03 柳橋美湖 著 燕 『北ノ町の物語』
【あらすじ】
東京のOL鈴木クロエは、母を亡くして天涯孤独になろうとしていた。ところが、実は祖父がいた。手紙を書くと、お爺様の顧問弁護士・瀬名さんが訪ねてきて、北ノ町に住むファミリーとの交流が始まった。お爺様の住む北ノ町。夜行列車でゆくそこは不思議な世界で、行くたびに催される一風変わったイベントが……。最初は怖い感じだったのだけれども実は孫娘デレの素敵なお爺様。そして年上で魅力をもった弁護士の瀬名さんと、イケメンでピアノの上手なIT会社経営者の従兄・浩さん、二人から好意を寄せられ心揺れる乙女なクロエ。さらには魔界の貴紳・白鳥さんまで花婿に立候補してきた。
他方、お爺様の取引先であるカラス画廊のマダムに気に入られ、秘書に転職し、マダムと北ノ町へ来る列車の中で、神隠しの少女が連れ去れて行くのを目撃。そして北ノ町のファミリーとマダム、それに白鳥さんを加えて、少女救出作戦が始まる。一行は北ノ町一宮神社から軽便鉄道列車に乗り、ターミナルから鉄道連絡船で、大陸にたどりついた。
――そんなオムニバス・シリーズ。
Ⓒ 奄美剣星 「燕の機関士」
48 虹色燕の川港
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クロエです。神隠しの少女を追っている私たち。三本マストの鉄道連絡船は、大陸にたどり着くと、蝶々鮫さんの湖から、河川を遡上して、ローレライの岩場、ハニトラの菜の花畑を通過。そして、いよいよ港に……。龍の墓場は目前です。
♢
……それでは、長らくのご乗船ありがとうございます。またのご乗船を、いってらっしゃいませ。
ああ、折角、脚のある人魚族出身のアテンダント女性・由香さんとお友達になったのに、ここでお別れ、とても寂しいです。ぜひ帰りの船旅で、また、お会いしたいものです。
その由香さんと引継ぎして、これから、私たちのご案内役になる方は……。
連絡船が虹色燕の川港に着きました。埠頭の付け根に接岸された船尾のハッチが開くとレールがでてきます。そのレールと、港湾側のレールとが接続され、軽便鉄道車両が、久しぶりに外へでてきたのです。ただ、そこで、カブトガニみたいな形をした、気動車が前に接続されました。
「皆さん、よろしく。俺は虹色燕のジョナだ」
虹色燕。たしかに虹みたいに色鮮やか。ジョナさんは、ちょっと、カワセミに似ています。――浩さんが、そのジョナさんに聞きました。
「何だい、このいかめしい気動車は?」
「装甲気動車だよ。この港町をでると、炎竜の生息域だ。炎竜は好奇心旺盛で、変わったものを見かけると、とりあえず、口から火炎放射してかまってくる。奴らにとっちゃ悪戯だが、こちとら、まともに炎を被ったら、焼き鳥になっちまうぜ。装甲気動車には、放水銃が装備されていて、そいつで炎竜に対抗するってわけさ」
両翼のある大トカゲの火炎放射と、装甲気動車の放水が宙を飛び交うの図。まるで怪獣映画みたい。……想像するだけで恐ろしいことです。
◇
「ここからは忙しくなりそうじゃなのお」
お爺様が矢を天空に放つと、浩さんと瀬名さん、それに白鳥さんが守護精霊である、電脳執事メイフィストさん、護法童子くん、一つ目コウモリさんに後を追わせます。最後は、マダムと私で、雷など――ウォーミングアップOK!
◇
「さあ、乗った乗った」ジョナさんの声。
停車場でベルが鳴っています。
勇者なお爺様、守護妖精をしたがえた従兄の浩さんと顧問弁護士の瀬名さん、魔法少女OBの画廊マダム、そして吸血鬼・白鳥さんに続いて、私も客座車両に乗り込みました。
出発進行!
♢
それでは皆様、また。
by Kuroe
【シリーズ主要登場人物】
●鈴木クロエ/東京暮らしのOL。ゼネコン会社事務員から画廊マダムの秘書に転職。
●鈴木三郎/御爺様。富豪にして彫刻家。北ノ町の洋館で暮らしている。
●鈴木浩/クロエの従兄。洋館近くに住む。クロエに好意を寄せる。
●鈴木紅子/クロエの祖母。故人。女学校卒業後、三郎に嫁ぐ。
●鈴木ミドリ/クロエの母で故人。奔放な女性で生前は数々の浮名をあげていたようだ。
●寺崎明/クロエの父。公安庁所属。
●瀬名武史/鈴木家顧問弁護士。クロエに好意を寄せる。
●小母様/お爺様のお屋敷の近くに住む主婦で、ときどき家政婦アルバイトにくる。
●烏八重/カラス画廊のマダム。お爺様の旧友で魔法少女OB。
●メフィスト/鈴木浩の電脳執事。
●護法童子/瀬名武史の守護天使。
●白鳥玲央/美男の吸血鬼。クロエに求婚している。
●神隠しの少女/昔、行方不明になった一ノ宮神社宮司夫妻の娘らしい。
●由香/ダイヤモンド鉱山〝竜の墓場〟のある大陸へ向かう三本マストの鉄道連絡船アテンダント。脚のある人魚。鬼族の軽便鉄道運転士から異界案内役を引き継ぐ。
●ジョナ/虹色燕。同名の港町で、連絡船アテンダントをしていた、脚のある人魚族・由香から案内役を引き継いだ。軽便鉄道・装甲気動車の運転士。




