結論は出なかった
「どういうこと?」
「あの……あなたは意識がなかったからわからないかもだけど、私たちを移動させたのはレンなの。リゾはレンを守ることしか眼中になかったように思う」
キョウは神妙な顔になる。
今にして思えば、病気のレンのためにリゾは……
結局、水晶つきの剣をどうするか、その結論は出なかった。
* * *
ようやく動けるようになったリゾは服を着て、大根スムージーを飲んだ。
「よく飲めるわね」
まるでジュースでも飲むかのように飲み干すリゾをカーラは奇妙なものでも見るかのように見ていた。
だが、リゾは答えず、しばらく座ったまま考え込んでいた。
ふと思い出す。
立ち上がり、家を出た。
そして、隣のレンの家へ。
そこにそれはあった。
それは対になった水晶の片方。同じ水晶がキョウの家にあるはずだ。
自分がファウ誘拐の際に仕掛けた分は回収していたが、レンが細工した分を回収し損なっていた。
この水晶を使って、ファウは結界を通り抜けて来たのだろう。
このカラクリには気づくまいと思っていた。
「……なんか嬉しそうね」
カーラはリゾの顔を覗き込んでいた。
確かにリゾは嬉しかった。
ファウのことは強いだけの女だと思っていたが、このカラクリに気づくとはなかなか洞察力がある。
「安心した」
カーラは笑みを浮かべていた。
「あなたってどっかに感情を落としちゃったと思い込んでたから」
「でも大変ね。その水晶、回収しに行かなきゃいけないんでしょ?」
と、カーラは言う。
この水晶のあるところへ瞬間移動できるが、持ったまま瞬間移動はできない。
歩くなりして取りに行かなければいけないのだ。
「まあ、大丈夫だろう。向こうもこっちが水晶に気づいたことに気づいただろうし、向こうで処分するだろう」
「そうかしら?」
「処分しなかったにしろ、悪用するようなこともないだろう」