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自作小説倶楽部 第16冊/2018年上半期(第91-96集)  作者: 自作小説倶楽部
オープニング
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00 奄美剣星 著  オープニング 『ウルトラ・ヘブン』

挿絵(By みてみん)

作品:Ⓒナツミーヌさん「ヤシと青い海」

素材元:ぱたくそ



 私は、テレビを視ないのだけれども、ネットの《Youtube》動画を視るのが好きだ。先日、偶然、投稿作品の一つに、学生時代の友人が映っているのを発見した。

 学生のころの私といえば、《カラオケ同好会》なるいい加減なサークルに属していて、週末、例の友人をふくめた仲間達と夜の街へと繰り出したものだった。

 バブル真っ盛りで、夏・冬の長期休校中に、ちょっときついバイトをやって獲得した、給金三十万円をすぐにつかわず、定期預金にぶちこんだとしよう。半年後には六パーセントの利息がついて一万八千円の小遣いが、打ち出の小槌のように湧いてくる。それが《軍資金》になったというわけだ。

 さて、注文したカクテルがカラオケ・ルームに運ばれてきたころ、私達のパーティーはたけなわになっていた。そのとき、テレビモニターに、モデル雑誌に出てきそうな、長い髪の女性が三人、ギリシャ神話の女神に扮した格好で現れた。

 センター・ポジションの《女神》が手を出した。

 友人が戯れで、「俺好み」と言って、画面越しに、その《女神》とハイタッチした。途端に画面は、荒涼とした月面のモノクローム画像へと変わった。

 そのあたりで私は化粧室に行った。

 戻ってみると友人は消えていた。一緒にいたサークルの女の子達に聞いてみると、「気が付いたらいなくなっていた。なんだかマジック・ショーみたいだったわ」と首を傾げていた。 

 友人はそれ以来学校から消えてしまった。

          *

 あれから何十年経っただろう。

 私は、家でパソコンでネット動画を視ていた。そこに映し出された画像が、あのカラオケ・ルームのテレビ・モニターに映っていたものだったのに驚いた。

 荒廃した月面が背景で、真ん中にピクチャー画面があり、波打ち際のバナナの林があった。さらに、バナナの木の合間には、ハイビスカスの花が咲き乱れていた。《楽園》というのは恐らくはこういう世界なのだろう。

 三人娘の《女神》達に囲まれた、水着姿の友人が、パソコン液晶画面のむこうから、親しげに、私に声をかけてきた。なんと奴めは失踪した当時の若さを保っているではないか。

「なかなか楽しいところだ。おまえもこっちに来たらどうだ」

 センター・ポジションの《女神》が微笑んで、ハイタッチをしてきた。私もつられて、画面に片手を伸ばしかけたとき、本能的な、ためらいをおぼえた。

 《楽園》の画像はすぐに消えた。

 そして……。

          *

 今しがた自宅寝室で目が覚めた私は、学生時代に《カラオケ同好会》になんぞ在籍しておらず、サークルの仲間、失踪した友人も皆、夢の中の架空の人物達であったことを悟り、ゾッとした。

 昨日は徹夜明けだったうえに、珈琲を飲みすぎて、心臓が不整脈ぎみだった。そのため、夕食をとるとすぐに休んだのだ。仮に、あの夢のなかで、パソコン画面のネット動画に映し出された《女神》のハイタッチに応じたとしよう。そしたら多分――。

     ノート20180118

* あけましておめでとうございます。オープニングは、つげ義春の漫画『ねじ式』よろしく、夢でみたままを文章化してみました。こういう夢をごらんになったらお気を付けください。ちなみに、その翌朝は、《進撃の巨人》に食われた夢をみて飛び起きた拙。左目が、なにゆえか、打撲による眼球毛細管破裂と診断されたのであります。合掌(管理人)。

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