熱中症
ダーリャはファウの従弟に当たる。三番隊隊長であるがまだ若いのだ。クスナには若干保護者のような思いがあった。
そこへ丁度、長老が通りかかった。
「おや、導師様、どうされました?」
「ダーリャ殿が倒れてしまいまして」
「おやおや、これは熱中症ですね」
長老が倒れてるダーリャの顔を覗き込んでそんなこと言った。
「熱中症?」
さっきまで元気だったのに、とクスナは思った。
「熱中症は前触れなく急に来るのが怖いんですよ」
「そうですね」
という長老の言葉にクスナはすんなり納得する。
「ここからだと帰るよりうちの方が近い。うちへ運びましょう」
「え…‥えぇ」
クスナが答え終わる前に、長老と一緒にいた兵士二人がダーリャを抱え歩き始めた。
クスナは急いで簡易の祭壇を折り畳み、後について行く。
長老がにやりと笑っていたことに、クスナは気づかなかった。
* * *
「ダーリャ殿は体温も高くないし、まあじきに目が醒めるでしょう」
長老の説明に、クスナは安堵していた。
クスナは屋敷の奥の方の客間へと案内されていた。
「導師様も脱水症状になりかけてるかもしれません。水を飲んで」
ソファに座り、クスナは水を飲んでいた。
向い側に一人掛けのソファがあり、そこに長老は座っている。
「で、話というのは?」
クスナが聞く。内密にしてほしい話があるというので、この客室に通されたのだが……
「あの時、ケイ様と何があったのか話してほしい」
と長老は言った。
クスナがケイの怪我を治してから、一か月ほど経過しいた。
クスナとしてはあまり思い出したくないことでもあった。
「あれから、ケイ様は謁見に来なくなりまして」
長老は定期的に神殿に謁見に赴き、最高位の方針などを聞くそうだが。
「体調とか心配で」
それを聞いて、クスナも心配になる。
かなり強い呪いと毒の怪我だった。
毒を吸い出し呪いを浄化させたが、あれで完璧に怪我が治せたのかどうかクスナとしても不安が残っていた――
なのでそれを説明した。ケイに襲われかけたことはもちろん伏せて。
すると、長老は見る見る怒りの表情になった。




