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4、キャラメイク

「これで設定は終了に……、おや、お客様はリアルリンクシステムに接続されていますね」

「ん? はい」


 そういえば普通のVRと特に変わらなかったため、違和感がなくて自分でも忘れていた。


「リアルリンクシステムにした場合の当ゲームの挙動について説明をさせていただきます。設定をオンにしてよろしいでしょうか?」


 ハイと返答すると、妖精が椅子を作ってくれ、座るように指示される。

 素直に座ると、「フォン」と軽い音とともに目の前にランドルト環状の手すりが出現した。リンクリングと呼称されていたように思う。円の開いている部分には椅子が嵌まっており、自分はそこに座っている。現実世界の開始時と同じだな。銀色の手すり(リンクリング)は触ってみた感覚もリアルと同様だ。


「立ち上がって歩いてみてください」


 リンクリングを手すりのように掴み、立ち上がると、自分の腰の周りに浮遊した銀のフラフープを付けたようになる。これは家のリビング(VR)で何度もやっているので違和感はない。


 これこそ寝たきり防止対策の秘策、リアルリンクVR対応の最新ギアの機能である。簡単かつ具体的に言えば円形のランニングマシーンのようなものとVRシステムがリンクしており、ゲーム内の動きに現実の自分の身体がリンクして動く結構お高い高級マシンであった。


 実は一昔前、ARからVR実用化までの過渡期に似たようなものが開発されていた。しかしそれとは別物と言っていいだろう。当時は技術の壁が多く立ちはだかり、おもちゃとしての能力すら危うかったと聞く。特に大きいのは電気信号情報の身体とギアへの分配とゲーム独特な不自然な動きを現実身体でも実施可能な動きに変換する技術で……。

 サクサクと部屋を歩き回る。


「この、リアルリンクでVR空間に接続している状態を、通常のVRモードと識別するため「リアルVRモード」または「RVRモード」と呼んでおります。……後ろを振り向いてください」


 いつの間にか椅子が消えていた。ここはリビングと違う点だな。リビングだと戻ってきて再び座る前提のため、ソファという家具のまま残っている。


「一定距離移動すると椅子は自動的に消えますが、立った状態でしばらく動かないと再び現れます。なお、椅子が消えている時は、動きを阻害しないよう、本体に収納されておりますので、椅子の無い状態で座ろうとしないでください」


 あぶねぇ。あるはずなどと言って座ろうとして、こける自分が見えた。


「なお、椅子の出現までの時間は別途設定が可能です。初期設定では15秒になっております。また、デザインはそのマップに相応しいものに自動調整されるほか、特定の場所では好きなデザインに設定することも可能です」

「特定の場所というのは、所謂プレイヤーホームとかかな?」

「明言は避けますが、そのようなものと考えてくださって結構です」


 椅子が現れたので座ってみる。


「このように座った場合、現実でも着席しています。着席時には『リアルリンクオフ』及び『A

Rモード』のメニューがアクティブになります」

「リアルリンクのオフ、というのは、R《リアル》VRモードを終了して通常のVRモードにするってこと?」

「その通りです。なお、リアルリンクのオフは安全のため着席状態からリクライニングに移行した後にのみ可能となっております」


 早速椅子をリクライニングしてみる。メニューからでもできるようだが新幹線や飛行機の座席のようなレバーが手に触れる。変なところで凝っているな。


「リアルリンクシステム本体の構造上、リクライニング状態での長時間のVRモード活動は推奨いたしません。長時間VRモードで活動する場合はベッド等安静にできる環境に移動していただくようお願いいたします。これは『IN the GRIMOIRE ONLINE』に限らず、リアルリンクシステムを使用した場合のVRアプリ全般における注意事項となります」


 そりゃそうだろうな。本体に連動して椅子になる段差と背もたれはあくまでも簡易的なものだった。ずっとあの姿勢じゃ身体がガッチガチになるだろうし下手に身じろぎして落下とか、老人には生死にかかわる問題だ。


「また、疲労を感じたらすぐに座る、またはベッドに移動しVRに切り替えるなど、本当の身体を使用していることをお忘れにならないよう、お気を付けください。特に『IN the GRIMOIRE ONLINE』ではレベルアップに伴いステータスが上昇いたします。現実での無難な動きがゲーム内は大変アクロバットな動きになります。状況によっては動きに戸惑われるかもしれません」


 なるほどなぁ。リアルリンクでのVRは、何かよほどの緊急事態でもない限り使用しなさそうだな。


「ARモードですが、こちらは急なトイレ休憩などにご活用ください」


 あー、あー、あー。老人のリハビリ向け商品だもんな!


「ARモード時のアバターですが、基本的にオブジェクト化し、外部からの干渉を受けない状態になります」

「外部からの干渉?」

「わかりやすく言いますと、モンスターから襲われず、攻撃等の効果範囲内にいてもその効果を受けない、半透明のアバターが立っている状態になります。これと似たようなシステムはVRモードにもあります。違いは、RVRモードでは戦闘時も緊急扱いでARモードに移行できるところ、VRモードでは、非戦闘中のみという点でしょうか。このシステムの悪用を防ぐため、連続使用した場合は体調不良と見なし、15分間ゲーム内への復帰ができません」


 妥当な処理だろうな。それでも1回ならば緊急避難に使えてしまうわけだが。


「ただし、例外もございます。特定のマップ……例えばボスとの戦闘エリアなどですね。このような場所でARモードに切り替えた場合、まったく動けず無条件でダメージを受けることになります。ボス戦前にはトイレ休憩を取ることをお勧めいたします」


 発売されたばかりだが、リアルリンクシステム、結構考えて設計されているようだ。


「ここまでで何か質問はございますか?」

「今のところ無い、かな」

「何かありましたらいつでもGM連絡いただきますよう、よろしくお願いいたします。また、お客様はリアルリンクシステムのモニターでもありますので、不具合の発見や気が付いたことなど、ぜひ、積極的にお知らせ下さい」

「最後に、リアルリンクシステムのお客様は、他の方と比較し操作性が悪いと予想されます。その補完とモニター特典の意味を込め特別な称号を付与しますので、是非お使いください」


 こんどこそ準備は終了らしい。ワクワクしてきた。


「ゆえち様、『フォレストジェイド』で開始、アバター及びステータスはこちら、現在の設定で間違いございませんか?」


 こくり、と頷く。


「それでは、行ってらっしゃいませ!」


 ゆえちは、転移門と説明された境界が揺らめく門に身体を躍らせた。

文字数、悩みますね。

予約投稿で5話までは1時間おきに更新予定なのですが、並べてみたら文字数の隔たりがひどい。

何文字くらいが読みやすいのかな。ひとまず3000文字前後で様子を見る予定。

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