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これが死というものか。
何とも言えない、なにもかも包まれるような感覚に、フレアは心地よさを感じた。
フレアは疲れていた。
いくつもの試練を乗り越え、くじけそうな自分を鼓舞して、自分の限界を超える旅を続けてきた。
だか今回は、もう自分は精一杯やったじゃないか、もういいじゃないかという気持ちが湧いてくる。
ズキン
強烈な痛みが胸に突き刺さる。
ズキン
痛みとともに、やわらかな、まぶしい光が胸の奥からあふれ出す。
フレアがくじけそうなとき、いつも聞こえるあの声がする。
あきらめるな。
そう叫んでいるかのように『それ』は激しく動き、フレアを光りが包みこみ輝いた。
『勇者の紋章』
それが『それ』の名だった。
まだ死ねない、まだやることがある。
そう思ったとき、身体中に強烈な痛みが走り、フレアは目を覚ました。




