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月色の砂漠~長老の野望~  作者: チク


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長老が変

 一緒に来た長老が気のせいか睨みつけてくる。

 最高位のケイに指名されたことが、長老としては面白くないのだろう。


 以前来た時は、水脈と同時にある魔脈にあたって具合が悪くなってしまったが、今回は前回ほど酷くはならなかった。

 まあこの地に住んでて慣れてきたのだろう。



 初めて見る神殿の中、クスナは感動した。

 天井はドーム型で、夜の星空そのものだった。

 がらんと広い神殿の中央には女神ルウの像がある。

 そのルウの頭上の天井に満月が描かれ、その一直線上にだんだん細くなる月が並んでいる。



 女神像の前にドクロの仮面の男が立っていた。

 長老とクスナは前へと歩み寄る。


「会いたかったよ、クスナ君」

 ドクロの仮面の男が言う。


「初めまして」

 クスナは様子を覗うように辺りを見回す。

「ケイ様は? ケイ様の指名と聞いて来たのですが? ケイ様はいないんですか?」



 それを聞いて長老が笑い出した。

「クスナ殿、仮面で顔を隠してるからといって目の前のケイ様がわからないなんて……」


 それを聞いて、クスナはぽかんとする。

 目の前の仮面の男、背丈はケイと同じくらい、髪型も同じ。

 クスナはじっと男を見る。

 魔力の強さからして最高位であることには間違いないだろうが、やはりケイではない。



「長老、何を言ってるんです?」

 クスナは長老が冗談でも言ってるのかと思った。


 声高らかに笑う長老。

「ケイ様に指名されたってのに、ケイ様がわからないなんて」


 長老は愉快そうだ。

「ケイ様、この魔導師を一目置いてるようですが、こんな見る目のない……」



 その時、目の前の男がドクロの仮面を取った。

 その顔はケイではなかった。

 長老が呆気に取られたような顔をし、激高する。


「何者だ! 貴様! ケイ様はどうした?」

 長老が目の前の男につかみかかりそうな勢いなので、クスナは止めた。


 止めながらも、クスナは頭の中が「?」だらけだった。

 外から来たクスナが最高位かわからずつかみかかりそれを長老が止めることはあっても、さすがにその逆はないんじゃないかと思ったからだ。

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