17/122
17
「気かつきましたか?」
鼻をくすぐるような、花を思わせる良い香りとともに、若い女性の声が聞こえた。
だが、まるで自分の体とは思えない位の重さと体中の痛みで、フレアは動くことができない。
「無理をしなくとも良いのです。もう少しすれば動けるでしょう。それまではこのまま動かずに」
体の傷がなでられる感触があって、その後に熱くなる感覚がずっと続いている。
でも、心地よい。
きっと回復魔法なのだろう。
ただ、フレアが知っている魔法とは、少し違う感じがする。
普通、回復魔法というのは、肉体の回復力のサイクルを上げ、生命力を回復する魔法だ。
例えるなら指を刃物で切った場合、出血は止まるが、傷口はかなりの期間残ってしまうのと同じようなものだ。
かなりの時間熱くなる感覚は、よほど高度な回復魔法なのだろう。
回復が終わったら、きっと傷跡も残らないだろう。
こんな事ができるのは、誰なんだろうと、思いながら、フレアがゆっくりと目を開けると、
「反対から見られるのは、恥ずかしいですね」
若い女性は目を合わせて、にっこり笑った。




