水が怖い
* * *
キョウは、今日もまた環境維持ロボを操っていた。
人間の体では出来ないこと、水の中を進むのはやはり快適だった。はずなのに……。
泉に入ろうとすると、体がすくんだ。
怖いのだ。
溺れた経験をしたからだろうか?
前にリゾの家のそばの泉には難なく入れたのに。
キョウはなんとか泉に入ろうと思い、奮闘してみるのだが、入れなかった。
そこでふとリゾの家のそばの泉に入ってみようと思った。距離的にはそんなに遠くないし。
キョウは後ろに人の気配を感じていた。
ルウ族の誰かだろうとあまり気にはしてなかったが、後ろの人物がキョウを追い越した。
ファウだった。
ファウはキョウの家に向かっているようだ。
――なんか用かな?
キョウはファウの後をついていく。
ファウはキョウの家に着くと、ドアをノックした。
やっぱり自分に用事があったんだな、とキョウは自分の体に戻ろうとした。
自分の体に戻って中から鍵を開けようと思ったのだが。
だが、ファウは何だか慌てた様子で、合鍵で中に入る。
合鍵は以前渡したものだった。
――何か非常事態かな?
キョウは、ロボの体のまま、ファウの後ろ姿ごしに中の様子を覗う。
本当は自分の家だしそのまま入ってもよさそうなものだが、前にファウに家の中に環境維持ロボを入れないでと言われていたのだ。
ロボの体で中に入るのはためらわれた。
だがそうも言ってられない状況になった。
ファウが悲鳴のような声で、自分を呼んでいたのだ。
焦ったキョウが中に入るとなかなか怖い光景があった。
椅子に座って微動だにせず目を見開いたままの自分と、その体を揺さぶりながらキョウの名前を呼ぶファウの姿があった。
この時、キョウはロボを操ってる状態の自分をはじめて見たのだ。
瞬きもせず微動だにしない姿はなかなか気味の悪いものだった。
これではファウが慌てるのも無理はない。
キョウは自分の体に戻ろうと思ったのだが、そこでファウは予想外の行動に出た。
キョウの家に壁に向かって何かをし始めた。すると、ファウの姿は消えてしまった。