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クエストへ(2/2)

 「シルビィー!!」

 俺の声は、彼女には全く届いていなかった。ワイバーンの群れに飛び込んだシルビィは、一匹に一匹確実に仕留めていく。

 「しかしこれは、多勢に無勢でござるな。数に圧倒されとる。」

 確かに今は優勢に立ち回っているが、このペースでいったら体力の限界が来たときが最後だ。

 「それなら、早く助けにいってくださいよ!信衛門さん!!」

 俺の叫びも虚しく、信衛門の足は全く動こうとしない。

 「俺にそんな実力あるわけないだろ!?俺はなぁ!新人相手に優越感に浸りたいだけなんだよ!初期クエストしか参加したことねーしな!こんな数のワイバーン相手に立ち回れるわけねーだろ?!」

 焦りのせいか、信衛門は聞いてもないことをぺらぺらとしゃべってくる。

 「新人相手なら、俺の見せかけだけの剣術も映えるってもんよ。右も左も分からんお子ちゃま達が俺の剣術を褒め称える。快感じゃないか!侍もしゃべり方もキャラ付けだよ!キャラ付け!変わってる方が印象付けやすいからな。」

 「そんな…。でも、このままだとシルビィが!!」

 「は?だから、あんな危険なとこいくわけねぇだろ。行きたきゃお前がいきな。」

 信衛門は、俺の肩を勢いよく押した。よろけた俺は地面に倒れ込んでしまう。

 「お前に助けられたら、の話だけどな。俺は人の実力を図るのは得意なんだ。はっきり言って一ミリも魅力を感じんなぁ…お前。」

 高笑いをしながら、信衛門は俺の前から離れていった。

 「そんなんじゃ、入ったとたんにお陀仏だろうな。そこで、お嬢ちゃんがやられるの見てな!」

 虚しさと憤りが俺の胸を支配していた。後ろからは剣戟が絶え間なく聞こえている。

 「さすがシルビィだな。もう半分近く減ってる。」

 だが、明らかに動きが鈍っているのは俺にも分かった。

 その時、シルビィの後ろから滑空して降りてくるワイバーンが見えた。だが、彼女は気付いていないようだ。

 「シルビィ!あぶない!!」

 俺は無我夢中で駆け出した。

 荒ぶるワイバーンを掻い潜り、シルビィの肩を掴み抱き寄せ、倒れ込む。

 「アーロイ?!」

 寸前のところでワイバーンの爪が目の前を通りすぎた。

 「ありがとう、アーロイ。」

 無我夢中だったが、今になって心臓がバクバクなってきた。俺は最高の作り笑顔で親指を立てる。

 「ふふっ。何だか凄い幸せな気分。よーし、サクッと終わらせちゃうね。」

 そう言うとシルビィは、呪文を詠唱し始めた。すると、俺たちの周りを疾風が円を作り竜巻となってワイバーンの群れに襲いかかる。風の刃が容赦なく襲いかかり、切り裂かれたワイバーンは地面へ叩きつけられていった。



 竜巻が収まるとワイバーンの死骸の真ん中に俺たちはいた。

 「ふー。疲れた…」

 そう言うと、シルビィは俺の方へ倒れ込んできた。

 「!シルビィ、大丈夫?!」

 「zzz。」

 シルビィからは、すやすやと安らかな寝息が聞こえる。多分、力の使いすぎで疲弊したんだろう。

 そっと彼女の頭を撫でた。

 「ん、、?…すぅ、」

 少し身じろぎをしたが直ぐに眠りにはいる。自然と笑みがこぼれてくる。戦闘が終わった静寂が漂うなか、俺はひとときの安らぎを感じていた。

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