鈍色の瞳
剣は蜘蛛の体を押しつぶすように地面に刺さる。
蜘蛛は機械だった。機械の部品が周囲に飛び散る。
蜘蛛は足をばたばたさせていたが動かなくなった。
「まったく、虫苦手なのに」
ワイヤを操っていたのは女だった。
黒髪の妖艶な女だ。
女は蜘蛛に絡みついたワイヤを手元に引き戻し、腰のベルトに固定した。
「近頃じゃ、ムシ型の機械なんかも襲い掛かってくるのね、嫌になっちゃう」
「嫌になっちゃうって言う割に楽勝で倒したじゃん」
と答えたのは、キョウを抱き上げている人物。
今のキョウは環境維持ロボになっていた。
「あら? そのロボ、あなたじゃなかったの? あなたが食べられそうになってると思って助けたのに」
女は意外そうに肩をすくめた。
「……だよな? ロボの時って区別つかないよな。この前、ケイとカースを間違えて文句言われた。あいつらロボの時は水晶の色が同じだし区別つくかっての」
「カース……」
黒髪の女は苦々しい表情になる。
「俺が誰かわかるか?」
その人物は、キョウを地面に下ろす。
キョウは頷いた。
――グレス?
男は嬉しそうに頷いた。
「さすが!」
キョウは人間の姿のグレスを初めて見たわけだが、なんとなくわかった。
なんとなくというか、ロボであるキョウにこんな親し気に話しかけてくる人物は他に心当たりがないというのもある。
グレスは鈍色の髪と瞳をしていた。小麦色の肌の健康そうな青年。
外見よりも、キョウはグレスの剣が気になった。
グレスは自分の背丈より大きな剣を楽々操っている。切れ味はさほどよくなさそう。重量で獲物を叩き潰すようにして戦っているようだ。
「こっちはお前さんの人間の姿を見たことあるけどな。こっちが見せるのは初めてだな。よくここにたどり着けたな」
キョウは辺りを見回す。ここはルウの地の外れだった。
環境維持ロボを操りながらルウの地の外周を走っていたら、蜘蛛型アンドロイドに遭遇してしまったのだ。




