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占いの館

 「ここってすっごく当たるって噂の占い師がいるんだってー。」

 次の町に到着した俺たちは町で有名な占い師の所に来ていた。シルビィは、まるで少女のように浮かれている。

 「女の子って占い好きだよな。何が楽しいか俺には分かんない。」

 「むっ!アーロイは女心がわかってないなぁー!占いって言うのは女の子の夢が詰まってるんだから。」

 ビシッと、人差し指を突き立てながらシルビィは、力説してくる。

 「例えるなら、剣士に刀!主婦にフライパンのような必需品!それを軽んじるなんて……」

 「あーーーっ!分かった!!分かったから!!」

 「分かれば宜しい!それに、今日は私の為じゃなくてアーロイの為に来たんだからね。」

 「へっ??」


 理由を聞いても『まーまー。』と、言うばかりでシルビィは答えてくれない。そうこうしている内に、白髪頭の80代くらいに見えるお婆さんの目の前に二人で座らされていた。佇まいから、この人が例の占い師なのだろう。

 「今日はどういったご用件ですか?」

 物腰の柔らかい落ち着いた声だった。そして、優しさのなかに力強さのようなものも感じる。一言一言を聞くたびに心が露にされている感覚に陥ってくる。

 「はい。今日は、彼について伺いたいです。職業適性を調べてもらえませんか?」

 「そーさね。占ってあげよう。」

 俺を置いてけぼりで話しは進んでいるが、シルビィは俺を気に掛けてここに連れてきてくれたらしい。スキルや才能を見つけられたら、俺に少しでも自信がもてると思ったのだろう。シルビィは、期待を抱いた目でこちらを見ている。

 でも……

 「(もし、自分に何もないって言われてしまったら…今度こそ……)」

 「さっ、手を出してごらん。」

 占い師のお婆さんの言われるままに手を差し出した。

 「うーん。これは珍しいね。」

 俺とシルビィは、固唾を飲んで次の言葉を期待する。

 「……これほど才能に恵まれないのも珍しい。これは、逆に才能かのぉ…。ほっほっほ。」

 目の前が真っ暗になった。少しくらい期待してしまったんだ。ニートだって、何も持ってないわけじゃないって。あまりにストレートな言葉に落胆し、顔もあげられない。

 「じゃが…お嬢さんの手も見せてもらえるかの?」

 俺とは違ってシルビィは、才能の塊だ。今さら見たって仕方ないじゃないか?!

 「これもまた珍しいね。」

 「…」

 「あんた達の縁は、かなりのものだよ。この時代だけじゃない。前世、はたまた来世までとどきそうな繋がりを感じるよ。」

 予想外のお婆さんの言葉にハッとしてしまうが、こちらの反応などお構いなしにお婆さんは話しを続けていく。

 「あんた達は出会うべくして出会ったんだよ。これまでもこれからも。末永くこの縁を育みなさい。」

 「!!お婆さん、ありがとうございました。アーロイ、聞いた?!私たちの出会いは運命だったって!そして、深い縁だって!キャー!!恥ずかしい。」

 シルビィは、見てて恥ずかしくなるほど浮かれている。最初の質問は眼中にない様子だ。

 「ごめんね、シルビィ…。俺、何の才能もなかった。」

 「そーだね、残念…。でも、才能やスキルってこれから作ってくもんだから気にしないでいいでしょ?」

 「えっ、う…うん。ありがとう。」

 シルビィは才能や能力を見てるんじゃない、俺自身を見てくれていたんだ。彼女の優しさを再認識できて、嬉しくて笑みがこぼれてしまう。


 「ほっほっ。仲がいいのぉ。……それはさておき、外が騒がしい気がするが…。」

 お婆さんの言葉で外の音に耳を傾けると、確かにざわざわと慌ただしい声が聞こえる。

 「たっ、大変だー!!魔王軍が、魔王軍が襲ってきた!!」

 聞こえてきた町の人の声に場が凍りついた。シルビィは、飛び上がるように立ち上がると外に駆け出した。

 「シルビィ!!」

 俺は彼女に続いて町の外に出た。

 町は逃げ惑う人々と、黒い甲冑を身に纏った魔王軍とでごった返していた。

 広場の方に目線を写すと、明らかに周りの一般兵と一線をかくした佇まいの男がいた。俺でも名前を知ってるくらいの有名な幹部クラス。

 「クラレイグ。」

 殺戮と略奪を繰り返す魔王軍の中でももっとも危ない奴だ。

 「クラレイグ様。首尾は良好ですね。」

 クラレイグの隣には見知った顔があった。

 「あれは信衛門…?なんで…?!」

 あの時、俺とシルビィを見捨てた信衛門があろうことか魔王軍と一緒にいた。驚きよりも俺の心は怒りに満ち溢れていた。

 俺は、ゆっくりと信衛門のもとに歩みを進めた。

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