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2、プロローグ・老夫婦の日常

 朝起きると、パーソナルギアをかける。一般にはただ単に『ギア』と呼ばれ、各メーカーから様々なものが販売されている。今彼がかけたものは、最新式のものの中ではやや大きめ、全体としてはさほど大きくないものであった。

 ちょっとオプションのついた眼鏡と思えば大体合っているだろう。

 ちょっと一般的ではないのが、彼のつけているギアが先日発売したばかりのモデルで、とある特殊な機能を使用することができることだろうか。


「おはよ……」

「おはよー」


 なお、彼の配偶者も同じものを着用している。色違いである。


「ゴハンたべよ、ごはん。フレンチトースト作ったから食べようよ。コーヒーにする? カフェオレにする?」

「カフェオレ」

「今日のAR(はいけい)は、久しぶりに『森』~」

「あ、ギアつけるの忘れてた」


 身に着けたギアのARをONにしたとたん、リビングが木漏れ日あふれるさわやかな森に変貌した。

 テーブルに載った朝食がおいしそうに湯気を立てている。これは本物だ。視界の片隅にあるウィンドウが、適当なニュースを邪魔にならない程度に表示しており、この景色がARであることを僅かながら主張している。

 今やVRデバイスは生活に無くてはならないものである。昔はパソコンが主流だったように、今はその立ち位置にAR・VR用の『ギア』が取って代わっている。移動用デバイスとしては、未だスマートフォンが利用されているが、ギアの小型化に伴い淘汰されつつある。


「楽しみだね」

「だな」


 何がこの夫婦の楽しみなのか。


「ジョブ決めた?」

「実はまだ迷ってる」


 VRMMOゲームである。


「めっちゃ合成したいし、作りたいし」

「生産職系で悩んでたの? 今回は特攻魔術師じゃないんだ」


 彼には脳筋魔術師だった過去がある。


「むー! 反省したからその次は剣士にしたじゃん」

「ふふ、ふ」


 奥方であるところのご婦人は笑う。こちらは慎重派でレアアイテム目的のスローターが割と好きだ。


「なお、剣士終了時、次はアサシン系やってみようと思ってた」


 ほむほむ、と頷きながら奥方はフレンチトーストを頬張っている。どうやらちゃんと聞いていない。


「つまり、まだ、アサシン系したい気持ちも強い」

「へー?」


 どうやらちゃんと聞いていない。


「え……って、何十年越し?!」


 何ヶ月、とか何年、ではない。何十年?

 この夫婦、先日めでたく、二人とも仕事を引退し、自由な老後が始まったところである。

 小学生時代に家庭用ゲーム機がとある花札会社から発売され、それ以来二人ともそこそこ嗜む程度にはゲーマーであった。趣味も合い、結婚してからも最新のゲーム機がいつの間にかリビングに増える、そんな日々を送っていた。

 しかしながら、その日々も長くは続かなかった。つまり、当然やってくる子育て期間である。

 がっつりゲームする余裕などあるはずもない。子供のゲームのレベル上げを、イヤイヤな振りをしつつ嬉々として通勤電車の中でしたり、ブラウザゲームやスマホゲームに手を出したりはしていたが。


 そんなこんなで子供も結婚して、押し付けられがちな孫の世話もひと段落して、やっと悠々自適な日々が始まったのである。

 二人は年甲斐もなくワクワクした。

 何しよう、となった。

 ……ものの、二人の意見は実にあっさり一致した。

 二人は老後を、VRゲームで遊び倒すことに決めたのだった。

「たださぁ、VRって寝たきり状態になるわけでしょ? リアル寝たきりになったらヤバくない?」

 ふたりは真剣に調べた。そして、先ほど述べたような最新式のVRギアを入手したのである。



        ・・・



「んじゃ、サーバーは何もなければ第8で、最初の街は森でいいんだよね?」


 会話はVRリビングのソファでなされている。


「うん森。『フォレストジェイド』だよね。まぁサーバーは後でも手続きすれば変更可能だし大丈夫でしょ。キャラクリエイト終わったらどこで合流する?」

「キャラクリの後チュートリアルあるかもしれないからブラブラしてたらいいんじゃない? 時間差あったら待ってるのも暇だし。インしたらフレメで連絡すればいいよ」 


 ゲームタイトルは『IN the GRIMOIRE ONLINE』。グリモアオンラインと呼ぶ人が多い。割とありきたりな設定のファンタジー系VRMMORPGである。魔術書グリモア世界に入り込んでプレイヤーが物語を紡ぐ、という設定で、あえて特筆すべきシステムを挙げるなら、発生する特殊クエストの多くが過去に飛ばされることだろう。過去の物語を書き換えることで、様々な影響が発生する、らしい。

 二人は消去法でこのタイトルを選んだのだが、割と当たりだったといえるだろう。

 サービス開始から6ヶ月経過しているが、人気は上昇の一過をたどる。


「よっしゃいくか」


 二人は準備をすると、目の前のウィンドウから、『IN the GRIMOIRE ONLINE』開始をタップした。

 その姿は、すぐにリビングから光となって消えた。

読んでくださってありがとうございます。

練習中のため、不備など多くあるかと思います。徐々に改善したいと思っております。


執筆中の管理みんなどうやってるんだろう。。

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