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殺人機の国  作者: こよみ
風神雷神編
5/6

捨て駒


白錬(はくれん)様。ラドルを勝手に行かして良かったのですか?」


「大丈夫大丈夫。どうせ負けると思うし、あんな捨て駒いらないから」


 話しかけたのは、金髪の眼鏡の殺人機。その質問に適当に答えているのは、殺人機の主である『白錬(はくれん)』。

 

 病的までに白い肌に、白い髪。

 

 更には赤い瞳を妖しく光らせて、椅子に座ってラドルにつけられたカメラをモニターで見ていた。


「じゃあ、あのまま見殺しにするおつもりですか?」


「うん、だってあいつ雑魚だし。いらなくない?」


「左様ですか」


「えっ、もしかしてラドルと友達だった?」


「いいえ、違います。ご冗談はやめてください」


「だよねー?」


 白錬にとって殺人機は自分のことを楽しませる道具に過ぎない。そんな道具がどうなろうと、どうでもいい。

 

 モニターを見ていた白錬が、ある人物を見たときに楽しそうに笑みを浮かべた。


「こんなところに居たのかぁ……。鬼の一族の片割れ」


氷ノ神(こおりのかみ)の妹ですか?」


「うん、そうそう。僕、見てみたくなっちゃったなぁ──姉妹喧嘩」


 そう言った白錬の顔はとても歪んでいた。



◇◇◇◇◇◇


 朱子にとって殺人機対策室とは、真宵とほぼ毎日のように会える場所である。

 つまりは同棲していると同義であると感じている。

 

 朱子は真宵が大好きだ。結婚したいとも考えている。

 そこまで慕っている理由は、初めて自分を負かした自分よりも強い存在だからだ。



 そんな人と居られる大切な場所を壊された朱子は凄くキレていた。


「ねぇ? まだ生きてるでしょ? 早く壊されにきなよ?」


 ラドルはパラパラと瓦礫を押し退けて、身体に少し砂ぼこりをつけながら立ち上がった。


「おいおい……! ただのまぐれ当たりでいい気になるなよ……! くそガキが……!」


 額には青筋を浮かべて、朱子を睨み付ける。


「そう思うなら、さっさとかかってくれば?」


 それが合図になり、両者はまた戦いを再開させた。


「【操衝波(そうしょうは)暴風拳(ぼうふうけん)】」


鬼丸流(おにまるりゅう) 肆ノ型(よんのかた)十分ノ四(じゅうぶんのよん)】」


 拳に風を纏わせた一撃。空中での拳と拳のぶつかり合い。勝ったのは朱子の方だった。

 

 だが、軽く吹き飛ぶだけで態勢をすぐに整えた。

 

「ちっ、今の攻撃でも駄目か……。なら、次だ次!」


「もう、めんどくさいなぁ……。鬼丸流(おにまるりゅう) 伍ノ型(ごのかた)十分ノ五(じゅうぶんのご)】」


 朱子の頭には一本の赤い角が生えた。

 

 鬼丸家は鬼の末裔の一族。彼女達は力が強すぎる。そのため、その力の制御するための型が存在する。


 それが鬼丸流の型である。伍ノ型以上となれば、本来の力の一部を解放して、その力を身体全体に行き渡らせることが出来る。


「【操衝波(そうしょうは)暴風連(ぼうふうれん)け……「うっさい」──がっ!!」


 ラドルはいつの間にか顔を殴れて、二十メートルぐらい吹き飛んでいた。

 顔にはヒビがはいっていて、奥歯まで見えている。


 そんなラドルは空中で笑いだした。


「良いねぇ! 最高だよお前! これなら本気を出してもいいよな?」


「はぁ……。めんどくさいから、はじめから出せば良いのに……」


「それだと戦いの醍醐味が無くなるだろ? 戦いってのはなぁ「話長い? なら、私聞きたくないんだけど?」……ちっ、はぁ……」


 頭をボリボリと掻いてため息をもらした。


「まぁ、いっか……。しっかり見とけ……。これが俺の本気……。【操衝波(そうしょうは)風神纒(かぜかみまとい)】」


 ラドルの身体から、まるで台風かのような風が吹き荒れる。普通の人なら飛ばされている。

 

 だが、朱子は普通の部類には入らない。むしろ化け物の部類に入る。


「で……? この風がなに? 強くなったの?」


「それはてめーの目で確かめて見ろよ!」


 ラドルは空中を飛ぶように一気に加速する。そして、朱子を殴ろうと拳を突き出す。

 

 それを軽く避けた朱子はラドルの顔面にカウンターをいれる。


 朱子の拳のカウンターはラドルに届くかと思われたが、急に弾かれた。

 

 ラドルは少し動揺した朱子の脇腹に、容赦ない風を纏わせた蹴りを放つ。


「おらっ!!」


「──ぐっ」


 声にならない声をあげて、落下して地面に叩きつけられた。

 朱子の周りは陥没して、その威力の高さがうかがわれた。


「おいおい! 今ので終わりかよ? 以外とたわいもないな! 冥土の土産に教えてやろうか? どうして届かなかったか?」


「いや、いらない……。どうせ……風を常に纏わせて、攻撃を受けた場所に一点集中させて弾いただけでしょ?」


 そう言ってむくりと起き上がり、身体に付いた埃を払う。

 多少はダメージがあったみたいだが、なんともなさそうだった。


「ちっ、正解だ……。まぁ、正解したところで、俺のこの──絶対防御は破れないけどな?」


「──は? 絶対防御? 馬鹿も休み休み言いなよ。そんなのは絶対とは言わない」


「いちいちムカつくなてめーは……! じゃあ、てめーはこの絶対防御破れんのかよ! ああん!?」


「はぁ……当たり前じゃん。これから一方的にやらせてもらうから覚悟しておけよゴミクズ。鬼丸流 漆ノ型(しちのかた)十分ノ七(じゅうぶんのなな)】」


◇◇◇◇◇◇

 

 ラドルと朱子が激戦を繰り広げている最中、真宵達は天井が無くなった殺人機対策室で、のんびりとしていた。


「あの子強いわね」


「はい、強いですよ」


「私とどっちが強いかしらね?」


「互角くらいじゃないですか? シェリルが本気を出せばの話ですが」


 シェリルは本気を出したことがない。出す前にだいたいの奴は殺してしまうからだ。

 本気を出せるとすれば、朱子か真宵と戦う時くらいだろう。


 まぁ、戦いを望んでいない彼女にとってはどうでもいいことだが。


「ところで」


「何かしら?」


「外神さんって何処にいきました?」


「確かにいないわね」


「これから美女とデートするので、帰って行きましたよ」


 真宵の疑問に答える天草。

 

 惣助がいないことに、今頃になって気付いた真宵とシェリル。

 それもそのはず、惣助はめんどくさがって、天草にしか声をかけずに帰った。


「そうですか」


「あっ、それと……あの殺人機に部屋の弁償代請求しとけって言っていましたよ?」


「そういえば、天井壊されましたね。このぐらいの破損だったら、私がお金を出すから大丈夫ですよ?」


「流石は皇財閥のご令嬢ですね……」


 この建物ぐらいなら、余裕で何回でも造り直すことも可能だろう。

 朱子達が壊した建物や道路も、真宵は自分のお小遣いから出すつもりでいる。


「そろそろ戦いも終わりそうね」


「はい、そうですね」


 


 

 





 







 



 


 


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