笑う長老
「初めまして。俺はカース」
髪をぐしゃぐしゃさせながら、男は名乗る。
本来の髪型に戻したようだ。
「侵入者め、どこから入った!」
「……落ち着いて、長老。最高位相手に長老が怒ってどうするんです?」
最高位と言う言葉を聞いて、長老の動きが止まる。
「最高位? この者が?」
「そうでしょう?」
と、クスナはカースに聞いた。
「そうだ」
カースは面倒そうに答えた。そしてこう続けた。
「おい、ケイ。後は知らねーぞ」
それを聞いて、女神像の後ろからケイが出てきた。
気配を消していたようだ。
「ケイ様、これは何のご冗談で?」
長老は恭しくケイに近づく。どこか白々しい。
「冗談? 君こそ本気? 本当にカースくんと僕の見分けがつかなかったの?」
ケイは怒ってるようだ。
長老はしどろもどろだ。
クスナは、ケイから陰りのようなものを感じていた。
怪我?
なんてレベルではなく、大怪我? それも衰弱するくらいのかなりの重傷……?
じっとケイを観察して、そしてわかった。
呪術のようなものが、ケイから体力を奪っている……
それはどうやら腰あたりから。
「ちょっと! 怪我見せて!」
クスナは何やら小声でぼそぼそ言い訳する長老を押しやり、ケイに詰め寄る。
「怪我?」
と聞く長老がなぜかにやりとした。
「そう。怪我してるでしょう。とにかく見せて」
説明しながらも、クスナはにやにやする長老が不思議だった。
カースとケイの区別もつかなければ、ケイの怪我にも気づいてない? クスナはいまだに頭の中が「?」だらけだ。
「ほう?」
ケイは満足げに微笑む。
「僕の怪我も見抜くなんて流石だね」
その言葉を聞いても長老はニヤついたまま。
クスナは、長老がケイの怪我を軽いものだと思ってると思い込んだ。
「そんな余裕出してる場合じゃないでしょう。早く怪我を見せ……」
ケイはクスナの肩に手を置く。そして背中に反対の手を回した。
つまり、ケイはクスナを抱きしめる姿勢になる、
そこで二人の姿は消えた。
長老はぎょっとし、ぽかんとなった。
カースは平然としていた。
「ふうん、あっちの魔導師を選んだわけだ」




