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自作小説倶楽部 第16冊/2018年上半期(第91-96集)  作者: 自作小説倶楽部
第91集(2018年1月)/「富士」&「追憶」
5/34

04 E.Grey 著  追憶 『黒谷御前6 公設秘書・少佐』

   //粗筋//

.

 衆議院議員島本代議士の公設秘書佐伯祐は、長野県にある選挙地盤を固めるため、定期的に彼の地の選挙対策事務所を訪れる。そして、空き時間をみては、遠距離恋愛をしている婚約者・三輪明菜とデートを楽しむのだった。今回の長野入りは、センセイの縁者である黒谷夏帆が、愛車スバル360に佐伯を乗せての登場だ。幼馴染の不穏な動きに明菜は心穏やかではない。夏帆の祖父は黒谷御前といい、地域では有数の資産家だ。その黒谷御前が何者かに命を狙われているという。センセイの命もあり、佐伯は、夏帆の運転で、明菜とともに御前の屋敷へとむかった。その晩、御前は、時限式で放たれる吹き矢によって殺害された。

挿絵(By みてみん)

作品:Ⓒ工藤隆蔵さん「カメラ、写真、撮影」

モデル:五十嵐優美さん 

素材元:足成



    06 追憶

.

 雌の黒猫タマは、いったい、いくつになるのだろう。昔、私・明菜が、この屋敷に遊びに来たときも、タマはいた。自発的に遊びに来たというわけではない。小学校のとき、たまたま、同じクラスの子だった、夏帆に無理強いさせられる形で、二、三度来ただけのことだった。

 黒谷御前の屋敷は、川の流れが船のような形に、岩塊を削り取って島になっている。頂にある敷地から、断崖を削った階段をつかって、河原に降りることができた。

 するとだ。夏帆の叔母にあたる、朝比と夕比の姉妹が、キャッキャと騒いでいた。

「この子、おまぬけよね」

 何がおまぬけだというのだろう。姉妹の足元を覗いてみると、無残に腹を引き裂かれたウシガエルがいた。――いわゆる、カエルの解剖――吐き気がしてきた。

 夏帆はというと、苦笑して、「まさかオヤツ?」と叔母たちに聞くと、「それもいいわね。あなたには脚をやるわよ」と言い返してきた。

 私は、夏帆の手を引っ張って、今降りてきた階段を引き返した。

 それでようやく、庭に戻り、肩で息をしていたとき、二階欄干の向こう側で、半ば裸になった大人二人が、激しく攻めあっているのがみえた。あのエロ爺・黒谷御前は、そのころから今に至るまで、変態だった。黒谷家の家政婦・菊乃さんを欄干に押し付ける格好で腰を振っているではないか。そのとき、爺様と私の目があった。――何をされるか分かったものではない。私が、キャアと悲鳴を上げ、逃げ出したのは言うまでもないことだ。

 門から、向こう岸に架けてある橋を渡り、一気に駆け抜ける。

 すれ違った番頭さんが、追いかけてきた夏帆をつかまえ、わけを尋ねていた様子だが、夏帆は慣れた感じで、「あれ、見ちゃったのよ」と答えているのが聞こえた。

 黒谷家……。

 なんて、サイコパス野郎どもなんだ。

 以来、夏帆がどんなに私を誘っても、遊びに行かなくなった。

 庭で、そんな話を婚約者である佐伯にした。

 すると佐伯は、煙草をふかして、「明菜くん、極めて貴重な話をありがとう。この手の残酷さ、異常さは遺伝するものらしい。怪老・黒谷御前の死因もそのあたりに動機があるらしいな」と答えた。

     つづく

  //登場人物//

.

【主要登場人物】

佐伯祐(さえき・ゆう)……身長180センチ、黒縁眼鏡をかけた、黒スーツの男。東京に住む長野県を選挙地盤にしている国会議員・島村センセイの公設秘書で、明晰な頭脳を買われ、公務のかたわら、警察に協力して幾多の事件を解決する。『少佐』と仇名されている。

三輪明菜(みわ・あきな)……無表情だったが、恋に目覚めて表情の特訓中。眼鏡美人。佐伯の婚約者。長野県月ノ輪村役場職員。事件では佐伯のサポート役で、眼鏡美人である。

●島村代議士……佐伯の上司。センセイ。古株の衆議院議員である。

●真田巡査部長……村の駐在。

.

【事件関係者】

●黒谷御前……地方名家で島村センセイの縁者。

●黒谷源一郎……黒谷御前の一人息子で夏帆の父。先の大戦で戦死した。

●黒谷朝比……黒谷御前の長女。源一郎の妹。

●黒谷夕比……黒谷御前の次女。源一郎の妹。

●黒谷夏帆……黒谷御前の孫娘で女子大生。現在は東京在住。明菜の幼馴染にしてライバル。

●菊乃……黒谷家の家政婦。

●楓……菊乃の養女。

*全10話程度の予定です。

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