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LとNの真ん中で

作者: すみいちろ

2週間ほど

家を留守にしていたら

愛してやまないその人が

いなくなってしまっていた


もう

帰ってこないだろう


勉強のため

異国へ

行っていたんだ


もっとも星を稼いだといわれる

その国へ


そしたら

ついつい

楽しくなって

時を忘れ

いつまでも

そこにいて

帰ることを

忘れてしまっていた


もう2週間以上

たっていた

家にもどると

愛してやまないその人が

さよならも言わず

いなくなっていた


置き手紙もなかった



思いあたる節はある



身勝手を笑って許してくれたこと



きっとそうじゃなかったのかもしれない

あるいはそうだったのかもしれない



思いもよらず

思いもよらないところで

思いがけず

想いがはじけて

彼女は

動いた




外は雨


車内で雨宿り


突然の豪雨


フロントガラスに

雨の幕が降りる


やがて激しさを増し

出鱈目に打ち付ける…




正しいことは

分からない

本当のことは

分からない



ただ

家の中を見渡すと

きちんと整理されていて

過去の

想い出とか

記憶とか

一切なかった



つながりを

全て捨てて



とんでもなく

客観的にみれてしまったのかもしれない彼女自身は

彼女自身を

捨てるべく

今一度

新たな一歩を

踏み出した




自惚れかもしれないが


いつまで

待っても帰らぬ人を

待つよりも

前へ進むために

全てを切り捨ててしまったほうが

楽だったのかもしれない…




雨があがった

急に湿度が上がる

ムッとする

暑い…

風が心地良い



チューハイの炭酸がはじけて

左目に入る

痛い…





いつからか?

最初から


裏切っていた

のかもしれない

そうかもしれない

そういうつもりはないのだが…



どうやら…


裏切ってばかり


自覚はないのだが


裏切ってばかり


人の心というものを

知らず


無意識に


踏みにじってばかり


無神経な男


だから

隣に

誰もいない


だから

相手にされない


誰からも…



カキミダス…



それが

本質なのか?



カキミダス…



白状すると

小心者で

小物



どうやら

それが

本質



この詩そのものが

思い上がり




カキミダシ…

カキミダサレル…




気を遣ったり

気を遣われるのが

嫌いな彼女



僕は

君との間を

いったり

きたり



気分は

Lowで

君は

Noで



L と N の間を

いったり

きたり…



L←→N




LとNの間に…



そんな

混沌とした気持ちの

すべてを包含した真ん中に

君がいる…



君は?



ここに

いない





キラキラとキラめくのを

ユラユラとユラめくのを

想い出す…




ミックス味の

ソフトクリームみたいに

ムニムニと

まじりあって

からみあって

ゆっくりと

いつまでも

生まれてくる…



おいしくて

やわらかい

あまい

舌触り

だけど

ヒンヤリして

口の中で

溶けていく…



君は

消えてしまった



暑い夏の夜に

消えてしまった…



ひとすじの

流れ星のように



想い出だけ残して…





今夜も雨が降る


星はみえない


雨の音と

蛙の鳴き声




こんな深夜に

君の声



きいたことのない

君の声



もしも…

もしもが

もしもなら…



つながる

つながる

つながる…



ルルルルル

ルルルルルル…




暗闇にて

君をみる


ここに、いない、君をみる


どうやら

静かに

ねむっているらしい…



鏡の中の静寂は

けっして

破られることのない約束



帰ってくるはずのない君を

今度は

僕が

待つ番だ



何もしない


何もしないけど


まってるよ


たぶん


このまま


永遠に


帰ってこないと


信じている


LとNの真ん中にいる君を


























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― 新着の感想 ―
[良い点] ちょっと、泣けてきてしました。 今、物凄く、この詩が染み入ります。
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