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その刃の先

 俺は無我夢中で駆け出した。信衛門がシルビィに向かって歩いている。あの言葉から、間違いなくシルビィをやるつもりに違いない。

 「(間に合え!間に合え!!あの時だって出来たんだ。今度も、助ける!!)」

 気配を消している信衛門に、シルビィはもちろん、あのクラレイグでさえ気づいていない。シルビィを助けられるのは、今この場に俺しかいないのだ。

 信衛門にとっておあつらえ向きと言わんばかりに、激しさを増すばかりだった剣劇が止み、二人は距離をとり睨み合うかたちになった。

 「これは、チャーンス…で、ござるな。」

 ゆっくりと信衛門のナイフがシルビィの元へ近づいていく。

 あと3歩…

 あと2歩…

 あと1歩…

 「(終わりだ!)」

 信衛門の一撃がシルビィの背後をとらえ、その刃が振り下ろされた。俺は、間に合うかどうか…一か八か二人の間に飛び込んだ。シルビィの背中に抱きつく形になり、彼女の盾となった。

 「っ、!!」

 背中に鋭い痛みが走る。目をやらなくても分かった、信衛門の刃はシルビィではなく俺に刺さっていた。

 「アーロイ…??」

 「シルビィ…、良かった…」

 身体中に激痛が走る。これは、ナイフが刺さった痛みだけではない。信衛門が唱えていた呪文の効果であろう。

 「このガキ!!また邪魔しやがって!!」

 信衛門は後ろに飛び退いて距離をとった。

 「アーロイ!どうして…。血がっ…!止まらないよ!!」

 身体中の力が抜けていく。痛みで意識ももうろうとしてきた。

 「へっ、だがまあいいだろう。もうそいつは終わりだ。このナイフには流血と激痛の呪詛を込めてある。さぁ、痛みでショック死が先か出血死になるか…。へへっ、楽しみだなぁ!!」

 「信衛門…。」

 クラレイグが、信衛門の後ろに立っていた。刀は既に納められていた。先ほどまでビリビリ感じていた殺気も今は感じられない。

 「……。興が冷めた…撤収だ。」

 信衛門に何か言おうとしていたようだが、クラレイグは目を閉じると撤収を宣言してその場を立ち去った。信衛門もそれに続いてこの場を立ち去っていく。

 「アーロイ…、アーロイ…。いや、死んじゃ嫌!!」

 地面に力なく倒れた俺にシルビィは必死に俺に蘇生術と止血を試みているが、暖簾に腕押しだった。

 「アーロイ…、せっかく一人じゃないって思えたのに…なんで、私なんかのために…。」

 シルビィの涙が俺の頬を絶え間なく伝っていく。徐々に徐々に意識が遠のいていくのが分かった。シルビィの顔も霞んで見えてきた。交わせる言葉も最後だろう。俺は力を振り絞ってシルビィに語りかけた。

 「シルビィ、君のお陰でなんの取り柄もなかった俺でも、誰かに必要とされるんだって思えたんだ。才能とか能力とか関係ない、俺を俺のままで見てくれる、シルビィが好きだったよ。ありがとう…。」

 そう伝え終ると、世界は暗転した。

 これが、この世界での俺の人生の終り。

 何もなせていない、何も出来なかった人生だったけど…

 彼女と出会えて…

 彼女と過ごせた時間があるだけで、俺の人生は幸せだった。

 何にもない、何にも出来ない俺に愛することを教えてくれたシルビィ…。

 ありがとう。

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