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クエスト報酬

 クエストを終えヘトヘトになって町へ帰った俺たちだが、追い討ちのように落胆する出来事が待っていた。


 俺たちは真っ先にクエストカウンターに向かった。一言文句を言わないと気が済まない。

 「おー。あんた達、戻ってきたんですか?すまなかったね。クエスト主が報酬ケチるために、難易度を誤魔化してたみたいなんだ!あいつは、こっぴどく叱っときますからね!はいっ!ここは許してくださいな!」

 俺たちをみるなりクエストカウンターの店主は、平謝りをしてくる。ここまで腰を低くして謝られては文句も言えない。

 「いぇ、何とかなったんでいいですけど…。報酬は上乗せしてくださいね?」

 「はい!当然上乗せしてますよ。はい!!」

 報酬の上乗せは当然必須だ。疲労困憊で後ろでふわふわしているシルビィに変わってしっかりとした報酬交渉を俺がしなければ!!

 「報酬は、3倍で用意させてもらってますよ!はい!」

 3倍か…それなら妥当だろう。これ以上吹っ掛けるのも忍びない。

 「…」

 「…」

 なぜか、二人の間で無言が流れる。

 「??どうしたんですか?お客さん。」

 「?いや、どうしたって…報酬早く貰えますか?」

 「報酬ならもう信衛門さんに渡してますよ?」

 予想外の答えに一瞬目の前が眩んだ。

 詳しく話を聞くと、俺たちより先に来た信衛門の野郎がクエスト終了の報告をしに来たらしい。

 「拙者が居たからまだ良かったが、下手したら死者が出るでござるよ!」

 と、言う感じであたかも自分の武勇伝のように長々と信衛門は語っていたそうだ。

 「それでは、二人は先で待っておる。この報酬は、渡しておくぞ!さらばじゃ!」

 そして、クエストで疲れて動けない俺たちの変わりに報酬を受け取りに来たとか言う真っ赤な嘘で俺たちの金を奪った!?多分、俺たちはあの場で殺られていると確信しているから、バレないとでも思っていたんだろう。

 「あの野郎!あいつは、俺たちを見捨てたやつだ! 」

 俺は信衛門の行動の一部始終を話した。だが、帰ってきた答えは予想に反するものだった。

 「信衛門さんが?そんなバカなこと言っちゃいけないよ!新人さんを助けるのを生き甲斐にしてる人ですよ?!彼が新人ほったらかしで逃げるわけないですよ。はっはっは。」

 いくら説明しても店主は聞き入れてくれなかった。信衛門の自尊心向上のために新人が利用されていることは町の人には分かっていないらしい。町ごと騙しているぺてん師に俺の言葉なんか、暖簾に腕押しだ。

 「報酬はもう渡してるんです!あなたの妄言で追加で渡すなんて出来ませんよ!」

 俺がしつこく言ったせいか、店主の機嫌はかなり悪くなり口調も荒くなった。最後にはこっちを無視して別の人の対応を始めだした。

 シルビィに目をやると荷物の袋を背に座ってウトウトしている。

 「ごめんね、シルビィ…。報酬を信衛門に取られたみたいなんだ。」

 俺は深く落胆した口調でシルビィに事の次第を告げた。

 「えー、そーなのぉ…。」

 むにゃむにゃと、眠気眼でシルビィは答えた。

 「でも、まぁ仕方ないよー。次は気を付けよー!」

 「えっ、そんな軽くていいの?!シルビィは、悔しくないの?!」

 シルビィのあっけらかんとした態度に少しイライラしながら僕は答えた。一番辛いのは彼女だろうに、一緒に怒るだろうと思っていた僕は、彼女の態度と自分の想像とのギャップに不快感を覚えた。

 「報酬が取られたのは悔しいと思うけど、それ以上に今回嬉しかったことがあるから私はそれでいいんだ。」

 「えっ、何?」

 「アーロイが、私を助けてくれたこと!今まで私がピンチでも助けてくれる人いなかったしね。この助け合いって、パーティだな!って、思えたんだ!」

 そう言えばシルビィって、もといたパーティでメンバーから避けられたりしてたんだっけ…。もちろん戦闘中に補助とか援助もしてくれないよな…。

 「だから、アーロイが私を助けてくれて、パーティがやっと組めたんだ!って、自覚できた!これは、お金以上の報酬だよ?!」

 彼女の笑顔はとても眩しかった。

 天然でお人好しで、そして強いシルビィ。彼女との信頼が少し深まった気がする。信衛門のことはとても悔しいが、それ以上のものが手に入ったのかもしれないな。

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