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殺人機の国  作者: こよみ
風神雷神編
2/6

雑魚は雑魚


 ここは東区。普段なら人通りが多い駅前広場があるのだが、今はそのかげもない。

 


 殺人機が表れた時に避難警報が出される。区民達はそれを聞いて、どこに近づいていけないのかを知る。

 

 今回は駅前広場に出現して、手当たり次第に殺戮を楽しんでいた。


「ざっと十人程度は殺したか……。もっと殺してーなー」


 殺人機は改造人間である。だから、元々は人間なのだが、もう人の心は持ち合わせてはいないみたいだ。

 

 この男の名前はガイズ。派手な金髪に伸ばした髪を後ろで纏めている。


 身長は二メートル近くあり、大きな血の付いたハンマーを片手で軽く持ち上げている。


 先程まで人が多くいたのだが、皆逃げ出してしまった。


 ガイズはというより、殺人機は基本的に人を殺したがっている人がなると言われている。

 

 そんなガイズがいる場所に、一人の少女が歩いて近づいてきた。その少女は真宵に連れてきてもらった朱子である。


 朱子はその場を一瞥(いちべつ)し、ガイズがこれをやった犯人で殺人機なのだと直ぐに理解した。


「これやったのお前だよね?」


「ああ、そうだ。素晴らしい光景だろ?」


 朱子の質問に挑発するように返す。どうやらガイズも、朱子が死地の侍だと分かったみたいだ。

 

「これからお前を壊すから」


 質問には答えず。ただそれだけを告げて走り出した。

 物凄い速さで近づいて、腰にさしてあった刀を横凪ぎに振るった。


 だが、簡単にガイズにハンマーで受け止められて後退した。

 そこに、ハンマーを真上から叩き付ける。ガイズは手応えが無かったことを感じとり、視線を少し先に向けた。

 

 朱子は何事も無かったかのように余裕で回避して、元の位置に戻っていた。


「……やっぱり死地の侍だけあるな。今までのやつは直ぐに死んでいって、殺し甲斐が今一つだったが……。てめーはなかなか歯ごたえあるじゃねぇか」


「お前は歯ごたえないけどね」


「口だけは達者だが、押し負けてるのはてめーだぞ?」


 ガイズはそう言って馬鹿にしたように笑う。


「はぁ……。実力差も分からないようなゴミカスを相手にするのも疲れるなぁ……」


「──あ? それは俺のことを言ってんのか?」


「それ以外に誰がいるの?」


「むかつくやろーだな……。一撃で殺してやろうと思ったが、気が変わった……。出来るだけむごたらしく殺してやるよ!」


 それを聞いた朱子は刀を鞘に納めて、拳を構えた。

 そして──


「かかってきなよ」


 と、くいくいと人差し指を曲げて挑発した。

 

 ガイズはその挑発にイライラが抑え込めなくなり「ぶっ殺す!!」と朱子に向かって行く。


 朱子に目の前まで行き、ハンマーを振り落とすが、片手で受け止められた。

 

 ガイズは驚いた。次は潰そうと全力で力を込めたが、びくともしなかった。


「(こいつ……なんて力してやがる……!)」


「これが全力? やっぱり、雑魚は雑魚だね」


 男に冷めた目を向ける。ガイズは悟った。強い弱い以前の問題で、次元が違いすぎると。

 

 多分、こんな奴に勝てるのは『七ノ神(しちのかみ)』ぐらいだろうと。


「真宵先輩に会いに行きたいから、そろそろ終わりにしよ」


 ガイズのハンマーを押し退けて、構えをつくる。

 

鬼丸流(おにまるりゅう) 壱ノ型(いちのかた)十分ノ一(じゅうぶんのいち)】」


「──ごっ!!」

 

 繰り出されたのは一撃の拳。その拳はガイズがもっていたハンマーを砕き、そのまま腹に直撃した。

 

 ガイズは吹き飛び、何度か地面にバウンドしながらとまった。


 

 辺りに砂ぼこりが舞い上がる中、仰向けに倒れているガイズにゆっくりと近付いていく。

 そして、冷たい目でガイズを上から見下ろした。


「バラバラになってないところを見ると、結構頑丈だね」


「だろ? 人を殺すのにはとっておきの身体だ」


「でも、その人に今から壊されるけどね」


「ちげぇねぇな……」 


 ガイズはそう返して、目を閉じた。それを見た朱子は拳を構え──


鬼丸流(おにまるりゅう) 弐ノ型(にのかた)十分ノ二(じゅうぶんのに)】」


 先程より少し強い一撃はガイズの胸を貫き破壊して、地面に拳が突き刺さり、コンクリートを意図も容易く陥没させた。

 

 ピクリとも動かないところを見ると、完全に破壊したようだ。


 朱子は手に着いた砂ぼこりを払う。そして、耳に手を当てて何処かに電話をかけた。


「もしもし?」


『鬼丸か……。どうしたんだ?』


「ねぇ、外神(とがみ)。真宵先輩が今何処にいるか教えて?」


『はぁ、そんなことか……。まず、お前は教えた所でたどり着かんだろ?』


「なら、道案内もお願い」


『嫌に決まってんだろ』


「なんで?」


『俺はこれから美女とデートだからな。お前に構っている暇はない。というわけで、じゃあな』


 その言葉通りに電話を切られた。朱子は少し腹を立てたが、今は真宵先輩に会いに行くのが優先事項。

 

 なので、外神は後でぼこぼこにするとして。どうしようかと悩んでいたら、一人の優しそうな黒髪の男が近づいてきた。


「朱子さん、悩んでいるようですけど。どうしたんですか?」


「あっ、天草(あまくさ)。いいところに」


 真宵に会いに行きたいけど、外神に道案内を断られてしまった経緯を話す。

 

 そうすると、天草が「僕が案内しましょうか?」と名乗り出てくれた。


 朱子はそれに──


「じゃあ、さっさと案内して。あと、居場所も分からないから、電話して聞いて」


 こんな酷い返しにも顔色一つ変えずに電話をかけはじめた。


「大体の場所は分かりました。それでは、行きましょうか?」


 そして、天草の案内で真宵の所に向かって行った。



◇◇◇◇◇◇ 


「さっきから着いてくるけど、あなた私のファンとかかしら?」


 中央区の誰も寄り付かないような、錆び付いた建物が並ぶ場所。

 そんな場所に、黒髪の美女と銀髪の美少女が対峙していた。

 

「いえ、違います。私は死地の侍です」


「そんなこと知っているわ……。はぁ……冗談が通じない子」


「それはすみません」


「はぁ……もういいわ。それで私になにか用かしら?」


「あなたをビルの殺人事件現場で見かけたので、着いてきただけです」


 どうやらこの黒髪の美女は真宵達がいた現場にいたみたいだ。

 

「なら、もう用事は済んだでしょ?」


「いえ、まだです。これからあなたを壊さないといけませんから」


 そう言った真宵の身体が一瞬消えた。次に現れた時には、黒髪の美女の右腕を切り取っていた。

 

 ガシャッと音を鳴らしながら地面に落ちていく右腕を、ただ呆然と眺めている黒髪の美女。

 

「あなたねぇ……私がただの人間だとしたらどうするつもり?」


「全力で謝ります」


「もう……そういう問題じゃないでしょ……」


 ため息をつきながら右腕を拾う黒髪の美女。右腕を切られたというに痛がる素振りも見せない。


「やはりあなたは殺人機ですか」


「そういえば自己紹介がまだだったわね。私は七ノ神が一人『死ノ神(しのかみ)のシェリル』よ。よろしくね?」



 


 


 





 



 




 

 

 

 





 








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