ユージの第2ボタン
とりあえず10話くらいまで更新して、反応次第で完結させるつもりです。
よろしくお願いいたします。
「それで、告白された件なんだけどさ」
「それよりもっ!」
興奮して声を荒げてしまうボク。
「卒業式に第2ボタンあげたって本当?!いつの間に?!」
あの時はボクがしっかりガードして、一人っきりにさせなかったはず!
いつものように一緒に下校して、ユージの家の前で別れたんだから!
ちなみにユージのおうちはうちの3軒隣だよ。
そもそもユージの第2ボタンはここにあるからねっ!
『ユージったら卒業なのに第2ボタンほしがられないなんて恥ずかしいなあ』
『そうかな?』
『だから親友のボクが代わりにもらってあげるよ。一応ボクも女の子なんだからさっ』
『そうか。ありがとうな!持つべきは異性の親友だよな!』
なんてラブラブな(個人的感想)やり取りがあったのに!
どこから第2の第2ボタンが出て来たんだよ!
自分で言っててわけわかんないけど!
「実は卒業式の前日に…」
『遠野先輩!第2ボタンください!』
『え?それって卒業式で渡すものじゃないの?』
『えっと、それは諸事情があって不可能といいますか…』
何ソイツ。
ボクが卒業式でガードすることを感づいていたの?!
『当日休むの?』
『そう、そうなんです!だから、今欲しいんです』
『それなら、はい』
『それと!新しいボタンを持ってきたので縫ってあげますね!』
『え?』
『無くなっているとヤバいので早く脱いでください!』
『あ、ああ』
それって完全にボクの事警戒してるよね?
『うわあ、先輩すっごいたくましいんですね。触っていいですか?』
「それで触らせたのっ?!」
「いや、触らせてないけど」
良かったあ。
「女の子に触られるとか恥ずかしいじゃないか」
今、ベッドでボクと並んで座ってるのは気にならないの?
肩とかぴったりくっついているんだけど?
『はい!できました!』
『ああ、ありがとう』
『それで、このことは嵐山さんには内緒でお願いしますね』
『どうして?』
『どうしてもです!』
だから第2ボタンもらったこと言わなかったのかあっ!
それにそれに!
ボクの宝物であるはずの第2ボタンが、前日にすり替えられた『偽物』だったなんて!
「ユージ!」
「おう。なんだ急に大声出して」
「ボクがもらった第2ボタンはユージのものじゃなかったから、他のボタンを頂戴よ!」
「え?」
「第1から下まで全部!ボクがもらってあげるから!」
「もう中学の制服は着ないから別にいいけど、そんなものがほしいのかよ」
欲しいに決まってるよ!
ユージのなんだから!
「それでそれで、告白って何?誰にされたのさ?」
ユージの家とボクの家の間には家が2軒しかない。
その間でユージに出会って告白したなんて…誰だよ?!
「うちの隣の前園ひなちゃんだよ」
「あいつかあああっ!」
中1だからって油断してたよ!
あの子、可愛いいけどおとなしいから自分から告白とかしないタイプだと思ってたし。
というかこの近所、何気に美少女揃ってない?
ボクとユージが入る高校の、今度2年生になる吉原カンナ先輩とか、今度3年生の武田雪乃先輩とか!
でも、この近所ではボクがいつもユージをがっちりガードして、マーキングしていたから誰もボクたちの間には入ろうとしてこなかったのに!
マーキングって言うのは、ボクたちの前に可愛い女の子が来たら、ボクがユージとスキンシップしているところを見せつけることだよ。
「それで告白されたって本当なの?!」
「それがだな。家を出てここに来ようとしたら、俺の家の前にひなちゃんが居たんだ」
『あっ、遠野先輩!こんなところで会うなんて奇遇ですね!』
奇遇って、単にユージが出てくるのを待っていたんだよね?
『また嵐山先輩の家に行くんですか?』
またって、監視してるのっ?!
『たまには私の家に遊びに来てほしいな』
『女の子の家に行くとか恥ずかしいじゃないか』
『嵐山先輩の家はいいんですか?』
『あいつは親友だからな』
嬉しいような悲しいような、複雑な心境だよお。
『じゃあ、私と恋人になってください』
『え?』
『それならうちに遊びに来れますよね?』
『家に遊びにきてほしいだけなんだろ?』
『じゃあ考えておいてくださいね!』
「そう言って、さっさと自分の家に入っていったんだ」
何その『ついで』みたいな告白。
もし断られても『あれは冗談』みたいに済まして、またチャンスを狙う気なの?
「だからどうしようかって思ってさ」
「ユージはどう思ってるのさ?」
そりゃあ断ってほしいけど、ユージの気持ちが一番大事だよ。
でもさでもさ。
ユージが『付き合いたい』なんて言ったらどうしよう?!
ひなちゃん可愛いから、付き合いたくもなるよねえ。
ああ、どうしようどうしよう。
ユージの居ない生活なんて嫌だよお!
「断るに決まってるだろ」
「そうなんだ…ってええっ?!」
「だって、俺にはゆかりんが居るからさ」
「ユージ!」
ぎゅっ!
思わずユージに抱き着いてしまうボク。
「まだ恋人なんていらないよ。ゆかりんと一緒に居る方が楽しいからな」
むう、またそう言う微妙なことを言うー。
「はいはい、どうせ親友ですからね」
こうやって抱きついて胸を押し付けても、女の子として意識もしてくれないんだよね。
これでもBカップになったところなんだけどなあ。
「だからどうやって断ろうかと思って」
「普通に『恋人とか作るつもりはない』って言ったら?」
「そうだな。そうするよ」
あっさり解決したなあ。
まあ、ユージが取られなくて良かったけど。
翌日。
ばんっ!
「ゆかりん!ちゃんと断ってきたぞ!」
「いちいち報告しなくていいから!それとノックしてすぐに開けないで!」
着替え中だったらどうするんだよお。
「それと、これやるよ」
「制服?」
「ボタン全部ほしいんだろ?面倒だからそのまま持ってきたぞ」
「制服ごともらってもいいの?!」
「おう、いいぞ。でもクリーニング出してからのほうが良かったか?」
「ううん、そのままがいい!」
ユージの匂いが残ってる制服だあっ!
「じゃあな」
「え?もう帰るの?」
「親に頼まれてることがあってさ。じゃあな」
バタンと戸が閉まったとたんにボクはユージの制服を顔に押し付ける。
くんかくんかくんかくんか
「ああ、ユージのにおーい♡」
がちゃり
「やっぱり買い物手伝ってくれ!えっ?」
「あっ…」
ユージの制服に顔を押し付けているところを見られたあっ!
「たあっ!」
びたーん!と制服をベッドに叩きつける。
「えいっ!ユージのばかっ!いつもばかなことばかり言って世話を焼かせて!ボクがいないと本当にダメなんだからっ!」
バシバシと制服を叩いてから振り向く。
「あれ?ユージ、どうしたの?」
「すまん、ノックし忘れた」
「もう、今度から気をつけてよね」
「それよりも、俺の制服ってそんなふうに使うのか?」
「ま、まあね。ストレス発散的な?」
ここはそう言ってごまかすしかないよねっ!
お読みいただきありがとうございました!
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