こういうことなんだ
今度はキョウが慌てる。
キョウはファウがいた辺りの壁を確認する。
そこは武器が飾ってある、いつもと何ら変哲のない壁だった。
――ファウはいったいどこに行ってしまったのだろう?
キョウはなすすべなく、ファウが消えた辺りをウロウロしていた。
* * *
十分ほどでファウは戻って来た。
ファウはキョウの名前を呼び、今にも泣き出しそうな顔でキョウの体を抱きしめた。
「……心配かけて、ごめん」
キョウは自分の体に戻っていた。
「説明するから」
キョウは立ち上がり、外に出ようとした環境維持ロボを持ち上げる。
環境維持ロボを抱いたまま椅子に座る。
「こういうことなんだ」
キョウは目を開いたまま硬直したように動かなくなる。
と同時に環境維持ロボの水晶が光り、動き出した。
環境維持ロボはキョウの腕から離れ、床の上に降りる。ファウの周りを回って、キョウの元へ。
ロボの水晶の光が消え、今度はキョウが目を開けた。
「つまり、このロボはあなたなの?」
ファウの問いにキョウは頷いた。
* * *
「しばらく、ここにいるから」
とカーラは言う。
「ここに?」
リゾは怪訝な顔をする。
ここはリゾの家で、カーラを招き入れた覚えはないのだ。
そんなリゾの思いに気づいてか気づかずか、カーラが勝手知ったる他人の家とばかりに冷蔵庫を開けた。
ジュースを見つけ、それをコップに入れて飲み始める。
「あなたも飲む?」
「あ、あぁ」
リゾは頷く。
カーラはリゾにコップを差し出すが、リゾはまだ動けなかった。
カーラはリゾの分はテーブルに置いたまま、自分のジュースを飲む。
びっくりするくらいまずかった。
「……何、これ?」
「大根スムージー」
「はあ!?」
「最近、流行ってるらしい」
「えぇ?」
「豊作だったそうでお供えされてたらしい。ロイからお裾分けをもらった」
「まあ」
カーラは残りの大根スムージーも飲んだ。
落ち着いて味わうと、それは大根おろしだった。