら死ぬからね? 俺、普通の人間だから」


「殺人機と戦えている時点で普通の人間ではありませんよ」


「戦えてねーよ。どう見ても一方的だろうが。一端、逃げさせてもらってもいいか? 返事は後で聞くわ」


 ワイヤーを全て外し、煙幕を周りに放つ。視界は完全遮られて、辺りが見えた時には外神の姿は消えていた。


「(屋上のドアが開いていますね……。中に入りましたか……。私も……いや……罠の可能性もありますね……)」


 この屋上のドアがわざと開けてたとしたら、どうせ爆弾が仕掛けられているだろう。

 ならば、やることは決まっている。建物ごと破壊して罠など無くす。


 今出せる最大限の攻撃を建物に叩き込む。 


「【雷神化(らいじんか)超雷踵(ちょうらいしょう)】」


 電気なんてそんな生易しいものではない。雷が建物全てを包み込み、まるでそこに元々何も無かったかのように建物が消滅していた。



◇◇◇◇◇◇



 「(くそくそくそっ……! これじゃ一方的じゃねーか……!)」


 何度も何度も繰り出される拳。朱子の攻撃を弾こうとしているが、ラドルの纏っているはずの風は意味をなしていない。

 

 あれだけ自信があった絶対防御が、今や完全攻略されて拳を全て受けてしまっている。


 身体中はボロボロ。まさに一方的だった。


「(負けられない……! 俺は負けたくない……! 俺は強くなったはずだ……! あの日誓ったんだ……! もう誰にも負けないって……!)」












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