昔の恋人
「ここにいるのは辞めた。しばらくレンの家にいるから」
「あぁ」
リゾは納得した。
レンの家は、元々はレンとカーラが同居してた家だから、それが当然の流れかと思う。
「私が帰ってることは内緒にしてくれる?」
と、カーラは言う。
「俺が内緒にしたとして、すぐにバレるぞ」
「その前に出ていくわ」
「まだカースと揉めてるのか」
呆れ気味にリゾが尋ねる。
「まだ? カースにとっては恋人を寝取った女だもの。死んでも許さないでしょう」
「そうか」
リゾは落ち込んだような顔になる。
「あなたからすれば親代わりの尊敬すべき男でもね、私とカースはたぶん和解できないわ」
「……実の双子なのにな」
そうなのだ。カースとカーラは双子だった。
当人同士が和解できないのなら、リゾが口を出す問題ではないのだろう。
リゾは昔のことを思い出す。
かつてはレンとカースが付き合っていた。それをカースの双子の姉でもあるカーラがレンを略奪したわけだが、結局、カーラもレンと別れルウの地を離れた。
「レンが死んじゃうのなら、そばにいればよかった」
* * *
キョウは自分が環境維持ロボを操っていたことを話した。
一応は秘密ということも念押しして。
ファウは驚いていたようだ。そして安心したようでもあった。
「実は……、あなたの家に向かってる環境維持ロボがいたから、また悪さするんじゃないかって思って」
それでか、とキョウは納得した。
それで、あんなにファウは慌てた様子だったのだ。
「勝手に入ってごめんなさい」
ファウは頭を下げる。
いくら合鍵をもらったとはいえ、勝手に入るのはルール違反だと思ったのだ。
「いいよ。非常事態だと思ってのことだし」
本当はいつでも大歓迎…‥なんて言ったらそれはそれで大問題なのかも、なんてキョウは思った。
* * *
「私と別れてからは、レンはどんな感じだったの?」
と、カーラはリゾに尋ねた。
「レン様は……、病気になって少しずつおかしくなって、はじめのうちはキョウ・テセティアに恋をしていたように思う」