親友同士で出来るキスとは?
本日2回目の更新です。
お風呂を出てパジャマに着替える。
このパジャマはユージの家に泊まる時のための『置きパジャマ』なんだよ。
来客用の部屋に泊まったりするだけじゃなくて、今夜みたいに夜通し遊ぶことがあるから置いてあるし、ユージの部屋に泊まるのも初めてじゃない。
だからベッドで一緒に寝るのだって慣れているんだけど、『ニンニクチューブ』や『コ〇ドーム』の一件があるから今日はいつもみたいに軽い気分で同衾はできない。
って、『添い寝』じゃなくて『同衾』とか言ってるしっ!
「ユージお待たせ」
「おう」
ボクと同じようにパジャマを着たユージが部屋で待っていた。
見慣れてるけど、ユージのパジャマ姿って素敵だよお!
そのユージは熱心にスマホを操作している。
「あれ?何してるの?」
「ちょっと『キス』のことを調べようと思ってな」
「ふーん…って、えええええええっ?!」
キス?キスって言ったよね?!
「なんでそんなもの調べてるのさ?!」
「さっきお風呂に入る前に言ってただろ」
小学校になってからキスしなくなった話かっ!
あれ、まだ続いていたの?!
「親友同士でできるキスとか無いかなって調べていたんだ」
そんな都合のいいキスなんてないよっ!
「これかな?『フレンチ・キス』」
ぶぶっ!
「うん、これなら俺たちには丁度いいかな」
馬鹿なの?ねえ、ユージは本当に馬鹿なの?
ネットで調べたら、ちゃんとした意味が出てるよね?
軽くするキスをフレンチ・キスって勘違いしている人が多いらしいけど、舌を絡める奴だからねっ!
どうしてそんなに詳しいかって?
べ、別にいいじゃないかそんなこと。
そうか、わかったぞ!
きっと読み間違えて、頬にするキスとかと勘違いしたんだ。
それなら親友同士でも…いいはずないよねっ!
恋人でもない限り、頬にキスとかしないから!
で、でも、ボ、ボクはいつでもウェルカムだからっ!
「さ、さあ来いっ!」
ボクは目をつぶって上を向いてスタンバイする。
どんなキスでも、全部受け入れて見せるからっ!
「いくぞ」
どきどきどきどきどきどき
ぴとっ
「ん?」
頬に触れた感触。
でも、キスじゃない?
眼を開けると、横にユージの顔がある。
ボクとユージの頬同士がくっついている状態だ。
そしてしばらくしてユージは頬を放す。
「こうやって頬同士でキスするのって、俺たちには丁度良くないか?」
「これフレンチ・キスじゃなくてはチークキスだよっ!」
もう、焦ったじゃないかっ!
チークキスなら海外ではあいさつ代わりだから親友同士でやってもいいだろうけどさ。
「そっか。フレンチ・キスじゃないのか」
「それは全然違うから!」
「詳しいんだな」
「そ、そんなの高校生になるんだから常識だよ」
「さすがゆかりん。じゃあ、これからは俺に色々教えてくれよ」
え?
「高校生なら教室でチークキスをしてもいいんだよな?」
「駄目駄目駄目駄目駄目っ!」
DIO様みたいに連呼しちゃったよ。
「日本ではそんな事しないから、人前ではやったら駄目っ!」
「今しちゃったけどいいのか?」
「ボクたちだけの時はいいの!」
「そっか。親友だけでこっそり楽しむんだな」
楽しいんだ。
そっか。ちょっと嬉しいな。
「じゃあ、もう一回しようか」
「それなら次はボクからしてあげるよ」
「よし、頼むよ」
眼を閉じてキスをするみたいな表情をしているユージ。
チークキスって双方からするもののはずなんだけどなあ。
ぺとっ
ほっぺ同士をくっつける。
うん、ユージの肌の感触が凄くいいっ!
「おう。これいいな」
「そ、そうかな?」
「ゆかりんのいい匂いがするからな」
「~~~~~~っ!」
もう、本当にユージのばかあっ!
これで恋人じゃないとか、どういうことなんだよお!
「本当は両方から頬を触れ合わせるんだよ」
「よし、やってみようか」
それからしばらく頬をくっつけ合った。
ユージの匂いでクラクラしちゃうよお!
「さて、ゲームの続きをしようか」
「うん、すっかり目も覚めたからね!」
色んなことがありすぎたからね!
パジャマ姿で横にくっついてゲームをしているのに、ボクだけドキドキしてユージは平気な顔をしている。
だけど、今日はもうボクの負け。
これ以上ユージに女の子扱いしてもらうなんて無理だから。
今からは普通に親友の距離感で遊ぼうっと。
「うーーーん。ここは難しいな」
「そうだねえ。どうしようか?」
今日やっているゲームは『ケルフィングの嘆き』という謎解きを多く含んだアクションゲーム。
時間制限とか無いからお気楽にできるけど、謎解きが難しいんだよな。
「ここのレバーを上げてから通路を走って、すぐにボタンを押したらどう?」
「そうすると途中のドアが閉まるから…」
「それならこっちから窓を壊しつつ…」
こうやって二人で考えるのがすごく楽しいんだよ!
「よし、それで行くか!」
「まずはボクがやってみるね!」
「頼むぞ、ゆかりん!」
「だめだあ!」
「いや、計算上はできるはず!次は俺だ!」
「くうっ!おしいっ!」
「今度はボクだっ!」
「これで、どうだっ!」
「よしっ!行ったぞっ!」
30分以上かけて何とかクリアできたっ!
「やったなっ!」
「うんっ!」
思わず抱き合うボクたち。
…
…
…よしっ!恥ずかしくないぞっ!
そうそう、これがボクたちの距離感だよ!
ゲームがクリアして喜んでパジャマ姿で抱き合ったって、全然恥ずかしくないんだから!
「よし、このくらいにしてそろそろ寝るか」
「うん」
一緒に布団に入って、背中同士くっついているけど全然平気。
「ユージ、おやすみ」
「ゆかりん、おやすみ」
ほら、ちっとも恥ずかしくないから。
ボクたち、親友だからねっ!
…
…
…
『ゆかりん、恋人にならないか?』
『ユージ?!』
本当に?
それとも夢?
やっぱり夢だな。
周りがぼんやりしているもんね。
『ボクたち親友だろ?』
『もう親友っていうだけじゃ我慢できないんだ』
『どうして恋人がいいの?』
『本当のフレンチ・キスをしたいんだ』
わあ、ユージったらだいたーん。
って、これって本当のユージじゃないよね?
単なるボクの願望だよね?
『んもう、仕方ないなあ。ユージがそんなに言うなら、恋人になってあげるよ』
夢なら何をしたっていいよねっ!
『じゃあ、キスしようか』
『うんっ!』
…
…
…
「ゆかりん、朝だぞ」
「んー。もう、ユージったら、じらさないでよお…え?朝?」
ボク、唇を突き出して催促しちゃったよお!
「そっか、キスしてほしいのか」
「ちょ、ちょっと待ってよ!あっ、ああっ!」
どんどん近づいてくるユージの顔。
ボクは目を閉じて…
ぺとっ
ボクとユージの頬と頬が触れあっている。
「ふれんちきーす!」
「だからこれは、チークキスだってばあ!ばかあっ!」
でもこれからはこうやって起こして欲しいなっ。
お読みいただきありがとうございました!
ブックマークとか評価とか感想とかぜひお願いします。